なかなかスゴイアルバムです。
70年代、はっぴいえんどが起こしたJ-POPの潮流はユーミンや山下達郎へ引き継がれていきます。そしてバックミュージシャンとして著名なティン・パン・アレイ(キャラメル・ママ)はそういった橋渡し的な時代の重要なミュージシャン集団でした。
ティン・パン・アレイ、細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、松任谷正隆(Key)、林立夫(Ds)の4人をコアメンバーとした集団ですが、彼等が小坂忠をフューチャーした作品が本作です。もちろん本作は小坂忠がティン・パン・アレイを起用した、小坂のアルバムですが、その出来栄えはティン・パン・アレイの作品と言ってもいいかもしれません。
従来の小坂氏はフォーキー路線の王道を行っていましたが、突如ソウルフルな路線へと転換した重要なアルバムが本作。とにかく1曲目の①「ほうろう」からファンキーな演奏が炸裂します。細野晴臣作のこの作品をティン・パン・アレイがかっこよく演奏します。そこに小坂の淡々としているようで熱いヴォーカルが映えます。
メロディもちょっとひねくれてますね。さすが細野氏!!! ジャパニーズ・ファンクをこんなに格好よく演奏している楽曲があったんですね。
②「機関車」は小坂自身のセルフカバー。もともとはソロデビューアルバム「ありがとう」に収録されていた、のどかなフォーキーソングだったものを、見事にサザンソウル的な郷愁感漂うアレンジに仕立ててます。JT風な原曲も大好きだし、このスワンプ的なアレンジも大好きです。
最高にかっこいいのが⑤「ゆうがたラブ」。作詞は小坂夫人:作曲は小坂本人。これは強烈なファンキーソング。鈴木茂の随所に切り込んでくるギターが堪りません。もちろん細野&林のリズム隊の熱演も光ります。
この楽曲にはこの当時の最高の演奏が詰め込まれているかもしれませんね。
↓この映像も最近のモノですね。楽曲の雰囲気は伝わると思います。
B面トップが⑥「しらけちまうぜ」。この曲大好きなんですよね。作詞:松本隆、作曲:細野晴臣のゴールデンコンビ。フィリーソウルをここまでうまく仕立て上げてしまうとは・・・。ここでも鈴木茂のギターカッティングが光ります。
後にフィリー好きな小沢健二が東京スカパラオーケストラと共演し、この曲をカバーしてます。
このアルバムのなかでは一番ポップかもしれません。
⑦「流星都市は、小坂、細野、松本等が在籍していたエイプリル・フールの「タンジール」を改作したものだし、⑨「ふうらい坊」はもちろんはっぴいえんどのカバー。このアルバムにはこうしたカバー的なものが多く収録されているのですが、そのどれもがソウルフレーバーたっぷりの、とても味わい深い仕上がりになってます。
またこのアルバム、全作品のアレンジに細野晴臣が関わっており、彼の類稀な才能に敬服してしまいます。
邦楽には疎い私ですが、この70年代の流れは細野氏を中心に動いていたような気がします。
個人的にはユーミンの初期のスタイルが大好きで、そこからキャラメルママの存在に気付き、ティン・パン・アレイが関わった作品を聴くようになりました。もちろんティン・パンのアルバムもチェックしたのですが、それはどうも散漫な印象があり、あまりヘビーローテーションにはならなかったですね。
このアルバムは、そのティン・パン一派が全力投球したもので、ものスゴイクオリティです。全員が同じ方向を向いているというか、統一感を感じますね。
洋楽好きも納得の一枚です。