2月29日に、Continuum社から出版された「Pet Sounds」が、なんと村上春樹訳の日本語本として新潮社より発売されました。このContinuum社の本、33 1/3シリーズとしてロックの名盤を1枚ずつ紹介する本として2003年9月から出版されており、既に50タイトルを超えているとのこと(詳細は
Continuum社のHPをご参照下さい)。
しかしブライアン・ウィルソンと村上春樹、非常に内省的な世界観が似てますよね。もちろんビーチボーイズと村上春樹が大好きな私は早速この本を購入しました。
作者はジム・フジーリという方でミステリー作家らしい。それにしても詳細なペットサウンズの解説です。コード進行にも着目した語り口は相当マニアックですね。
「ペットサウンズ」。ビーチボーイズが大好きな私は、実は未だにこの超名盤を記事にしておりません。なぜか・・・、それはあまりにも奥が深すぎて、未だに自分自身で租借してきれていないからです。
このアルバムを初めて聴いたのは、多分中学生だったように記憶してますが、当時は全くよく分かりませんでした(笑)。むしろ買って損をした、と思ったくらいです。すぐに良さが分かったのは①「Wouldn't It Be Nice」や⑦「Sloop John B.」くらい。初期ビーチボーイズの単純明快なポップスが大好きだった多くのファンが、この迷作に戸惑ったことでしょう。
音楽通の村上春樹氏自身も本作の長いあとがきで、実は私と同じであったことが書かれており、妙に安心してしまいました。それとビートルズの「サージェントペパーズ・・・」との比較で、すぐに「サージェントペパーズ・・・」は名盤と思ったが、歳を経る毎に実は音楽的深みは「ペットサウンズ」に軍配が上がる云々といった記述にも納得してしまいました。
ちなみに天才ポール・マッカートニーも本作のファンで、「人生勉強のために子供たちに一枚ずつ買ってあげた」と語っております。
つまり「ペットサウンズ」にはあまり気付かない細部にまでトリックが隠されており、それは何回も何回も聴くことで味わいが増してくるということなのです。恐ら未だに自分自身がまだ気付いていない魅力がたくさん詰まっているアルバムなんですね。だからなかなか記事には書けません。すごいアルバムです・・・。
なぜすごいのか、この本はそれを文字に落としたもので、前述の通り、相当マニアックな本です。例えば私の大好きなドラマー、ハル・ブレインが本作では重要なキーマンだったこと等多くの事実が書かれており、素晴らしい本ですね。
「ペットサウンズ」に興味を持っていない方には意味のない本かもしれません。逆に「ペットサウンズに興味のある方はバイブルとなることでしょう。村上春樹氏の訳、あとがきも味わい深いです。
ハードロッカーのポップスアルバム?炎のヴォーカリスト、グラハム・ボネットは1979年、あのレインボーに迎え入れられ、名盤
「Down to Earth」発表。もともとポップスシンガーであったグラハムは、彼の新境地でもあるハードロックという世界に身を置き、見事にブレイクを果たしたのは周知の通り。
しかし1980年8月、あの伝説のモンスターズ・オブ・ロックを最後に盟友、コージー・パウエルがレインボーを脱退。その最後のステージ、コージーのドラムソロのエンディングで、グラハムがコージーの名を連呼、絶叫したのは有名な話ですね。そしてもともとへヴィメタルが嫌いなグラハムも自然の流れで脱退をしてしまいます。
本作はその後、1981年に発表されたグラハムのソロアルバム。へヴィメタルが嫌いなグラハムが、本当にやりたかった音楽をやったという感じが現れているアルバムです。
レコーディングメンバーは盟友Cozy Powell (Ds)、Micky Moody (G)、John Lord (Key)、Gary Twigg (B)といった豪華メンバー。下裏ジャケ写真はそのレコーディングメンバーのスナップ写真です。かっこいい!
