ジョン・レノンも絶賛したニルソンのデビューアルバム「ウィザウト・ユー」「うわさの男」等で著名なニルソン。彼のデビューアルバムは、彼の経歴でいえば地味なアルバムに位置づけられるかもしれません。でもこれ、いいんですね。たまに書棚から取り出しては聴いてます。
ニルソンはデビュー前まで銀行員であったことは有名ですね。昼は自作曲を売り込み、夜は銀行員として生活していたようです。
当時フィル・スペクターに認められてロネッツやモダン・フォーク・カルテットに曲を提供していました。モダン・フォーク・カルテットにはチップ・ダグラスが在籍しており、そのチップ・ダグラスはモンキーズと縁深いアーチストです。ひょっとしたら、そういった縁でニルソンはモンキーズに「カドリートーイ」を提供できたのかもしれませんね。
本作はその③「Cuddly Toy」を含む、ニルソンのデビュー作。私はモンキーズの「Cuddly Toy」、大好きなんです。こうした単純明快な明るい曲、いいですね。ニルソンのヴァージョンの方が華やかですが、やはりモンキーズのアコギを主体とした爽やかなアレンジは秀逸です。
ただしニルソンのヴァージョン、エンディングの彼のコーラス・スキャット、驚異的ですね。3オクターブの声だけあって、トランペットを真似たような声に驚くばかりです。
あと本作にはビートルズのカバーが2曲(⑤「You Can't Do That」、⑦「She's Leaving Home」)収録されてます。これも有名なエピソードですが、アップルのプレス・オフィサーであるデレク・テイラーがビートルズの面々に本アルバムを聞かせたところ、ジョンがわざわざ国際電話で
“It's John...John Lennon. Just wanted to tell you that your album is great! You're great!”
とニルソンに伝えたとのこと。確かに彼の表情豊かなヴォーカルとアレンジ能力は凄いです。
特にビートルズのカバーである「You Can't Do That」。これはビートルズの曲、14曲が絶妙なアレンジで散りばめられてます。原曲はR&B調のロックですが、テンポ・曲調を全く変えた、なかなかのものです。これは必聴モノですよ。
本作は素晴らしいポップスが収録されたアルバムです。しかしながらニルソンがブレイクするのは次作以降のこと。これは彼がブレイクする直前の、自然体の姿が捉えられた一枚です。
ジャケの彼も銀行員っぽい佇まいですね(笑)。