最近、60年代後半の洋楽を深堀しております。それも以前ご紹介したホリーズよりもピリッとハード系なもの…。そして改めてスティーヴ・マリオットは偉大だったなあと痛感しております。
本作はそのスティーヴ・マリオットがリーダーだったスモール・フェイセズの、全曲オリジナル曲で勝負したサード・アルバムです。ややこしいのはファースト・アルバムも同タイトルなんですよね。なのでこちらは「The First Immediate Album」と呼ばれることもあります。
スモール・フェイセズは元々は1965年にデッカ・レコードからデビューするのですが、デッカとの関係が悪くなり、1967年にイミディエイト・レコードへ移籍します。移籍後に発表されたアルバムが本作。一方、デッカ側も未発表曲集「From The Beginning 」を発表。こちらが先行して発売されたのでセカンド・アルバム扱いとなっております。
ローリング・ストーンズのマネージャーだったアンドリュー・オールダムがデッカを辞めて、新たに設立したのがイミディエイト・レコードであって、アンドリューはスモール・フェイセズをかなり優遇し、彼等は長時間自由にスタジオを使って本作を制作したようです。殆どの作品はメンバーのスティーヴ・マリオットとロニー・レインの共作。

ますはオープニング・ナンバーから圧倒的にカッコいい。それが①「
(Tell Me) Have You Ever Seen Me」。
https://www.youtube.com/watch?v=uo01hnHoYHwケニー・ジョーンズの重々しいフロアタム打ちから、スティーヴの軽快なギターとロニーのヘビーなベース、そしてイアン・マクレガンのグルーヴィーなキーボード、どれもが素晴らしい。特にザ・フーのキース・ムーンを思わせるような荒々しいケニーのドラミングは演奏を煽り立ててますね。そして迫力あるスティーヴのヴォーカル。この時代のブリティッシュ系バンドの中でも群を抜くカッコよさです。
イアンのキーボードがフューチャーされたインストナンバーの④「
Happy Boys Happy」。
イントロこそ哀愁漂うギターのアルペジオで始まりますが、ドラム・ベース・キーボードが一斉に音を鳴らし始めたら、いつものスモール・フェイセズ節です。ロニーのベースが結構凝ったアレンジですね。メロディをキーボードが弾いたりして、キャッチーな仕上がり。アレンジによってはかなりハードロック寄りも出来た筈ですが、ちょうどいい具合にポップな部分を残しているところが彼等らしい。
本作にはイアンが作った曲が1曲だけ収録されてます。それが⑬「Up the Wooden Hills to Bedfordshire」。
この時代の音楽は興味深いバンドがたくさん居りますね~。
ここ最近、出勤者が増えたためか、日本橋界隈のランチは大盛況の状況が続いておりましたが、昨日はかなり空いておりました。台風通過を見越して、在勤の方が多かったのかもしれません。そして今日も朝から大雨。皆様、どうかお気を付けてお過ごし下さい。
さて、私が敬愛する音楽評論家のスージー鈴木さんが、以前「自分の人生を決定付けた、自分の人生で最も重要なアルバム」として本作をご紹介されておりました。ゴダイゴのリーダーでもあったミッキー吉野さんも、自分の力量の全てを注ぎ込んで制作したという強い自負を持たれていたようで、このアルバムの充実度は他と違うと語っておりました。
とはいえ本作は所謂商業的にヒットしそうな曲が満載…というわけでもなく、何度か聴いて良さが分かってくるというような渋いアルバムと感じます。いろいろな意味で日本のロック史上、燦然と輝く名盤ですね。

