24日のビリー・ジョエルの来日公演、盛り上がったみたいですね。そういった意味では、2月、4月に来日するボズ・スギャックスやジェームス・テイラーのステージが楽しみです。
ということで今回はJTことジェームス・テイラーのデビューアルバムをご紹介致します。
今更デビューアルバムを…と思われるかと思いますが、正直、このアップルから発表された本作は、以降のJTのアルバムとは味付けが違うことから、長年スルーしておりました。でもよく聴くと、もう既にこの時点でJTサウンドが確立されており、逆に以降には見られない弦楽奏やホーンアレンジが新鮮にも感じられました。多分、数年前に聴いていたら、60年代風のサイケな感じに違和感を感じていたと思うのですが。
当時、アップル・レコードのA&Rマンだったピーター・アッシャーはJTの才能を見抜き、ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンに曲を聞かせます。多忙な2人が参加した曲が、本作には1曲だけですが収録されてますね。
幸運なデビューを果たしたJTですが、JT自身が薬物中毒で入院してしまい、うまくプロモーションが出来なかったこともあり、結果的には本作では商業的な成功を収めることが出来ませんでした。
本作は商業的に失敗に終わったからといって駄作だったかというと、全くそんなことはなく、随所にJTらしさが溢れる素晴らしい内容になっております。プロデュースはもちろんピーター・アッシャー。グリーンスリーブスをイントロに持ってきたセンスが光る②「
Something's Wrong」。
如何にもJTらしいメロディの佳曲です。途中、なんとなくビートルズの「I Will」っぽいメロディラインも…。やっぱりJTって美しいメロディを紡ぐポール・マッカートニーの後継者のような気がしますね。
セカンド以降には全く見られない弦楽奏のアレンジ、途中でペットサウンズのようにパーカッションのように入ってくるドラム…、本作ならではです。ちなみにドラムはキャロル・キングの「タペストリー」にも参加することとなるビショップ・オブライエンです。
後のJTからは全く考えられないような楽曲&アレンジの③「Knocking 'Round the Zoo」。
https://www.youtube.com/watch?v=lGmhNoolIIE何やら不穏な雰囲気の弦楽奏から、かなりR&B色の濃いファンクナンバーに。JTの声はそれほどソウル色を感じさせないので分かりづらいですが、この曲はかなりファンキーですね。しかも異色なのは間奏のサイケなコーラス、いや叫び声(苦笑)。このアレンジは時代背景を感じさせます。
こちらもあまりにも有名なタイトルの⑥「
Something in the Way She Moves」。
エンディングはビートルズの「I Feel Fine」からインスパイアされたようなことをJTは語っておりました。
故郷への想いを綴った名曲⑦「Carolina in My Mind」。
この曲はJT自身もいくつかのバージョンが存在しますが、やはりここは本作での弦楽奏を交えたアレンジを堪能したい。
コーラスにはピーター・アッシャーやジョージ・ハリスンが参加。このアルバムの特徴でもある少し仰々しいくらいな弦楽奏が美しいですね。またメロディもやっぱりJT節全開で実に素晴らしい。本作中、最も親しみやすいメロディの名曲。
そしてちょっと目立つベースはポール・マッカートニーのプレイです。
ちなみにピーター・アッシャーはその後アップルを辞めて独立。その際にJTもピーターと共にアップルを辞めようとしたところ、同社より多額の罰金を請求されそうになったところを、穏便に退社させるように口添えしたのがポールなんですよね。ポールは既にアップルの問題点がアラン・クラインにあり、JTはピーターと一種に居るべきだと理解していたんですね。
その後のJTとピーターの活躍は皆さん、ご存じの通りですが、ワーナー移籍直後の簡素なフォーキー路線の当時の演奏の「Carolina in My Mind」もアップしておきます。よりメロディの素晴らしさが味わえます。
こちらも以降のJT作品には見られないホーンアレンジからのスタートの⑨「Night Owl 」。
一瞬、ブラスロックかと思っちゃいますよね(笑)。こちらも軽快なR&Bナンバー。フォーキーな曲だけがJTの持ち味ではありません。こうしたジャンプナンバーも得意だったりします。ギターのリフが「Day Tripper」を連想させますね。あとリズム隊だけのエンディングも本作ならではです。
如何だったでしょうか。私は変な先入観からこの作品はじっくり聴いて来なかったのですが、やっぱりJTらしい素晴らしい作品だったと感じます。
ところでこのファースト、そしてセカンドまでの一連の流れから、ついついピーター・アッシャーって凄い人だなあと感じます。ピーター&ゴードンとしてデビューして、妹のジェーンが偶然にもポール・マッカートニーの彼女だったという縁からアップルに就職し、そこでジェームス・テイラーを発掘し、そのJTから慕われ、結果的に一緒に米国へ渡り、そこで人脈をまた築き上げる。幸運の人でもあり、その運を確実に自分のモノにしていった凄い人…。そんな人になりたいものです。
スワンプ・ロックの中心的存在だったデラニー&ボニーの5枚目のアルバム。このアルバム、元祖アンプラグド盤と呼んでいいかもしれません。
