3人となったモンキーズの7作目。ソフトロックの名盤!
1969年2月発表の本作は、グループ一のひょうきん者であったピータートークが抜け、3人組のモンキーズとなって初めて発表されたアルバム。
1966~1969年までの未発表音源集を集めた感もあり、残念ながらまとまりに欠けるアルバムです。メンバー各々が好きな楽曲を持ち寄り、レコーディングメンバーも違うとあってはしょうがないでしょう。
それでもこのアルバムは異様な輝きを放っております。

注目すべきは2点。
1点目は当然いえば当然ですが、マイク・ネスミスのオリジナル曲の素晴らしさ。モンキーズという作られたグループのなかで、必死に独自の音楽を追求していったマイク。3人組となって、いよいよ本領を発揮していきます。

マイクのオリジナル曲は⑥「Don't Wait for Me」、⑧「While I Cry」。⑥はスティール・ギター、バンジョーが入った完全なカントリーロック。これは何も知らない方が聴いたら、モンキーズとは分からないでしょう。モンキーズというより、完全にマイクのソロと言っていいでしょう。哀愁漂う名曲です。
⑧はフォークロックっぽい佳曲。ギターのアルペジオが美しく、よく練られた曲。これもマイクらしいですね。
ちなみにボーナストラックである⑭「Carlisle Wheeling」(もちろんマイクの自作)は、後にソロアルバムで収録されることとなる、これも名曲です。
さてもうひとつの注目すべき点。それはソフトロックの佳曲が収録されていることです。
⑩「Girl I Left Behind Me(恋の思い出)」、⑪「Man Without a Dream(夢のない男)」。この2曲はモンキーズのなかでもベストトラックに入るでしょう。
⑩はキャロル・セイガー&ニール・セダカ、⑪はゴフィン&キングの名曲。
「恋の思い出」は切ないメロディラインがモンキーズらしく、非常に名曲然としたポップスに仕上がってます。
「夢のない男」はボーンズ・ハウのプロデュースでベース(ジョー・オズボーン)、ドラム(ハル・ブレイン)、キーボード(ラリー・ネクテル)といった、ソフトロックの黄金ミュージシャンが演奏に携わった素晴らしい曲。
そして本当の白眉はボーナストラックの⑬「Someday Man」。これはロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムズ作の名曲で、「夢のない男」と同じくボーンズ・ハウのプロデュース。素晴らしいグルーブ感(ベースがいい)とホーン・アレンジで、ソフトロックの最高峰に位置するくらいの仕上がりとなってます。
私が本作を購入し、未だに聴き続けているのは、これを聴くためといってもいいくらいです。ディビーのヴォーカルもいいですね。
ビートルズの「ホワイトアルバム」に近い印象の本作。特にマイクは独自の世界を切り開き、カントリーロックの祖として、その後も活躍していきます。この後発表されたモンキーズのシングル「すてきなミュージック」はマイク作で、ヒットこそしませんでしたが、ブラスロックに影響を受けた曲で、未だに色褪せない名曲だと思います。