Jesse Davis (G) Ry Cooder (G) Andrew Gold (G) Red Rhodes (P Steel) Lee Sklar (B) Kenny Edwards (B) Jim Keltner (Ds) Russ Kunkel (Ds) Gary Mallaber (Ds) Larry Knechtel (Key) Bill Payne (Org) Jim Horn (Sax) Ernie Watts (Sax) Bonnie Bramlett (Cho) Joni Mitchell (Cho)
なぜデヴィッド・ゲフィンがロッドにここまで入れ込んだのかよく分かりませんが、恐らく彼のキャリア…、詩人としてのキャリアが大きく影響していたのかもしれません。ロッドは若き頃、才能ある詩人に贈られるアメリカン・アカデミー・オブ・ポエツ・プライズを受賞しており、スタンフォード大学の教授会のメンバーでもあったのです。本作発表と同時期、詩集「Florida East Coast Champion」も発表。この詩集の中の9部からなる詩「クロッシング」が、本作の内ジャケにも記載されてます。
アルバムトップの①「Ought to Know」。1曲目らしく明るくポップな…、って感じじゃありません(笑)。フォーキーでスワンピーな、哀愁漂う楽曲。いいですね。
②「Crossroads Of The World」はイントロからホーンが鳴ってくるので、オヤっと思ってしまいますが、曲が始まると、これが強烈なスワンプ。誰が演奏しているのか、クレジットがないので分かりませんが、贅沢な演奏ですね。ギターはジェシかと思います。そしてコーラスはボニー・ブラムレット。熱演です!
カントリータッチの⑩「Lost Iron Man」。本作はスワンプだけでなく、こうした楽曲も収録されており、どれも魅力的です。ギターはライ・クーダーでしょうか。またここではスティール・ギターがフューチャーされてますが、これはレッド・ローズの演奏。レッド・ローズは当時のウエストコーストのスティール・ギター奏者の第一人者。70年代前半のウエストコーストロックのスティール・ギターのほとんどが、彼の演奏じゃないでしょうかね。私はモンキーズのマイク・ネスミスが大好きなんですが、マイクはモンキーズ解散後、レッドとファースト・ナショナル・バンドを結成。個人的にはイーグルスとか、ポコとか、それらカントリーロックの元祖はマイク・ネスミスだと思ってます。
アルバムトップはシングルカットもされた①「Ain't Got No Home」。オリジナルはクラレンス・ヘンリーが1956年にヒットさせたもの。ヴォーカルはドラムのレヴォン・ヘルム。楽曲は典型的なR&B調ロックンロール。ブギウギ調のガース・ハドソンのピアノとか、いぶし銀のレヴォンのヴォーカルとか、ザ・バンドらしい演奏。
⑤「The Third Man Theme」は皆さんご存知の映画「第三の男」の主題歌。アントン・カラスのツィターの演奏が有名。この曲は他のカバー曲とはちょっと毛色が違いますね。他はR&Bやブルースのカバーですが、こちらは映画主題歌、かつインスト。ザ・バンドといえば、リーダー格でザ・メイン・ライターのロビー・ロバートソンが有名ですが、本作ではカバー集ということで、あまりロビーに焦点が当たってませんでしたが、ここではインストということもあり、ロビーのハープギターが光ります。
⑦「The Great Pretender」はリチャードの熱唱が心を打たれます。プラターズが1955年にヒットさせたロッカバラード。この曲を聴いていたら、フッとクィーンの「Save Me」と似たようなメロディが出てくるのに気づきました。こうした3連のバラードはメロディが似てくるものです。
それにしても非常に不思議な、そして味のあるアルバムです。本作にも収録されている②「Midnight At The Oasis」があまりにも有名で、この曲はAORのコンビアルバムに収録されていたりする非常にリラックスムードたっぷりのナンバー。ですからこの曲の印象で本作を聞き始めると痛い目にあいます(笑)。