ツアー中にモーテルのロビーで収録されたと云われているアルバムです。モーテルの中でアンプを通したデカい音など出せる訳もなく、結果的にアコースティックな楽器を手に豪華メンバー、レオン・ラッセルからグラム・パーソンズ、デュアン・オールマンまで参加しております。またクレジットにはないのですが、エリック・クラプトンも参加…と凄いアルバムとなってます。
但しこのモーテルでの録音というのは異説もあり、デラニーのリビングルーム等で、いろいろな時期に録音したリハーサルトラックとも云われてます。本作は、レオンがフューチャーされたゴスペル風な楽曲と、デュアンがフューチャーされたカントリー風な楽曲に大別されますが、、実際、ジョー・コッカーが1970年3月から5月にかけて行われたアメリカ・ツアーでは、レオン・ラッセルが、デラニー&ボニー&フレンズのメンバーであったジム・ゴードンやカール・レイドル、ジム・ケルトナー等を引き抜いて参加。本作の前に発表された「To Bonnie from Delaney」では、デラニー&ボニーはデュアン・オールマンと組んで制作されてます。
つまりレオン参加時期やデュアン参加時期には微妙な違いもあり、本作では収録時期が違うものが混じっているということです。
それでもそうしたアウトテイク的な寄せ集めという感じは全くせず、実際に同時期にモーテルのロビーで収録した…と思わせるような素晴らしいアルバムとなってます。
ウィリー・ネルソン等、多くのアーチストにカバーされているトラディショナル・ソングの①「
Where the Soul Never Dies」。
https://www.youtube.com/watch?v=uo8nb-bIvdMレオン・ラッセルの力強いピアノを中心としたアコースティックな演奏で、デラニー&ボニーはカントリー・ゴスペルなアレンジで盛り上げます。。タンバリンがやたらと煩いですね(笑)。
それにしてもヴォーカルが賑やかですよね。皆が思うがままに歌っている印象。大きい声はボニーでしょうか。途中からジョー・コッカーと思しき声も聞こえてきます。コレ、実際に皆が楽しそうに歌っている様子が目に浮かびますよね。
デラニー&ボニーとカール・レイドルの作品の④「Long Road Ahead」。こちらはオリジナル作品ですね。
デイヴ・メイソンがギターで参加。こちらもピアノとアコギ中心で、デラニーの名唄が光ります。徐々にゴスペルタッチの色合いが濃くなっていきます。
こちらもトラディショナル・ソングの⑥「Talkin' about Jesus」。
ジョー・コッカーのシャウトを含めて、如何にもゴスペル・ソングという感じ。このグルーヴ感、堪りませんね。しかもワンパターンな曲調なのに7分近くの演奏。そんな長さを感じさせない圧倒的な迫力。シャウトしまくっている女性はボニーでしょうか。
フォーキーなデラニー作の⑩「Sing My Way Home」。
デラニー&ボニーとレオン・ラッセルの共作の⑫「Lonesome and a Long Way from Home」は、エリック・クラプトンが1970年に発表したファーストソロに収録されていたナンバー。クラプトン・バージョンはホーンも用いたかなり派手なアレンジに仕上げてましたが、こちらはかなりカントリー風味なスワンプ。途中から登場するジョン・ハートフィールドのフィドルが実にイイ感じです。
本作「Motel Shot」は1971年3月発表なので、クラプトン・バージョンより後の発表ですが、この作品自体はもっと前に収録されたものかもしれませんね。
本作は多くの素晴らしいミュージシャンが参加しております。特に英国ミュージシャンは、こうしたゴスペル的なスワンプに強烈な憧れがあったんでしょうね。
デラニー&ボニーはこの後、離婚してしまい、デラニー&ボニーは解散・・・、以降の2人の活動もパッとしないものでした。それぞれが一緒になったとき、素晴らしさを発揮したのでしょうか。バーズやグラム・パーソンズが牽引したカントリーミュージックの勃興期という時代も良かったのかもしれませんね。
エキブロ仲間の訃報が突然届きました。10年以上前、彼が10代の時から交流があり、ここ数年の彼の情報発信はブログからインスタへと変わっていきましたが、インスタ上でも音楽情報をアップされておりました。
そう、彼はまだ30代でした。ご家族がインスタ上に訃報を伝えられたもので、本当に突然のことでした。彼の名前も顔も全く知らないのに、それでも同じ音楽仲間として、特に年下の方だっただけに非常に寂しい思いがします。
一方今週は八代亜紀さんの訃報も届きました。
我々世代にとっては演歌の女王という印象の方。そして個人的にはハスキーで歌が抜群に上手い美人演歌歌手とのイメージしかありませんでした。
ところがX(旧ツイッター)のタイムラインを見ていたら、彼女が元々はクラブシンガーで、ジャズを愛していたこと、たまたま演歌というフィールドで成功を収めただけだったということが分かり、更に彼女がジャズ・アルバムも発表していたことを知りました。
松田聖子も「
SEIKO JAZZ」というジャズアルバムを発表してますが、こちらは甘口過ぎて、松田聖子好きの私でも、ちょっと残念と感じましたが、八代亜紀さんのこのアルバムは、どうなんだろう。
タイトルからして、魅力的ですよね…。そしてこのジャケット…。更に私の興味を引いたのはプロデューサー。誰であろう、なんと小西康陽!
