リトル・フィートの好サポートが心地よいトム・ヤンスの名アルバム最近リトル・フィートの良さを知り、ハウディムーンに感動してました。ということでこのアルバムに自然に行き着いた次第です。
ローウェル・ジョージがエグゼクティブ・プロデュースで参加。もちろんフィーツのメンバーも参加しております。他参加メンバーはチャック・レイニー、フレッド・タケット、ジェシ・エド・デイヴィス、デヴィッド・リンドレー、ジェフ・ポーカロ、ジム・ケルトナー、ハーヴィー・メイスン、ヴァレリー・カーター等。豪華ですね~。
本作、カントリー&フォーキーが好きな私にとっては堪らない1枚となってます。
トム・ヤンスは1974年にソロ・デビューを果たしたシンガーソングライター。カントリーやフォーク、場合によってはソウルな一面も持っており、リトル・フィート色が加わることで、本作は見事な仕上がりとなっております。
私の心の名盤
「Dane Donohue」に非常に近いイメージですが、「Dane Donohue」は寄りAOR色が濃く、本作はもっとカントリー&フォーキーといったところでしょうか?
カントリーといえば哀愁漂うメロディに惹かれる私ですが、①「
Gotta Move」のイントロを聴いただけで気に入ってしまいました。所謂ハイウェイソングですが、こんな曲を大音響で聴きながらハイウェイを飛ばしてみたいものです。風景は絶対に砂漠に1直線の道路ですね。
②「Once Before I Die」は軽快なフォークソング。この曲もアメリカの長い長いハイウェイを走りながら噛みしめて聴きたい曲。
この2曲を聴いて、本作、アコースティック系かなと思ったら大間違い。
③「Where Did All My Good Friends Go?」ではボズ・スギャックスの曲と思わせるようなドラムがフェードインで入ってきます。このドラムは恐らくジェフ・ポーカロでしょうね、間違いなく。このリズムキープは彼独特のものです。
そして一瞬ドゥービーと間違えてしまうようなギターのカッティング。かなりのファンク・チューンです。それに絡みつくようなディヴィッド・リンドレーのスライドギター。これがいいんですね。間奏部分からスライドギターソロへ流れるところなんか最高です。
気のせいかここでのトムのヴォーカルスタイルは①②と違い、だみ声で雰囲気を盛り上げてますね。私のお気に入りソングです。
⑤「
Struggle in Darkness」ではブルース的な渋い1曲。どこかスティーリーダンを思わせます。だんだんとビル・ペインのムーグ・シンセが盛り上げていきます。この辺は後期リトル・フィートっぽいです。
https://www.youtube.com/watch?v=FYWyc-yp45gサザンソウル的なバラード、⑧「
Lonely Brother」もいいですね。カントリー系とは違う、ソウルフルな歌い方のトム、なかなか味があります。
https://www.youtube.com/watch?v=OE6RhUFpOT4クロージングナンバーはタイトル曲⑩「
Eyes of an Only Child」。メロウなカントリー&フォーク。
またまた強烈にねちっこいスライド・ギターが唸ってます。こうした楽曲、私のツボですね。デイン・ドナヒューの楽曲にもこのテの哀愁漂うフォーキーさがありますね。
私の所有しているCDは「Nice Price Line」シリーズで、ライナーノーツは1992年に書かれているものです。そこには「トムは現在は消息は不明だ」とありますが、既にトムは1984年にドラックにより他界してます(一説には交通事故とも云われてますが)。もっと調べて書いてくれと言いたいところですが、この人については情報が殆どなかったのでしょうね。
トムは本作発表後、1977年に「Dark Blonde」、1982年に「Champion」を発表しますが、特にタイトル曲「Champion」は小田和正との共作とのこと。多分本作とは全く違う内容なんでしょうね。
ジャケットといい、その内容といい、本作は味わい深いアルバムです。
ベテラン職業作詞家の素晴らしいデビューアルバム
キャロル・ベイヤー・セイガーというと1981年発表のサードアルバム
「SOMETIMES LATE AT NIGHT」があまりにも有名ですが、このデビューアルバムも素朴な音作りが堪らなくいいんですよね。
