私が敬愛していたエリック・カルメンの訃報が届きました、それも突然に。
彼が率いたラズベリーズの4枚のオリジナルアルバムはどれも秀逸で、よく聴いてましたね。
このブログでは、既にエリックが発表してきた作品は相当数ご紹介済ですが、まだ80年代のアルバムはご紹介出来ておりませんでしたので、彼の功績をもっと多くの方々に知って頂きたく、そのアルバムもご紹介したいと思います。
80年代をリアルタイムで過ごした方々には、映画「フットルース」のサントラが大ヒットしたことはよくご存じと思いますが、そのサントラから大ヒットした曲が、マイク・レノ(ラヴァーボーイのVo)とアン・ウィルソン(ハートのVo)の「
Almost Paradise 」。この曲がエリック・カルメンの作品であったことは周知の事実ですが、一時低迷していたエリック・カルメンが再び脚光を浴びた会心の作品だったのでした。
聴いてお分かりの通り、如何にもエリックが書きそうな泣きのバラード。これはエリックが歌っても全く違和感のない、正真正銘のエリック流バラードでした。
そしてエリックは4年振りとなる本作、ソロ5枚目のアルバム「Eric Carmen」を発表するのでした。
アルバムのタイトルはファーストと同様に自身の名前を冠したもの。それほど自信に満ち溢れたものだったのでしょうか。それとも新たに心機一転という意味合いだったのでしょうか。個人的にはこのアルバム、如何にもこの時代特有の80年代サウンド的なアレンジで、あまり好きになれない1枚だったのですが、ハッとさせられる曲もいくつかあります。
まず最初にニヤッとさせられたのが⑦「You Took Me All the Way 」。
イントロのギターのリフから「Come On !」のシャウト…、ああ、ラズベリーズのエリックだなあ。曲が甘いメロディに変わるところなんかは「Go All The Way」そのもの。80年代風アレンジ、シンセドラムとかはイマイチですが、曲はいいですね~。
シングルカットされた甘いバラードの②「
I'm Through with Love 」。
愛の終わりを歌ったエリックらしい珠玉のバラード。
この曲、一瞬「All By Myself」を彷彿させるメロディが登場します。甘い、そして泣きのメロディはエリックならではですよね。 当時のPVがありましたのでアップしておきます。エリック、カッコ良すぎますね。VIDEO 私のあまり好きでない80年代特有のサウンドの⑤「Come Back to My Love 」。
この曲を採り上げた理由はこの曲の作者にあります。本作の殆どがエリック単独の作品なんですが、この曲だけはボブ・ゴーディオ、ジェリー・コルベッタ、ジョン・ベティスの共作。ボブ・ゴーディオは本作のプロデューサーでもありますが、フォー・シーズンズのメンバー、かつプロデューサーとしても有名な方。ジェリー・コルベッタは元シュガーローフのメンバーで、1978年に発表した「
Jerry Corbetta 」はポップスファン必携の1枚。そしてジョン・ベティスはカーペンターズの作品でもリチャード・カーペンターとのコンビで数多くの名曲を書いてきた方。
こんな大御所が集まって書いた曲…という理由でアップしましたが、曲は当時流行ったアレンジでちょっと残念(苦笑)なんですが、彼等らしいポップスですね。 軽快なアカペラで始まる⑧「Maybe My Baby 」。
1985年にカントリー歌手のルイーズ・マンドレルがカバーしてヒットさせた楽曲で、こちらもエリックらしいポップス。 エリックならこうした楽曲は数分で書き上げたんだろうなあと思います。もともとこうしたポップスが大好きだったんでしょうね。 ロックチューンの⑨「Spotlight 」、これも80年代サウンドアレンジなんですが…。
キッスのジーン・シモンズも「エリックは「All By Myself」のイメージが強いが、本当のロッカーだった」といった趣旨の追悼コメントを出されてましたね。
実は私もそう思ってまして、特にラズベリーズ時代はロッカーそのもの。このアルバムでも最初にご紹介した曲やこの曲(本当にアレンジは残念なんですが)のシャウトにその精神が表れてますね。 そしてエリックはロッカーであると共にバラードの名手でした。
本作エンディングも素晴らしいバラードが用意されております。それが⑩「The Way We Used to Be 」。
昔の恋人を思い出す…、そんなことが皆さんもきっとあると思います。
エリックは素晴らしいメロディメーカーであると当時に、歌詞を紡ぎ出すことにも才能を発揮しておりました。
仰々しいバラードが得意なエリックにしては、かなり短い曲ですが、非常に印象深い楽曲です。私の大好きな1曲。
エリックはラフマニノフの楽曲をモチーフに「All By Myself」「Never Gonna Fallin’ Love Again」といった名バラードを発表しておりますが、実は著作権が切れていない国もあったことで、ラフマニノフ財団に印税を払わないといけない羽目に陥ってしまいます。何かそういったことと、エリックが寡作であったことが関係あるのかは分かりませんが、彼が素晴らしいメロディメーカーであったことは事実。
多くの素晴らしい音楽を有難うございました。R.I.P.
