何度となく挑戦しては挫折してしまう・・・、ジョニ・ミッチェルのジャコと共演したアルバムは、そんなアルバムです。そしてたまたま縁あり、再び「Hejira(逃避行)」をここ数日、聴いております。
このアルバムはジャコ・パストリアスがジョニのアルバムに初めて参加した作品で、他にはラリー・カールトン、トム・スコット、二ール・ヤング等が参加。衝撃のアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像 (Jaco Pastorius)」の発表から3ヵ月後の1976年11月に発表されました。
ジャコやラリーが参加しているのでアグレシッブな内容かというと、ドラムレス、あるいはおとなしいドラムで意外と内省的。ジョニはこれらミュージシャンに全く食われてません。完全にジョニの世界に彼等が参加している、という感じですね。
でも間違いなくジョニの音楽をジャコの独特のベースラインが下支えしております。
ジョニはもともとはフォーク路線のミュージシャンでしたが、70年代前半にはフュージョン・ジャズ界と交流。1974年には最初のフュージョン路線が強まった作品と云われている
「Court And Spark」を発表します。それから2年、ジョニは独特の世界を築いていきます。
正直ポップス少年の私としては、こうした心象的な音楽は馴染みが薄いのですが、特に疲れたときに聴くジョニの世界は、なんだか心に染み入ってきます。
特に本作は、アプローチはスティーリー・ダンに近い感じがしますが、ジョニはフォーク出身なだけに、フォークとジャズをうまくクロスオーバーさせたような、独特のサウンドが繰り広げられます。
本作中、一番ハードな⑦「Black Crow」。思わずレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」を連想してしまうギターのリフ(同じかもしれませんね)。
このスタジオ録音バージョンはベースはジャコ、そしてギターはラリー。本作中、唯一ジャコとラリーが共演している楽曲なんですね。
ジャコのベースは相変わらず縦横無尽に飛び交っており、ラリーのギターもそれに負けない効果音的な音を奏でてます。とにかくしびれる緊張感です。
ここでは珍しいライブバージョンもアップしておきます。しかもこのライブ、ベースはジャコ、そしてエレピにハービー・ハンコックが参加してます(パーカッションは名手ドン・アライアス)。ジャコとハービーの緊張感ある演奏、アコギはもちろんジョニ本人。ちょっと音が悪いですが、スゴイ演奏です。
ジャコの参加作品は本作では⑦「Black Crow」を含めて4曲。その4曲のなかで一番有名なのが、トップを飾る①「Coyote」でしょう。
本作のなかでは一番ポップな曲かもしれません。ギター、ベース、パーカッションのみのシンプルな演奏なんですが、ジャコの表現力豊かなベースを中心に、とても心に響いてくる演奏ですね。
ラリーのいぶぎ銀的でブルージーな演奏が聞きたければ、④「A Strange Boy」でしょう。随所にラリーらしいフレーズが聞かれます。この曲はベースレスみたいですね。
曲は単純なフレーズの繰り返しなんですが、とにかくラリーのプレイが光ります。
このアルバムは緊張感のある楽曲が多いのですが、一番ジャージーでリラックスムード満点なのが、⑧「Blue Motel Room」。
このジャージーなメロディに、ジョニはモーテルにいる自分を歌います。男はモテモテなのでしょうか。LAに戻っても愛してくれるかしらと歌います。
ジャズベーシストのチャック・ドマニコの名演が光ります。夜にしっとりと聴きたい1曲。
♪ Tell those girls that you've got Joni
She's coming back home ♪
このアルバムはポップ指数はゼロですが、とても心に響くアルバムです。出来ればジョニの心の叫び、歌詞が分かれば、数倍、楽しめるでしょう。
ジョニとジャコのコラボはここから始まります。