キャロルは学生時代にあのスクリーン・ジェムズのドン・カーシュナーに見出されて、同社へ入社。ドン・カーシュナーといえばモンキーズ(私だけ??)。そのモンキーズにも「When Love Comes Knockin'」、「The Girl I Left Behind Me」といった素晴らしい楽曲の詞を提供しています。ちなみにこの2曲、両方とも作曲はあのニール・セダカ。この2曲ともいい曲なんですよね。
70年代に入るとメリサ・マンチェスターやピーター・アレン、ブルース・ロバーツ等と共作するようになります。そんななかプロデューサーであるリチャード・ペリーが彼女自身で歌うことを勧め、本作制作に至ります。
彼女の詞は胸が切なくなるようなものもあれば、ユーモアたっぷりなものもあったりして、非常に楽しめます。本作はそれに伴うメロディが秀逸なものばかりなんですよね。
メリサとの共作①「Come in from the Rain」はオープニングナンバーとしては非常に地味な曲なんですが、アコースティック・ギターはリー・リトナーで、しっとり聴かせます。
てっきりブルース・ロバーツの曲かと思ったらピーター・アレンが作った③「Don't Wish too Hard」。こうしたちょっとコミカルな感じの曲も、心許ないキャロルのヴォーカルには合っているような気がします(笑)。怪しげな男性ソロはトニー・オーランドです。トニーもスクリーン・ジェムズ所属ですね。
切ないメロディが大好きな④「Sweet Alibis」。作曲は彼女の夫となるマーヴィン・ハムリッシュ。映画音楽の世界では御大ですね。
♪ Four in the morning and I hear you coming in
I'm trying to pretend ♪
実は詞もかなり切ないんですよね。こうした詞を作らせたらキャロルは天下一品です。
そして燃え上がるようなギターソロはなんとリーリトナー。アコギが似合うリトナーなので、こうしたタイプのソロを珍しいのではないでしょうか?
そしてドラムはジム・ケルトナーです。
こうした切ないメロディと詞という組み合わせでいうと⑦「Steal Away Again」なんかは最高ですね。大好きです。
「Steal Away Again」・・・また駆け落ちする、といった意味でしょうか?
♪ Tell me how would you like it
Say would you like it ♪
こんな感じで言われたら、相手は何て答えたらいいのでしょうか?
ブルース・ロバーツとベット・ミドラーとの共作。素晴らしい楽曲です。
この後に続く⑧「You're Moving Out Today」が、また⑦から一転、コミカルな曲でいいんですよね。しかも⑦と同じ作曲陣。ブルース・ロバーツって洒落っ気のある人です・・・。
コミカルなピアノとバックの追い出される男役(?)がブルース・ロバーツです。
この曲、1年居候された男を追い出す歌で、いちいち追い出すモノまで描写していく詞がユニークです。
印象的なスライド・ギターは名手ヒュー・マックラケン。
詞の妙味でいえば⑨「Shy as a Violet」もいいです。だってスミレのように恥ずかしがり屋っていうタイトルがなんともいい味だしてますよね。ドラムはアンディ・ニューマークです。
冒頭申し上げたとおり、次の旦那となるバート・バカラックとの共作アルバム「SOMETIMES LATE AT NIGHT」で彼女の詞の世界観が見事にメロディとともに結実したように思います。
その後バートとのコラボはクリストファー・クロスの「ニューヨークシティ・セレナーデ」やディオンヌ・ワーウィックの「愛のハーモニー(That's What Friends Are For)」で更に推し進められ、1986年「愛のハーモニー」で2人はグラミー賞を受賞します。
キャロルは歌がそれほどうまくないので、自分では「SOMETIMES LATE AT NIGHT」である程度やるべきことはやってしまったと思っているのかもしれません。以降彼女自身のアルバムは発表されてません。ちょっと新作も聴いてみたいですね。
キャロル、そして歌が下手といえば、もう1人のキャロル(笑)。実はキャロル・キングとのコラボが、あのキャロル・キングの2001年に発表された名作