遅ればせながら今日は初打ち…、早朝出発に付き、早々に投稿しておきます。そこのゴルフ場は地中海リゾート風なクラブハウスなので、時間あったら追加で写真を下に追加するかもしれません。
さて、今回は私の大好きなスティーヴン・スティルス です。
1971年にはCSN&Yの活動は終了し、各メンバーはソロ活動に注力していきます。スティーヴンは自身のセカンド「
Stephen Stills 2 」を発表し、プロモーションツアーを敢行。そのツアーも9月には終了し、スティーヴンは同ツアーメンバーだったダラス・テイラー(Ds)、カルヴィン・サミュエルズ(B)、ポール・ハリス(Key)、ジョー・ララ(Per)等と共にマイアミのクライテリア・スタジオに入ります。
そこで新たなプロジェクトの構想の一環として、パートナーにクリス・ヒルマンを招聘。クリスはフライング・ブリトー・ブラザーズのメンバーでしたが、この時点で解散を決めていたものと思われます(もともとクリスの方がスティーヴンに新たなプロジェクトを持ちかけたとの説もあります)。クリスは複数のメンバーと共にマイアミに合流し、マナサスが結成されます。そして発表されたアルバムが「
Manassas 」です。
マナサスは結局、セカンドアルバムを発表後に空中分解してしまうのですが、(前置きが長くなりましたが)今回ご紹介するアルバムは、そのマナサスの未発表音源集です。ですから発表された時期は2009年ですが、音源自体は1971年~1973年(一部1975年)のもの。
通常未発表音源集というと、中身が詰まらないものが多いのですが、本作はなかなかの良作。もちろんアルバムとしてのバランスは全く取られていませんが、1曲1曲は聴き所のあるものばかりです。
カッコいいロックナンバーです。まず印象に残るのがスライド・ギター。これはゲスト参加したジョー・ウォルッシュのプレイ。もちろん当時はジョーがイーグルスに加入するなんて、誰も想像すらしていなかったと思いますが…。
この曲のライヴ映像がありましたが、なぜかスティーヴンは演奏終了後に登場(笑)。しかも(恐らく)デヴィッド・クロスビーと共に登場してますね。
クリスとジョー・ララ(でしょうか)がフロント・マン扱いしたステージとなってます。いずれにしても貴重なマナサスの演奏シーンです。
VIDEO
「Stephen Stills 2」に収録されていた②「
Sugar Babe 」。
https://www.youtube.com/watch?v=01TFP1xnrgQ ソロのバージョンとテンポもそう大差ないのですが、マナサスの方がより、バンドサウンドに近いイメージでしょうか。但しダラスやポール、カルヴィンと同じメンバーでの演奏ですから、恐らくマナサスとしての肩慣らし的な楽曲だったのでしょう。個人的に好みの楽曲でしたのでチョイス致しました。
⑤「Like a Fox 」も「Sugar Babe」と同様のミディアム・テンポのロックナンバー。
ボニー・レイットがコーラスで参加しております。
せっかくなのでクリス作のスワンプな楽曲⑨「Love and Satisfy 」もご紹介しておきます。
この曲は後にThe Souther-Hillman-Furay Bandで採り上げられます。そちらはJDサウザーやリッチー・フューレイの味付けもあり、スワンプというより、カントリー風味が効いております。
ヘビーなブルース・ナンバーの⑩「
High and Dry 」。
https://www.youtube.com/watch?v=682SUPUNcAQ たまにはこういうブルージーなナンバーもいいですね。
スティーヴンとアルのギターの応酬がスリリング。そしてスティーヴンの熱唱…、この辺りが聴き所ですが、2分30秒過ぎから、後から入れた歓声と共にテンポアップした後半の熱いジャムも、このバンドの熱い演奏が楽しめます。これがなぜお蔵入りとなったのか分かりませんね。
本作は①~⑩がロック、⑪~⑭がカントリー・ブルーグラス、⑮がスティーヴン単独という構成です。
せっかくなのでブルーグラス調の4曲から1曲セレクトしておきます。セカンドアルバムでも披露されていたスティーヴン作の⑬「Do You Remember the Americans 」。
セカンドアルバム収録の正式なバージョンよりもかなりテンポアップしたアレンジ。こちらが原型ということです。
バンジョーはアル・パーキンス、マンドリンはクリス・ヒルマン。この二人のプレイが光ります。
