70年代前半に活躍した英国の偉大なるB級バンド、フェイセズが結構好きなのですが、ヴォーカルのロッド・スチュアートのソロについては初期のものについては
「Gasoline Alley」を聴いたくらいで、他はあまり聴き込んでませんでした。で…、今回ようやう名盤「Every Picture Tells A Story」を聴き、思わず感動!どうもアイム・セクシーのイメージが強すぎるロッドですが、この当時もツワモノミュージシャンでした。
スティーヴ・マリオットに抜けられてしまい、取り残された3人、ロニー・レイン、イアン・マクレガン、ケニー・ジョーンズの下に現れた救世主がロン・ウッドであり、ロンが連れてきたロッド・スチュアート。この時点でロッドはマーキュリーとソロ契約をしている身でしたが、結局フェイセズはワーナーと契約。これが後に大きな問題に発展していってしまうのですが…。
このロッドの名作は、ロッド自身のサードアルバムです。時系列に整理すると…。
1970年2月 ロッド「An Old Raincoat Won't Ever Let You Down」、3月 フェイセズ「
First Step」、9月 ロッド 「
Gasoline Alley」
1971年3月 フェイセズ「
Long Player」、7月ロッド 本作…とソロとバンド交互にアルバムを発表していってます。ソロとバンドと、徐々に複合的に人気が盛り上がってきたわけで、この本作がロッドやフェイセズにとってブレイクの決定打となったわけです。
プロデュースはロッド自身。バンドからはイアンとロンが参加。ドラムはジェフ・ベック・グループ時代以前からの盟友ミック・ウォーラー。
アルバムトップはタイトル曲の①「
Every Picture Tells A Story」。ロッドとロンの共作です。今更ですがこの曲の持つパワー、スゴイですね。アコギのカッティングがハンパなくカッコいい!ちょっとタメてグルーヴ感を出しているミックのドラムもいい!そしてこの曲のハイライトは当時英国のジャニスと呼ばれていたマギー・ベルとのデュエットでしょう。途中からマギーの迫力あるヴォーカルが加わっていきます。エンディングでのデュエットは実に迫力あります。
ボブ・ディランのカバーの⑤「
Tomorrow is Such a Long Time」。ブリティシュ・フォークの極みというか、カントリー・ミュージックを英国風にアレンジしたという感じ。こういうフォーキーなロッドっていいんですよね。このスティール・ギターもロン・ウッドですね。
英国でNo.1に輝いた⑦「
Maggie May」。もともとはシングルのB面扱いだった曲だったのですが、地元DJがこちらをオンエアしたら、こっちの方に火がついてしまったという名曲。ロッド自身は自分で作った曲にも関わらず、「なぜこの曲がヒットしたのか分からない」と言ってます。後半のマンドリンは当時頭角を現していたフォークグループのリンディスファーンのレイ・ジャクソン。彼は2003年にロッドを著作権侵害で訴訟を起こしております。あまりこのことは大きく報じられてもいないので、イチャモン程度のことなのでしょうね。
この曲のビッグヒットでフェイセズも商業的に脚光を浴びることになります。
ロッド作の⑧「
Mandolin Wind」はタイトル通り、マンドリンをフューチャーした楽曲。レコーディングでは、前述のレイ・ジャクソンがマンドリンを弾いてますが、リンクしたライブではロッド自身が弾いてますね。
それにしても単なるヴォーカリストと思っていたロッド、実は有能なライターでもあったんですね…、失礼しました(苦笑)。
ちょっと意表を付くのがテンプテーションズのカバーの⑨「(I Know) I'm Losing You」。確かに原曲もギターのリフが印象的なソウルナンバー。これをロッドは更に黒くやってます。かなりヘビーな仕上がりですね。イントロのリフがちょっとZEPの「Whole Lotta Love」を連想させます。ちなみにアップしたのはフェイセズでの演奏。ケニー・ジョーンズのリズミカルなドラムソロも堪能出来ます。
本作は全米・全英共にNo.1を記録しました。ロッドのソロが先にビッグヒットを記録したんですね。そしてロッド・スチュアート&フェイセズみたいな扱いになっていき、1973年にロニーが脱退してしまいます。
後にケニーはインタビューで「マーキュリーとマネージャーのビリー・ガブにいいように利用された。ただ誤解しないでもらいたいが「マギー・メイ」がヒットしたときは自分のことのように俺たち4人は喜んだよ」と語ってます。フェイセズの絆を感じさせる発言にホッとさせられました。