70年代のストーンズ、実は結構大好きです。スワンプやカントリーも自らの音楽に昇華してしまう器用さ。60年代のストーンズはブルースをベースとしたロックンロールで、それほどの深みは感じられなかったのですが、70年代のストーンズの音楽には実に深い味わいを感じます。特にデッカ・レコードとの契約終了後に自ら設立したローリング・ストーンズ・レコードから発売された作品はいいですね。
70年代ストーンズ作品のなかでは
「Sticky Fingers」や
「Exile on Main Street」あたりが有名ですが、最近、1978年発表の「Some Girls」(邦題「女たち」)を購入、すっかりお気に入りになっております。
本作はスタジオアルバムとしては、ロン・ウッドが加入後の「Black And Blue」から2年振りに発表された作品。この間、1977年2月にキースがヘロイン不法所持で逮捕されるという事件があり、ストーンズ解散説が流れたほど。またパンク・ムーブメントの勃興により、70年代前半の勢いも衰えていくこととなった時期。つまり逆風が強かった時期での本作発表だった訳です。そして結論から言うと、本作、70年代ストーンズを締め括るような快作となったのです。
まずは世間を驚かせた①「Miss You」。当時、流行していたディスコサウンドを大胆に取り入れた楽曲で、実にソウルフルでもあります。ミックがビリー・プレストンとジャムセッションをしている中で、発展させた楽曲。ファースト・シングル・カットされ、全米No.1を獲得。ファルセット・ヴォイスでコーラスをとるなど、従来のストーンズからは想像出来ない、意表を付くサウンド。間奏のミックのセリフといい、こうして聴くと、やっぱり何をやってもストーンズはカッコいい!
本作、この「Miss You」の流れを汲んでいくのかと思ったら、全く違います。ここから更に本領発揮!ストレートなロックンロールの②「When the Whip Comes Down」。ロンとキースが織り成すギターが独特のグルーヴ感を生み出してますね。あとチャーリー・ワッツの軽めのドラムは、昔は個人的には好みではなかったのですが、こうして聴いて見ると、チャーリーのワンパターンともいえるドラミングが、実はストーンズ・サウンドには一番ぴったりくるんですよね。コーラスも最高です!
パンキッシュな⑤「Lies」、ロックンロールな⑦「Respectable」とスピーディーなナンバーは、ストーンズの王道。
この2曲の間に味わい深いカントリーナンバーの⑥「Far Away Eyes」が収まっているところがいいですね。スティール・ギターはロンのプレイ。フェイセズでのブリティッシュ・カントリー・テイストが、うまくストーンズに移植されたような、そんなナンバー。「Miss You」のB面ソングですが、カントリー好きの私にとっては、こうした曲、堪りませんね。アップしたPVも、メンバーのリラックスムード満点の演奏シーンが素晴らしい。
キースの歌う⑧「Before They Make Me Run」、軽快にリズムを刻むチャーリーのドラムに乗って、ロンのスライドがかっこいい。冒頭申し上げたように、キースのヘロイン問題があった中での収録。キースは自ら奮い立たすように、この曲を歌っていたんだなあと思わずにはいられないナンバー。
エンディングはやっぱりストーンズ王道のロックンロールナンバーで・・・。⑩「Shattered」。ベースはビルではなく、ロンのプレイ。後のラップを思わせるようなミックの歌い方、リズムの切れも良く、一筋縄ではいかないストーンズ流ロック。アップしたライヴ、えらいスピーディーに仕上げてます。
70年代最後のストーンズ作品、まさに無駄曲なしの名作ですね。