個人的にはスティーヴンの音楽は、70年代前半からマナサス辺りが一番好みです。この作品集も、彼の良さが十分発揮された一枚。味わい深いですね。
4月6日のジェームス・テイラー来日公演参戦に際して、音楽愛好家の大先輩にチケットはお願いしていたのですが、そのチケットが到着して度肝を抜かれました。
東京ガーデンシアターって8千人収容のホールなんですが、その大きなホールのアリーナ、なんと1列目!!真ん前じゃないですか。
しかもステージ正面区画の1列というプレミア級の席。周りに著名人が座るんじゃないかと、別の意味でもドキドキしております(笑)。
またJTのアルバムはご紹介するとして、今回は(全くJTとはイメージの違う)ハンブル・パイです。
スティーヴ・マリオット率いるハンブル・パイというと、私的には「
Smokin' 」や「Eat It」のジャケットが思い浮かびますが、こちらの作品を思い浮かぶ方というのはあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。
本作は1974年、ハンブル・パイ7作目のスタジオ・アルバム。全12曲中、7曲がカバーということもあり、ちょっと地味な印象ですが、前作ツアーでも一緒だった黒人コーラスグループのブラックベリーズが参加した、非常にソウルフルな1枚で、個人的には非常に気に入っております。
プロデュースはハンブル・パイ自身。ジャケットのデザインはヒプノシス。鍵穴からトイレに座る女性が映っているというエロチックなもの。決してセンスがいいとも思えませんが…。
それではまずはオープニングナンバーから。如何にもハンブル・パイらしいハードロックなタイトル・トラックの①「Thunderbox 」。
スティーヴ・マリオットとクレム・クレムソンとの共作。ピーター・フランプトンの後釜として加入したクレムですが、元コロシアムにいただけあってかなりいぶし銀的なギターを聞かせてくれます。
この曲、イントロこそフリーっぽい感じですが、ブラックベリーズのコーラスが加わり、次のメロディへいくと一転、ローリング・ストーンズばりのかなりR&B色の濃いナンバーに変化していきます。特にスティーヴのヴォーカルが際立ってカッコいいですね。
ビートルズもカバーしたアーサー・アレキサンダーの④「Anna 」。
ビートルズのイメージが強烈にある曲ですが、あまりにもスティーヴのヴォーカルがソウルフル過ぎて、ちょっと印象が変わってきます。
如何にもスティーヴが好みそうな選曲ですね。
後期ZEPのようなサウンドの⑥「Rally with Ali 」。
イントロのジェリー・シャーリーのヘビーなドラムはボンゾほどじゃないですが、重厚感ありますね。
メンバー4人の共作ですが、スティーヴのソウル好きの影響なのか、コーラスなんかはファンクっぽい印象を受けます。ハードロックの括りの中でも、こうした楽曲は新境地的なものかもしれません。
ドビー・グレーの名曲⑪「Drift Away 」をカバー。
当時のライヴ映像を見ると、このグレッグが真ん中に立って、スティーヴが左側で暴れまくってます。
アップしたのは1974年6月のステージ、エディ・コクランの超名曲「C'mon Everybody 」。
もちろんスティーヴのソウルフルなヴォーカルが素晴らしいのは申すまでもないのですが、グレッグのコーラスが実にいいのです。上にご紹介した「Drift Away」の渋いヴォーカルがそのままこちらでも聴けます。スティーヴのハイトーンな声質と合ってますね。それから間奏の盛り上がりからのクレムのスライドギターが絶品。いや~、この当時のハンブル・パイのステージも恐ろしく迫力あります。VIDEO ゴスペルグループのザ・ステイプル・シンガーズのグルーヴィーな⑫「Oh La-De-Da 」。
原曲も相当ノリがいい楽曲ですが、それを少しテンポ遅くし、ヘビーなギターのリフで料理。もちろんブラックベリーズのコーラスを全面に生かしたアレンジです。
ピーター・フランプトンが離れて、ハンブル・パイはより一層ソウルフルな度合いを深めていきますが、スティーヴはこういう曲をやりたかったんだろうなあと感じます。スティーヴのヴォーカル、一歩間違うと黒人シンガーがシャウトしているように聞こえますね。
上にアップした1974年6月のライヴ映像からは想像出来ませんが、こうしたライヴ活動にメンバーが徐々に疲労感を覚え、翌年にバンドは解散してしまいます。
ピーター・フランプトンとの2枚看板時代のハンブル・パイもいいですが、この頃のソウルフルなハンブル・パイもいいですね。