一大旋風を巻き起こしたジャーニーの大ヒットアルバムこのブログでは60~70年代の洋楽を中心にアルバムレビューをしておりますが、そもそも我々エイティーズ(前半)オンタイム世代の王道のバンド・アルバムをあまり紹介していないことに気付き、その王道のバンドってどこかな~と考えていたのですが、やはりその筆頭格はジャーニーではないでしょうか?
私が洋楽を聴き始めた頃、既に前作
「Escape」が発表され、シングル「Open Arms」が大ヒットしておりました。そして新作として、オンタイムで聴いたのが本作。もちろん発売日と同時にLPを購入しました。
まだ中学生にはアルバムを通して聴く習慣がなかったのですが、それでもAsiaのファーストやBeatlesの作品なんかはアルバム単位で聴いてました。そして本作もそういったなかの一枚です。
未だにそうなのですが、正直このアルバムは「Escape」ほどには好きになれません。ライヴ一発録り的なライヴ感覚とハードな曲が多いこのアルバムは、中学生の私にはちょっとつらく、今聴き返しても、「あれっ、こんな曲入っていたのか」っていう程、全部が全部、記憶に残っている訳ではありません(よく聴いていたんですけどね)。もちろんいい曲も詰まってますし、あくまでも「Escape」と比較してのことですけど。
プロデュースは「Escape」と同様、マイク・ストーンとケヴィン・エルソン。アメリカ・ビルボードチャートでは9週連続第2位でプラチナディスクを獲得しております。ちなみにこの当時のアルバムNo.1はあのマイケル・ジャクソンの「スリラー」です。このモンスター・アルバムがなければ、確実に本作はNo.1となっていたでしょうね。
このアルバム、我々世代は①「Separate Ways (Worlds Apart)」がすべてですね。あのイントロに懐かしさを覚える30、40代洋楽ファンは数知れず。あの曲でロックの醍醐味を知った方がも多いでしょう。
当時、ギターのリフがこんなにもかっこいいのか~! と思ったものです。
中学時代、私の周りにはニール・ショーンを真似たエアーギタリストが多数存在しておりました^^。
この曲、1983年の彼等の伝説の武道館ライヴでの演奏が忘れられません。もちろん行ったわけではなく、この演奏の音源がFMラジオでオンエアされた際にエアチェックしたものを繰り返し聴いていたんです。今では
「Greatest Hits Live」というCDでこの時の演奏が聴けますが、エンディングでスティーヴ・ペリーが「ココロカラドウモアリガトウ、トーキョー!!!」と叫ぶんです。当時は何を言っているのか分からなかったのですが(笑)。
その時の貴重な映像がなんとYouTubeにアップされてましたので添付しておきます。エンディングの鳥肌モノのスティーヴ・ペリーの絶叫をご堪能下さい。
当時のシングルカット曲は①、②「Send Her My Love」(最高23位)、④「After the Fall」(最高23位)、⑤「Faithfully」(最高12位)。
②や③はジャーニー流アメリカンロック・ポップス。ポップスというと違和感がありますが、中庸ロック的な楽曲。
⑤は「Open Arms」とよく比べられるバラードです。これも名曲としてよく挙げられますね。
しかし本作の良さは、個人的にはこうしたシングルカットされた楽曲にあるのではなく、①や更にハードなロックにあると思ってます。
例えば③「
Chain Reaction」の激しいギターのリフ。スティーヴ・ペリーのヴォーカルもシャウト気味です。重々しいリズムもメロディもかっこいい!!!
