ソウル・レジェンドの一人、オーティス・レディング。1966年11月に発表されたオーティス5枚目の本作、なんと発表時で、オーティスは若干25歳! とてもそんな若いとは思えない、老練な、絞り出すようなヴォーカルが彼の魅力だったりする訳ですが、ソングライターとしても有能。本作12曲中、7曲が彼のペンによる作品なんですね。
それからもうひとつの魅力はバックを支えるミュージシャン。彼が所属したスタックス・レコードは、スティーヴ・クロッパー(G)、ブッカー・T・ジョーンズ(Key)、ドナルド・ダック・ダン(B)、アル・ジャクソン・Jr(Ds)というブッカー・T&ザ・MG’sが演奏していることが多く、特にオーティスは彼らと共同作業でアルバムを作り続けていたのです。本作はそんなオーティスの、ある意味頂点を極めた作品と云えるかもしれません(実際、生前、最後のオリジナルアルバムとなってしまいました)。
オーティスといえば声を絞り出すようにして歌うバラードが代名詞のようになってますし、実際本作でも③「Tennessee Waltz」とか⑤「Try A Little Tenderness」といったバラードなんかが有名ですね。特に⑤はシングルカットされ、本作を代表するナンバーかもしれません。「Try A Little Tenderness」って、スタンダードナンバーなんですが、オーティスはサム・クックのナンバーをリアレンジしたと思われます。でも完全にオーティスのオリジナルって感じですよね。特に後半に向かって、熱唱していくリアル感が尋常じゃない。それをMG'sのバック演奏が見事にサポートしてます。「Try A Little Tenderness」のライブ映像をアップしておきますが、スリリングですよね。
「Try A Little Tenderness」の後半でもお分かりのように、やっぱり個人的にはオーティスの魅力はミディアム・アップ・テンポナンバーにあると思ってます。
④「Sweet Lorene」は、オーティスの死後発表され、大ヒットを記録した「Dock Of The Bay」のB面に収録されたナンバー。オーティスとアイザック・ヘイズの共作。お聞きの通り、アル・ジャクソン・Jrのドラムがシンプルながらも実にタイト。オーティスのシャウト気味のヴォーカルを盛り上げます。
⑧「She Put The Hurt On Me」はオーティスのオリジナル作品。ここでもアルのドラミングが楽曲をグイグイ引っ張ります。ドナルドのベースもいいですね。
アイザック・ヘイズの作品である⑫「Love Have Mercy」。ちょっと緊張感のあるコード進行のアップテンポなナンバー。ここでもオーティスの堂々たる歌いっぷりが素晴らしい。
そしてなんといっても白眉はビートルズのカバーの⑥「Day Tripper」でしょう。敢えてライブバージョンをアップしてみました。この曲のカバーは星の数ほど数多存在しますが、これほどスピーディーで力強いカバーもないでしょう。オーティスの熱唱とバックのMG'sの演奏が素晴らしい。
1967年12月10日、オーティスは自家用飛行機事故によりこの世を去ってしまいます(ちなみに8人の搭乗者の内、トランペット奏者のベン・コーリーが唯一人無事だったのですが、その彼も昨年に死去されています)。オーティスはこの事故の3日前に「Dock Of The Bay」を収録しており、この曲は1968年1月にリリース。見事に全米No.1を記録します。今までの彼の作品(上記にアップしたような作品)とは一線を画すような楽曲に、メンバーの間でも意見が分かれたそうですが、オーティスは「初のナンバーワンソングとなる!」と仰っていたようです。この曲を聴くにつれ、オーティスはその後の作品の方向性をどう考えていたのか、気になります。きっと新しい展開が待っていたのでしょうね。