このアルバムを発表した当時、ラリーはクルセイダーズに加入し一躍脚光を浴び始めた頃。まだクルセイダーズの大ヒットアルバム「南から来た十字軍」発表前のこと。 本作はそのラリーの実質的な最初のリーダー作品(1968年に「With A Little Help From My Friends」というジャズアルバムを発表してますが)。 そしてその中身は全く意表を付く、ヴォーカルアルバムなのです。
①「Easy Evil」、なんと山下達郎ファンには御馴染みのアラン・オディ作。聴いてびっくり、一瞬マイケル・フランクスかと・・・。ジャージーでボサノバタッチというか・・・。そしてラリーのヴォーカルまでが何となくマイケルそっくり。 マイケル・フランクスのデビューが、この作品発表と同時期。でも本格的なメジャーデビュー作品「The Art Of Tea」 は1975年発表ですから、それを考えるとラリーの先見の明が窺えます。 ラリー特有のブルージーで粘着質なギターソロもたっぷり堪能できます。
本作において一番気に入っているのが⑥「Wavin' And Smilin'」。何と言ってもジョー・オズボーンのエッジの効いたベースとラリーのスライド気味のアクセントとなるギターがかっこいい。そして楽曲はソフトロック、いや後のAORに通じる小気味良さがあります。 リー・リトナーがAORに接近していた時期がありますが、実はラリー・カールトンは既に1973年の時点でクロスオーバーさせているのでした。
アルバム最後の楽曲はラリーのオリジナル曲の⑧「Free Way」。これもA面最後の「With Respect to Coltrane」と同様、クルセイダーズの面々がバックアップしているインストです。ジャージーなラリーのギターのリフが基本モチーフ。ただし途中、曲調は一転してハードな展開に。ギターはちょっとノイジーな激しい音に。そしてまたジャージーな展開に。 この曲の2009年のライブ映像がありました。このバージョンはハードなパートがありませんね。
私にとってのラリーは「Alone/But Never Alone」というアコースティックアルバム。これが私のフュージョン好きの入り口でした。とてもチャーミングなアルバムなんですよね。 でも多くの方にとってはやはり「Roon 335」でしょうかね。このAOR系ヴォーカルアルバムから、やはりソロもフュージョンへと路線変更(?)。この曲はやっぱりかっこいい。