これはチェックせずにはいられない…。
まず聴いた第一印象が激シブ…。これもまた好き嫌いが分かれるであろうアルバムと感じました。
ということでまずは本作中、一番聴きやすい⑫「虹の彼方に」をどうぞ。
この「虹の彼方に」、何も情報がなく一聴すると、歌っているのが「八代亜紀」とは分からないかもしれません。ハスキーなジャズ・ヴォーカリストという感じ。そして失礼ながらも意外に英語が上手いし、とにかく(当たり前ですが)歌が抜群に上手い。間奏のギターも味わい深いですね。
本人はもともとこの曲は自分には合わないのではと思い、歌うのを躊躇っていたとのこと。それを小西さんの強い推しで収録が実現。実に彼女のヴォーカルにピッタリ合ってますよ。
本作はスタンダードジャズのナンバーと昭和歌謡曲がバランス良く収録されてますが、個人的にはやっぱりスタンダードジャズが好みです。
アルバム・トップはあまりにもスタンダードな①「Fly Me To The Moon」。
彼女は本作発表の翌年、なんとニューヨークの名門ジャズクラブ「バードランド」でライブを行ってます。その時のダイジェスト映像をアップしておきます。最初に「Fly Me To The Moon」が歌われてますが、実に堂々と、しかも楽しそうに歌ってますね。そして次はなんと「雨の慕情」のジャズバージョン。ちょっとボッサな感じが実にいいんですよ。
そしてこの映像、3曲目にはなんとヘレン・メリルが登場!
八代亜紀さんはヘレン・メリルに憧れていたらしいのですが、そのヘレンとの共演が実現。曲は「You'd Be So Nice To Come Home To」。この時へレンは82歳。ヘレンのヴォーカルも凄いが、それに渡り合っている八代亜紀のヴォーカルが更に凄い。是非、このシーンはチェックしてほしい。
ちなみにこの後の「舟歌」も圧巻です。
八代亜紀さんの故郷である熊本県に伝わる子守唄の「五木の子守唄」と、1965年の映画「いそしぎ」のテーマ曲として書かれたポピュラーソングをメドレーとして繋げた④「五木の子守唄~いそしぎ」。
如何にも小西康陽が考えそうなアイデアが素晴らしい。この2曲、出だしが同じらしい。それに着想を得て、見事に繋げてしまったもの。
イントロの仰々しいオーケストラ、何か始まる予感…、アコギをバックに「五木の子守唄」、そして1分辺りで「いそしぎ」へ…。見事なメドレーです。
ジョージ・ガーシュウィン作、洋楽ではジャニス・ジョプリンが歌ったことでも有名な⑤「Summertime」。
ヴィブラフォンが夜の音楽のムードを醸し出してますね。間奏のギターもジャージー。渋いです。
このムーディーな中にあって、彼女のハスキーヴォイスが闇夜に響く…という感じです。
メキシコの作曲家、パブロ・ベルトラン・ルイスの作品の⑦「Sway」。
メキシコのスタンダードポップスですが、1954年にディーン・マーティンがカバーしたことで、世界的に有名になった曲。
ラテン・ジャズって感じですよね。ちょっと怪しげな感じもするナンバーですが、こちらも囁くような、それでいて感情がストレートに伝わってくるような八代亜紀のヴォーカルが素晴らしい。
八代亜紀さんといえば、やはりマーティ・フリードマンとのメタルコラボが有名ですね。
アップした映像では「Fly Me To The Moon」も歌ってました。
八代亜紀さんがこれほど多彩な方であったとは知りませんでした(皆さん、既にご存じだったのかもしれませんが)。またかなり天然でお茶目な方。ジャズを歌っても魅力的で素敵な方だったんですよね。
様々な訃報が届く今日この頃、素敵な音楽を聴きつつ、気持ちを穏やかにさせていきたいものです。
八代亜紀さん、そしてRさんのご冥福をお祈り申し上げます。