この当時の、今となっては恥ずかしいMTV向けPVを発見しました。なんと全員なぜかタキシード姿。いや~、恥ずかしい(笑)。このPV、全く見た記憶がありませんね。
そういえばベースのロス・ヴァロリー、当時から非常に地味な印象だったのですが、このPVでも弾いている彼の細長いベース、すごく印象的でしたね。でもロス、実は唯一の創業メンバーなんですよね。
かっこいいといえば⑥「
Edge of the Blade」もアメリカン・ロックの王道的な曲で大好きです。それから⑧「
Back Talk」。この曲を好きだという人は少ないかもしれませんが、ドラム愛好家の私としては、スティーヴ・スミス(Ds)が作曲にも参加したこの曲は見逃すわけにはいきません。
とてもヘビーでリズミカルな曲。もともとスティーヴ・スミスはジャズ・ミュージシャンでバークリー音楽大学にも通っていた人物。ヴィニー・カリウタとは同窓とのこと。
タイトル曲⑨「Frontiers」にも作曲でスティーヴ・スミスは参加してます。私の大好きなドラマーのひとりです。
本作は「Escape」より楽曲の粒は落ちますが、私がオンタイムで夢中になった大事なアルバムです。
少しタイトになったカーラの3枚目のアルバムカーラ・ボノフは本当に良質な楽曲を作り出す素晴らしいライターです。その数あるカーラの楽曲で一番初めに聴いたのは本作収録の「Personally」です。
以前ご紹介したホイチョイ・ムービーの
「波の数だけ抱きしめて」のサントラを何回も聴いていた時期があったのですが、そのサントラに「Personally」は収録されていたんです。
どっしりくるリズムにAOR的なクールさ、そしてカーラの歌唱力にすっかり参ってしまいました。
後にそもそもカーラは、以前はもっとアコースティック・タッチなアーチストであったことを知ることになるのですが・・・。
そのカーラ・ボノフ。1969年にケニー・エドワーズ、アンドリュー・ゴールド、ウェンディ・ウォルドマンとブリンドルを結成。しかしながら僅かシングル1枚を発表したのみで解散。ケニーはリンダ・ロンシュタットの裏方マンとして活躍。ウェンディ、アンドリューもソロデビューを果たし、一番最後にカーラがデビューを果たします。
ちなみにブリンドルは1991年に再結成されてます。以下エヴァリー・ブラザーズやリンダ・ロンシュタットで御馴染みの「When Will I Be Loved」をブリンドルがカバーした映像がありましたのでご参考までにアップしておきます。
さてカーラ3枚目の本作ですが、アコースティック色の強い前2作と違い、ドラムスにラス・カンケル、ベースにボブ・グロウブが全曲参加し、ビート感を強調した作りとなっております。
またジャケットは何かを暗示しているような、ちょっとドキッとさせられるものですね。
まずは前述の①「Personally」。1,2枚目を愛聴してきたリスナーにとっては、ちょっと違和感のある曲に聴こえたのではないでしょうか? 本作中唯一の他人の曲であり、現在のところ、カーラ最大のシングルヒット曲。曲を引っ張っているのはメロディアスなベース。ドン・ヘンリーとティモシー・シュミットのコーラスもいいですね。
ドシッとしたリズムは後期イーグルスを彷彿させます。それを狙った選曲だったのかもしれませんね。
美しいバラードは続きます。⑤「Just Walk Away」も名曲。
壮大なバラードで、歌詞も泣かせますね。女性の視点に立って詞を書かせたら、カーラの右に出るものは居ないのではないでしょうか(キャロル・ベイヤー・セイガーもいますね)。
間奏の泣きのサックスはデヴィッド・サンボーン。
表題曲⑦「
Wild Heart Of The Young」もいい曲ですね~。こちらの方は胸に染み入る切ない曲といったらいいでしょう^^。
YouTubeにこんな映像がありました。
これ全米で大ヒットしたTVドラマ「The Wonder Years」の一シーンのようです。なぜカーラの曲が? と思って調べたら、「BROKEN HEART AND BURGERS」という話で挿入歌として使われたようです。
この曲の歌詞は「誰よりもあなたを愛していた 若さゆえの一途な情熱だった」と歌われており、改めてこの映像を見ると、なにか妙にマッチして切なくなってきます。
⑧「
It Just Takes One」はイーグルスっぽく聴こえませんか?
ウエストコーストの典型的なロック、特に後期イーグルスみたいな音です。それもその筈、スライドギターはジョー・ウォルッシュなんです。オルガンは珍しくアンドリュー・ゴールドが担当しております。
カーラというと1、2枚目が目が行きますが、実は本作も演奏がソリッドになってもカーラのメロディラインは健在で、味わい深い名盤です。あとこの後1988年に発表された「
New World」もいいアルバムですね。
追記:カーラ、再び来日されるようですね。3月ビルボードライブ!