「Love Makes the World」。もともと顔見知りだったこの2人のキャロル。実はコラボはこれが初めてと思われます。この作品を作ろうと誘ったのはキャロル・ベイヤー・セイガーのほうだそうです。ですからこの作品のエグゼクティブ・プロデューサーは彼女なんですよね。
そうそう彼女の
公式HP、なかなか読み応えがありますよ(もちろん英語ですが)。
CS&Nのアコギでロックする衝撃のデビューアルバム年末年始にかけて、なぜかフォーキーな音楽をよく聴いております。前回ご紹介したママス&パパスのジョン・フィリップスとCS&N。一見繋がりはないようですが、実はCS&N結成の背景にはママパパのキャス・エリオットが関係しております。
1968年当時、ジョニ・ミッチェルとデヴィッド・クロスビーが恋仲にあり、彼等の近所にはジョン・セバスチャン(ラヴィン・スプーンフルですね)、キャス・エリオットが住んでいました。彼等はよく集まっては騒いでいたようですね。そんななかスティーヴン・スティルスとデヴィッド・クロスビーのハーモニーを聞いていたジョンが、グラハム・ナッシュの加入を提案。グラハムとは友人関係にあったキャスがグラハムを誘い、ここにCS&Nが誕生したのです。
ちなみに彼等のマネージメントはあのデヴィッド・ゲフィンが担当しました。
元バッファロー・スプリングフィールドのスティーヴン・スティルス。元バーズのデヴィッド・クロスビー、元ホリーズのグラハム・ナッシュ。この3人が集まったバンドがCS&N。元祖スーパーバンドですね。
この面子にドラムがジョン・セバスチャンの紹介で加わったダラス・テイラー。アルバムの裏ジャケに映っている怪しげな人物はダラスですね(多分)。
このアルバム①②で完全にノックアウトされます。アコギでロックする①「Suite: Judy Blue Eyes」。
なんと7分以上の大作にも関わらず、一気に聴かせてしまいます。アコギやエレキの効果的な使い方など本作に限らず、アルバム全体を通じて、サウンド・プロダクションを担当したスティーブン・スティルスの才能が爆発した感じのアルバムですね。
それから彼等の魅力の3声ハーモニー。彼等のハーモニーは音楽の魔法を感じさせます。どんな曲でも、このハーモニーが聴こえてくるとうっとりしてしまいます。
この曲のエンディングでもスキャット風コーラスが最高です。
グラハム作②「Marrakesh Express」。これはシングルカットされた作品。
グラハムの作品ってとても愛らしくてポップな曲が多いんですよね。POPS好きの私としてはグラハムの作品はお気に入りです。また彼のヴォーカルも愛らしくて好きですね。
そしてももちろんこの「Marrakesh Express」もそんな1曲。グラハムが頑張ってます。
ちょっとフォーキーな④「You Don't Have to Cry」。
これこそCS&N誕生前夜に3人で3声ハーモニーを試した1曲。この3声ハーモニーの素晴らしさに彼等自身が気付き、グループ結成となりました。
⑧「Helplessly Hoping」は彼等のハーモニーが堪能できます。
この曲の3人のそれぞれの声は妙にクリアに聴こえます。ですから余計にどうやって歌っているのか、よく分かります。
このハーモニーはやっぱり出来そうで出来ない(当たり前ですね^^)。
ハーモニーといえば1969年のウッドストックでのライヴで、なんとビートルズの「ブラックバード」を3人で歌ってます。ハーモニーの魅力を堪能してください。
デヴィッド・クロスビーの曲は重たいですね。⑥「Wooden Ships」や⑨「Long Time Gone」はデヴィッドの曲ですが、ポップスばかりではないブルースやソウル色漂うナンバーです。個人的には少し苦手ですが、こうした楽曲が本作の味わい深さに貢献してます。「Wooden Ships」の渋さが大好きという方も多いでしょうね。
本作発表後、ニール・ヤングが加入し、CSN&Yとして名作
「Deja Vu」を発表します。鬼才ニールはソロとしても大成していきますが、ニールの永遠のライヴァル、スティーヴンは、なぜかソロとしての商業的ヒットに恵まれないんですよね。本作もそうですが、バンド内でのクリエイティブ性は思いっきり発揮する人なんですけどね。