プロデューサーはレニー・ワロンカーとジョー・ボイド。マリア・マルダーは本作発表前、ご主人のジェフとジェフ&マリア名義でアルバムを2枚発表してますが、その2枚のプロデューサーがジョー・ボイド。ジョーはブリティッシュ・フォーク人脈を持つ御大。そういった訳で1曲目の「Any Old Time」から、「Midnight At The Oasis」のイメージを壊してくれます。①「Any Old Time」はイントロからフォークの香りが…。曲はジミー・ロジャースの古い古いカントリーナンバー。マリアはより濃いジャグ・バンド・スタイルに仕上げてます。もともとマリアはジャグやオールドタイム・ミュージックをやっていたので、実はこっちが彼女の姿なんですよね。印象深いアコギはライ・クーダー。ハワイアン・ギターはデヴィッド・リンドレー。豪華メンバーですね~。
②「Midnight At The Oasis」は何といってもエイモス・ギャレットの宙を彷徨うようなギターが素晴らしい。ギターソロも心地いいですよね。心地よさを倍増させているストリングスのアレンジはニック・デ・カロ。曲も素晴らしいんですが、これはデヴィッド・ニックターンが彼女に書き下ろしたオリジナルでしょうね。デヴィッドは本作では他の曲も提供したり、ギタープレイヤーとして参加。でも彼、今では仏教指導者、瞑想家としても著名な存在になってます。
カントリー&ジャージーな⑦「Walkin' One & Only」。小粋なジャズって感じで、コレ、カッコいいですよ。ダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックスの1972年のヒットナンバー。YouTubeを徘徊していたら、なんとマリアとダンの共演ライヴがありました。しかもコレ、日本公演のようですね。ギターがストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーっぽい。
ちょっと落ち着きましょう(笑)。クールダウンさせてくれる⑧「Long Hard Climb」はロン・デイヴィスの作品。同年、ヘレン・レディも歌ってました。
ボビー・ウーマックの②「It's All Over Now」。こちらはストーンズのバージョンが有名ですが、ストーンズやボビーはR&B的に、ちょっと黒っぽい仕上がり。一方ロッドのバージョンは完全にフェイセズ、つまりパーティ・ソング、かなり明るい仕上がりです。これが(ロッドというよりも)フェイセズの魅力なんですけどね。
そして⑥「Cut Across Shorty」はエディ・コクランのカバー。オリジナルはアコギをカキ鳴らすロックンロールですが、ロッドのバージョンはフォーキーかつワイルドな演奏、そしてロッドのハスキーヴォイスが楽曲にピッタリ。ヴァイオリンのソロなんか秀逸です。原曲を超えたカッコいい楽曲!
⑨「You're My Girl (I Don't Want To Discuss It)」はリトル・リチャードがオリジナル。オリジナルは激しいR&Bナンバーなんですが、ロッドはファンク調に仕上げてます。この曲と④「My Way Of Giving」は、バックメンバーは完全にフェイセズのメンバーと一致します。この曲の演奏は、相当迫力ありますね。結構気に入っている楽曲です。
この後、1971年3月にフェイセズとして「Long Player」を、そして「マギーメイ」の大ヒットをリードに、1971年に発表されたロッドのソロ作「Every Picture Tells a Story」が英米でNo.1を記録するのでした。この頃のロッドやフェイセズ、最高にカッコ良かったです。
本作、実は②「Moondance」が異色のトラックであり、他9曲はスワンプなサウンドなんです。明らかにザ・バンドから影響を受けたようなサウンド…、そして楽器の使い方。アルバムトップの①「And It Stoned Me」から、かなり濃厚なスワンプですね。
