ポールのソロ作品のなかでも一世一代の名作!ビートルズのひとりで、稀代のメロディメーカーであるポールは、ビートルズ解散後、しばらくしてウィングスを結成。1971年に「Wings Wild Life」、1973年に「Red Rose Speedway」を発表するも、散漫な印象は拭いきれませんでした。
そしてウィングスのメンバー2人が脱退。残ったメンバー、つまりポール、ポール夫人であるリンダ、そして元ムーディーブルースのデニー・レインの3人でナイジェリアのスタジオで本作を制作。会心の一枚を築き上げ、大ヒットを記録するのです。
不朽の名作、①「
Band on the Run」。派手なアルバムの割には、なぜかスローなイントロ。そしてファンキーで力強いメロディ、と思いきやオーケストラの組曲風展開に続く、アコースティックギターが奏でるAmのストローク!前半部分と後半部分を繋ぐ役割のこの部分がいいんですよね~。自分もこの部分をアコギで弾くと、毎回鳥肌が立ちます。
この当時のライブ(「Rock Show」)はやっぱり迫力あるし、ポールが抜群にカッコいい。リンダもまだ健在です(ちなみにリンダは1998年に亡くなってます)。拙いながらも効果的なキーボードを弾いてますね。
そして②「Jet」。これは後追いですが、私が初めて買ったウィングスのシングルです…。
これも大ヒット曲ですね。派手なブラスがかっこいい、ハードなロックンロールナンバー。同年全米No.1 となったバラード「My Love」の甘ったるさに失望したファンもいらしたと思いますが、そんなファンを狂喜させたロック。これも大好きです。
③「Bluebird」はポール流ソフトロック。
私はこの曲にAORの原点を見出してしまいます。甘~い曲調に、しっとりとしたサックスソロ。①②でハイテンションになった感情が、見事にクールダウンさせられます。
意外と大好きな⑦「No Words」。ポールとデニー・レインの共作。
当時頑張っていたエリック・カルメン率いるラズベリーズのようなパワーポップ系のミドルテンポのメロウなロック。ポールの声ってこういう曲に合うんですよね。
オリジナルアルバムでは最終トラックの⑨「Nineteen Hundred and Eighty Five」。
邦題「西暦1985年」ですね。イントロのピアノから緊張感漲る曲。これも名曲だと思います。その緊張感がエンディングに向けて段々と張り詰めていきます。そしてその緊張感が弾けたと思ったら、「Band on the Run」のメロディがフェードアウトしていきます。
本作は個々の曲が独立しており、決してコンセプトアルバムではありませんが、こうした演出がトータル・アルバムの印象を持たせています。このエンディングの「Band on the Run」。わずかな時間ですが、効果的です。
ポールのメロディメーカー振りが存分に発揮された一枚。ウィングスの中では一番好きなアルバムです。