本作は1979年発表のゴダイゴ4枚目のアルバム。作詞はすべてプロデューサーのジョニー野村の奥さんでもある奈良橋陽子。作曲は曲によってタケカワユキヒデとミッキー吉野が分け合ってます。
70年代のいろいろな出来事をテーマとしたコンセプトアルバムにもなっており、特にオープニングから4曲目までの流れが素晴らしい。
アップしたのは当時発表されたライブ盤から。メンバーのアカペラからスタートするちょっとゴスペルタッチな楽曲です。タケカワユキヒデらしいポップなメロディとタイトな演奏が光ります。
あまりこの曲をご紹介する人もいないでしょうね(苦笑)。商業的なポップとは全く無縁のロックテイスト溢れるナンバーです。イントロとエンディングの怪しげなアレンジが、映画「イージーライダー」を彷彿させていいですね~。サビが来て、次の2番の歌詞が来るところを、浅野孝已がナチュラル・トーンのギターソロを奏でます。こういう洒落たセンスもミッキー吉野の企みでしょうか。それにしても当時こんな曲を演奏出来た日本のバンドって、ゴダイゴくらいだったんじゃないでしょうかね。
タケカワユキヒデの一人多重録音の③「
Shock、Shock、Shock!」。
https://www.youtube.com/watch?v=2_Dav4nTqUU山下達郎とは全くタイプの違う一人アカペラ。歌詞は70年代のショック、ドル・オイル・エレクトリックのショックを歌ったもの。ポップな曲調とシリアスな歌詞のギャップが面白いですね。
④「
Try To Wake Up To A Morning」はミッキー吉野作曲・アレンジの名バラード(①~③はタケカワユキヒデ作曲)。
アップした映像はスタジオ・ライブです。ゴダイゴ・ホーンズも参加しております。バラードですが、メリハリの付いたタイトな演奏が楽しめます。こうして聴くと、スティーヴ・フォックスのベース、いいですね~。
アメリカ仕込みのミッキー吉野に、東京外国語大学卒の英語が得意なタケカワユキヒデ(海外には行ったことがなかったらしい)、外国人2人のリズム隊のゴダイゴだからこそ、こうしたバラードまで洋楽的に聞こえるんですね。
⑤「Close-Ups」~⑦「Purple Poison」まではミッキー吉野が作曲した小作品が、まるでメドレーのように連なっていきます。ビートルズのアビーロードのB面のような感じですね。そして本作でのミッキー吉野の作品は、意図的なのか分かりませんが④~⑨まで続きます。個人的にはその中でのハイライトが⑧「Lighting Man」じゃないかなと思ってます。
曲調からは想像が付かないのですが、実はこの曲、スターの末路を歌ったナンバー。最後の歌詞は「どうかゆっくりと照明を消して下さい」と切実に歌ってます。
シングルとしてもリリースされた⑬「Where'll We Go from Now」。
こちらはゴダイゴのシングルらしいキャッチーなナンバー。アップした映像は「夜のヒットスタジオ」での出演シーン。浅野孝已が凄く楽しそうにギターを弾いてます。また結構ロックなギターソロ、しかもアーミングを効かせてますね~。生演奏と思いますが、バンド全体の演奏も上手いです。それにタケカワユキヒデのリズム感も抜群。やっぱり素晴らしいバンドですね。
アルバム全体を通して聴くと、起承転結のような形にしっかり纏め上げており、素晴らしいと感じます。当時、ゴダイゴは「
銀河鉄道999」が大ヒットし、商業的な成功も収めておりました。レコード会社からの「売れ線」アルバム制作のプレッシャーも相当あったと思われますが、ゴダイゴは全くそれに動じることもなく、こうしたアルバム(もちろん全曲が英語)を確り制作出来た訳で、本作は彼等の強い意志も感じさせる名盤です。
先週、スティーヴ・ハウ主導の新生イエスとしては2作目となる新作が発表されましたね。こちらが結構私の好みでしたので、いずれ機会があれば記事にしたいと思ってます。
新作といえばイエスとはまた別の意味で驚きだったのがグラハム・ナッシュとアラン・クラークの各々の新作。この2人、もちろんホリーズの創設者であり、小学校の同級生だったという間柄。同時期に発表された各々のソロには共演した楽曲「Buddy’s Back」がそれぞれ収録されております。未だに交流があったことを知り、なんだかほっこりしてしまいました。
ということで今回はホリーズの名作を採り上げたいと思います。
ホリーズは1962年にグラハムとアランを中心にマンチェスターで結成。グラハム・ナッシュってCSN&Yのイメージが強く、すっかりウエストコースト系人脈に組み入れられている方ですが、実は元々は英国の方なんですよね。

本作は1967年発表のホリーズ6枚目のアルバム。全曲、メンバーのアラン・クラーク、トニー・ヒックス、グラハム・ナッシュの共作。
ジャケットからもお分かりの通り、ホリーズまでがサイケに走った作品としても有名ですね。グラハム・ナッシュがサイケを推し進めたとも云われてますが、この作品、実はそれほどサイケサイケしていない印象です。むしろ1967年という時代背景にも関わらず、相変わらず初期ビートルズのようなカッコいいマージービートを奏でていることが、ちょっと微笑ましいです。
そのカッコいいマージービートの典型例がエンディングナンバーの⑫「
The Games We Play」。
https://www.youtube.com/watch?v=Me3mrkWqSyk後のエルビス・コステロを彷彿させる弾けるようなビートポップス。サイケが流行っていた1967年にこうしたビートを奏でていたとはちょっと驚き。でも間奏のホーンはこの当時流行っていたソフトロック的なアレンジですね。
それではせっかくなのでサイケナンバーをご紹介しておきます。まずはオープニングの①「
Then the Heartaches Begin」。
https://www.youtube.com/watch?v=kXTCbpVEuAQ随所に場違いなファズ・ギターが如何にもサイケやってます感を無理やり出している感じです。バックコーラスもちょっとサイケ感を感じさせますが、基本はアコギを掻き鳴らしているロック。特にイントロのカッティングギターはモンキーズのライターチームで著名なボイス&ハートの「
I Wonder What She's Doing Tonight」風。
もうちょっとドロドロしたサイケを聴きたいですかね(笑)。
イントロだけが妙にサイケ感を強調した③「
Water on the Brain」。パーカッションの連打と不思議なコーラスは病み付きになりそう。
https://www.youtube.com/watch?v=C83RrBbQ2aUただ間奏のホーンとか、ちょっとポップなセンスが混じっているところはホリーズらしいですね。
キャッチーなナンバーの⑤「
Have You Ever Loved Somebody?」はまるで60年代前半のマージービート!
アップした映像、演奏スタイルも下で踊っている方々もかなり時代遅れな印象。1967年というと既にビートルズは「Strawberry Fields Forever」を発表していましたからね。それに比べたらホリーズの進化は止まっていたのかも。
ワルツのリズムが効果的な⑧「Heading for a Fall」。
何だかんだ言っても⑩「When Your Light's Turned On」のようなホリーズの楽曲は大好きなんですよね~。
でもやっぱり少し物足りない気がします。アランやレコード会社はこうした親しみやすいポップスを推し進めようとする一方、グラハム・ナッシュはより音楽を進化させていきたい欲求が強くなっていきます。
グラハムは1968年の米国ツアーを最後に脱退。米国で知り合ったキャス・エリオット(もちろんママス&パパスの)の紹介でデヴィッド・クロスビーと合流。更にスティーヴン・スティルスを加えたCS&Nとしてスタートします。確かにここでのホリーズの音楽と、ローレル・キャニオン界隈で奏でられていた音楽とはかなり違いますね。
ただCSN&Yのメンバー中、一番ポップなセンスを持っていたグラハムのバックグラウンドがホリーズにあるというのは納得ですね。