AOR的SSWの名作あのアサイラムから1977年に発表されたテレンス・ボイランのアルバム。その容姿からしてジャクソン・ブラウンのフォロワーと思われますが、よりAOR的な音作りが堪りません。
個人的にデイン・ドナヒュー唯一の作品「
Dane Donohue」が大好きなのですが、そのプロデュースがテレンス・ボイラン。本作は間違いなくデイン・ドナヒュー的な音と思い、いつかは聴いてみたいと思っていたアルバムです。
またジャケットも非常に不思議な世界観を感じさせるものです。永らく入手困難なアルバムで、ちょっとミステリアスな存在でしたが、最近再リリースされ、今では比較的容易に手に入るようです。そして私も輸入盤をここ最近でようやく購入した次第。
でも輸入盤、歌詞カードもライナーノーツもないんですね。そこでいつも利用しているオンラインショップ
「芽瑠璃堂」で金澤さんのライナーノーツのみを購入しました(ライナーノーツだけを売っているとはスゴイですね)。
さてさて本作ですが、もう1曲目から期待を裏切りません。ちょっと重たいドラムのフィルインから始まる①「
Don't Hang Up Those Dancing Shoes」。
ドラムはジム・ゴードン。ベースはチャック・レイニー。サビでは美しいコーラスが聴こえてきますが、ティモシー・シュミットが参加しております。ギターはディーン・パークス、フェンダー・ローズにヴィクター・フェルドマン。そしてピアノにはドナルド・フェイゲン。ご存知のようにテレンス・ボイランとドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカーは同窓であり、もともと60年代後半にバンドを組んでいた仲です。
この1977年という時代は、ドナルド・フェイゲン率いるスティーリー・ダンの超名作「
Aja」が発表された年でもあります。この「Don't Hang Up Those Dancing Shoes」には、そんなスティーリーダン的なクールな音の佇まいが漂っていますね。
②「Shake It」は後にイアン・マシューズがカバー、ヒットさせてます。
ちょっと投げやりで不器用な歌いっぷりがテレンスらしいですね。印象的なフェンダー・ローズはテレンス自身のプレイ。またオルガンにはアル・クーパーが参加してます。
原曲はフォーキーな曲だったんだろうなと思わせる④「The War Was Over」。
タイトルから想像の通りメッセージソングです。ドラムにジェフ・ポーカロ、ギターにスティーヴ・ルカサーと、曲の持つイメージとはちょっと違うプレイヤーのセレクトと感じますね。
テレンスの1969年のデビューアルバム「Alias Boona」ではボブ・ディランのカバーも収録されているフォーキーなものでしたが、この④は音作りはAOR的ですが、字余り的な歌詞といい、ベースがフォーキーなテレンスが現れたものと推察されます。
⑤「Shame」は①と同じプレイヤーですので、これもスティーリー・ダン的な佇まいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=TxEuXebJhV8この曲はコンピレーションアルバムに結構収録されているので、結構有名な曲かもしれません。③「Sundown of Fools」ではかなりフォーキーなイメージが強調されますが、その対極にあるような楽曲が①や⑤ですね。イーグルス後期の重々しさに、スティーリー的AOR感覚が極上のサウンドを作り出してます。
金澤さんもご指摘されてますが、⑥「
Hey Papa」は本作中一番デイン・ドナヒューを連想させる楽曲です。
こうした楽曲にルカサーが合うと思うのですが、ギターはディーン・パークスです。リズムが重々しいので気になってみると、なんとドラムは3人のクレジットが・・・。
ジェフ・ポーカロとミッキー・マクギー、そしてテレンス本人。ベースはこれまた意外な人選のウェルトン・フェルダーです。強調されるコーラスはドン・ヘンリー。
本作、プレイヤーのセレクトも興味深いですね。非常にAORとして質の高いアルバムだと思います。
この後、1980年にサードアルバム「Suzy」が発表されますが、これが問題作。もともと1979年に本作の延長線上にあるような「Your Trout Is In The Mail」というアルバムが発表される予定が、延期され、かつ当時流行ったニューウェーブサウンドを取り入れてしまい、「Suzy」が発表されてしまいます。「Suzy」は未聴ですが、B面は本作の延長線上のような楽曲らしいです。
時代の波に揉まれてしまったテレンス。確かにイーグルスもドゥービーも、皆時代に応じたサウンドを採り入れ、そして80年代に解散していってしまいましたね。
本作はそんな切なさをも連想させるアルバムです。