それに続くのが前述の「Moondance」。これでジョーカーは出し尽くしたのかと思いきや、キラートラックの③「Crazy Love」が控えております。スワンプ好きであれば、この曲名ですぐピンと来ると思いますが、Rita Coolidgeがカバーした曲です。ヴァンが歌うと余計に心に染みてくるバラードとなりますね。ヴァン、一世一代の名バラード。素晴らしい1曲です。歌詞の ♪ Love Love Love… ♪ ってフレーズは、ドリカムの「Love Love Love」を連想させます(個人的にはドリカムは「Crazy Love」からインスパイアされて作ったのでは??と思ってます)。
もう素晴らしい曲はないだろうと思っていたら、④「Caravan」もまた素晴らしい!これもザ・バンドのような、コクのあるサウンドですが、サビの ♪ La La La ~ ♪ のような一緒に口ずさみたくなるような、ポップな一面もあったり、ヴァンの情熱的なヴォーカルを煽るようなホーンとか、どれも素晴らしいのです。
例えば④「Can't You Hear Me Knocking」。豪快なギターリフがかっこいいミドルテンポのロックンロールですが、実に南部のニューオーリンズ的なノリが素晴らしい。そして中盤以降のパーカッションとサックスが、グルーヴ感を感じさせます。当時のサンタナなんかにも通じる、ラテン系タッチな感じもGood。プロデューサーのジミー本人がパーカッションを叩いてます。彼はこうしたアレンジが得意ですね。
皆、デラニー&ボニー・ファミリーなんですね。しかもドラムはジムばかり(笑)。ジム・ゴードンは後にレイラの共作者としても名を馳せたドラマーで、個人的には重々しいドラム・プレイが大好きなんですが、結局不幸な末路を辿ることになってしまいます。もうひとりのジム(ケルトナー)はビートルズ関連のソロアルバムにはよく名前も出てくるドラマーです。そして最後のジム(キャパルディ)はもちろんトラフィックのドラマーで、本作では⑧「Look at You, Look at Me」でデイヴと共作してますね(それ以外はデイヴ単独作品)。恐らく⑧のドラマーだけジム・キャパルディなのでしょうか。
アルバムトップの①「Only You Know and I Know」はオープニングナンバーに相応しい軽快なスワンプ・ナンバー。アコースティックのカッティングが音の素朴さを表してます。そのアコギに絡んでくる粘着質なギターもいい!あとこのモッサリとしたグルーヴ感はジム・ゴードンのドラムだと思われます。軽快なスネアワークもカッコいいですね。
③「Waitin' on You」はちょっとロックンロール系ナンバー。ギターのリフは完全にブギー調ロックンロールです。女性ヴォーカル(リタ・クーリッジ??)のコーラスなんかはR&Bっぽくもあったりして、ライヴ映えしそうな1曲です。ということでライブ音源をアップしておきます。こちらの音源はデイヴの声も荒々しく、演奏もロック寄りです。
ちょっとイントロがスペイシーな感じの④「Shouldn't Have Took More Than You Gave」。ギターの音色がワウワウを効かせているのか、効果的ですね。この曲と⑥「Sad and Deep as You」は後にトラフィックに復帰した時のアルバム「Welcome To The Canteen」にも収録されてます。トラフィック・ヴァージョンはあまり本作のものと変化はなく、あまり面白味を感じさせませんが。
⑤「World in Changes」はマイナー調の湿り気を帯びたような楽曲。後半はキーボードを中心としたスリリングな展開になってきます。本作は確かにスワンプなアルバムなんですが、こうした楽曲なんかは英国人らしい音だし、陽気なアメリカ人には作れない音ではないかと思ってしまいます。
エンディングトラックは⑧「Look at You, Look at Me」。荒野をさすらうカウボーイを勝手に連想してしまうような曲。デイヴのヴォーカルがかっこいいんですよね。バックの演奏のスワンプフィーリングもいいですね。エンディングの熱いギターソロはエリック・クラプトンらしいのですが、クレジットには名前がなく、実際のところはわかりません。ただこのギターはクラプトンでは??と思わせる音ですね。
デイヴはトラフィックのライヴに一時参加するも(その時の模様が「Welcome To The Canteen」に収録されてます)、以降はソロ活動を続けてます。英国人らしからぬ、実にアメリカンなアルバムも発表していますね。
まずはアルバムトップのハードな①「Had To Cry Today」。これこそブラインド・フェイスのサウンドかもしれません。イントロは完全にクリームの世界。力強いエリック・クラプトンのギターリフに、ジンジャー・ベイカー特有のドタバタしたドラム。でもスティーヴのヴォーカルが入ってくると、やっぱりトラフィックの香りが…。スティーヴ作です。
アルバム作品中、唯一のカバーが③「Well All Right」。バディ・ホリーのカバーです。この作品を収録した時点では、まだリックは参加しておらず、よってここでのベースはスティーヴです。曲はポップだし、恐らく本作の中では、すんなり馴染める曲なのではないでしょうか。個人的には結構好きな1曲です。エンディングでのピアノのグルーヴ感も素晴らしい。でもよく聴くとベースがカッコいいですね。やっぱりスティーヴは天才です。
本作中、恐らく最も有名な曲がエリック作の④「Presence Of The Lord」でしょう。後のスワンプへ傾斜していくエリックの前途を感じさせる1曲です。アーシーなバラード調から、一転して激しいギターフレージングから繰り出されるパートも大好きです。個人的にはこの流れは、後の名曲レイラを感じさせる展開ですね。
ここまでがA面。そしてB面はたった2曲。勘の鋭い人はもうお分かりかと思います。ジンジャー・ベイカーの悪い癖がまたここでも出てしまってます(笑)。まあそれは6曲目なんですが、その前にB面トップの⑤「Sea Of Joy」は、間奏のリックのヴァイオリンがひとつのハイライトで、そこだけはなんとなくのどかな雰囲気が漂うのですが、それ以外はなかなか緊張感のあるスリリングな演奏が楽しめます。スティーヴの熱唱を煽るようなエリックの力強いギターリフとジンジャー得意のタムでのドラミング、どれもが素晴らしいです。
アルバム最後を飾るのはジンジャー作の⑥「Do What You Like」。邦題「君の好きなように」。そう、誰もが「ジンジャー、お好きなように」と突っ込みを入れたくなるような1曲です(笑)。これ1曲で15分強。もったいない…(失礼)。
こんな素晴らしい作品を残したブラインド・フェイスですが、結局ジンジャーとエリックが仲違いして、敢え無く空中分解してしまいます。この後スティーヴはなぜかジンジャーのバンドに加わるのですが、その後ソロアルバムの制作に入り、そこにクリス・ウッドとジム・キャパルディが加わったことで、トラフィックとして名盤「John Barleycorn Must Die」を発表します。エリックの活躍も皆さん、ご存知の通りですね。
本作中、もっとも有名な曲が⑤「So Into You」でしょう。これ、かなりいぶし銀的なサウンドです。メロディも地味、演奏も地味。でもこの曲、ARSの楽曲の中でも人気の高い1曲です。この曲の底流にはサザンソウル的なものが感じられます。また間奏のねちっこいギターソロなんかもソウル感覚溢れるプレイ。でも人気の高いホントの理由はストレートな歌詞にあるかもしれません(笑)。
珍しいスタジオライヴの映像をアップしておきます。長髪のRonnie Hammond(Vo)の容姿は如何にもサザンロック的な感じです。ちょくちょくバックヴォーカルで映るドラムのRobert Nixは、実はBuieと一緒にバンドの多くの楽曲を作ってます。この「So Into You」も2人とDean Daughitry(Key)の共作です。
ちなみに⑥「Outside Woman Blues」のみカバー曲。Blind Joe Reynolds作。往年のブルースで、クリームやジミ・ヘンドリックスもカバーしてました。確かに一聴してジミ・ヘンドリックスっぽいなあと。こんな骨太なブルースもさらりとやってしまいます。器用なバンドですね。