本作、正直根っからのハードロックファンにはあまりおススメできません。ただグラハム&コージーの大ファンの私にとっては、2人のプレイを聴けるだけで大満足なのです。
とはいえ①「Night Games」のハード&ポップな楽曲はおススメトラックです。我々世代にとっては西城秀樹が「ナイトゲームス」として1983年にカバーしたことはあまりにも有名ですね。西城秀樹ヴァージョンとグラハムを比較すると、コージーのタイトなドラムが重要なキーとなっていることがよく分かります。
この「Night Games」の貴重なPVをアップしておきます。やはりコージーのシンバルワークはあまりにもかっこよすぎます。またグラハムの容姿が、よく横山やすし師匠と混同されてしまっている理由もお分かり頂けるかと思います^^。
あと若き日の西城秀樹の、軽いタッチのヴァージョンもついでにアップしておきます(見たくないと思いますが・・・)。
そして本作は2曲目から段々とポップ色が強くなってきます。②「S.O.S.」はラス・バラードの作品。ジョン・ロードがポップなキーボードを弾いてます。レインボーの「All Night Long」と同系色的楽曲です。
しかし何より驚きなのが4曲目です。恐らく当時本作を購入した多くの方が同じ思いだったのではないでしょうか? その楽曲とは・・・「Be My Baby」です。そう、あのフィル・スペクター・プロデュースのロネッツの「Be My Baby」です。
ただドラマー好きな私としては、このロネッツの名曲のドラムがハル・ブレインであり、彼が名実共にこのイントロで第一級のスタジオミュージシャンとなったことを知っているので、コージーの叩きっぷりを堪能してます。よく考えるとコージーのドタバタ的なドラムスタイルは、ハルと非常に似ているような気がします。
それにしても、敢えてこの楽曲をカバーするあたり、よほどグラハムはポップス好きなんですね。ミッキーもジョンもコージーもよく付き合った!
あと70年代ポップス好きの私としては6曲目も聴き逃せません。それは「Liar」です。
もちろんスリー・ドッグ・ナイトの大ヒット曲ですね。この曲、実は②と同様ラス・バラードの曲だったんですね。ラス・バラードとはもちろんレインボーの「Since You've Been Gone」や「I Surrender」といったポップ路線の作曲者です。ここではかなりスリリングな演奏を聴かせてくれます。
⑦「Anthony Boy」はチャック・ベリーの楽曲。ここまでくると完全にグラハムの趣味の世界ですね~。あと⑪「Set Me Free」はキンクスのカバー。
グラハム、よくぞここまでやってくれました、という感じのアルバムですね。
グラハムはこの後、イングヴェイにすっかりお株を奪われまくってしまうアルカトラスを結成します。このファーストも大好きです。
実はグラハム、当時ベストヒットUSAに出演してます。小林克也が果敢にもいろいろな質問を試みてますが、これが必聴モノ。リッチーとの髪型ケンカ事件の質問まで(笑)。しかもこれが実話だったことが判明!!! その貴重な映像がコレ↓。
グラハムは話題に事欠きません。
J-POPとソウルが融合した名盤“オザケン”こと小沢健二ほど、好き嫌いが大きく分かれるアーチストもいないのではないでしょうか? いや、嫌いな方の方が多い筈。しかし私は敢えて言う、オザケンが大好きである。ただし私が聴きまくったのは本作のみ。次作のジャズ風な「球体の奏でる音楽」にはがっかりした記憶があります。
フリッパーズ・ギター時代のオザケン(左)。この渋谷系音楽の火付け役のフリッパーズ・ギターも大好きでした。「カメラ カメラ カメラ」なんか最高でしたね~。
叔父に小澤征爾を持つオザケン、華麗なる一族かつ東大卒。私とは全く住む環境も違いますが、私と同い年、かつ生まれた日は私と3日しか違わない。妙に親近感がありました。
そのオザケン、本作がビッグヒットとなりました。
①「愛し愛されて生きるのさ」、このイントロを聴くだけで何か妙にワクワクしてきます。この曲、下手くそなオザケンヴォーカルと甘ったるいタイトルに騙されそうですが、実は音楽自体は中村キタローの粒の立ったベース等、かなりファンクっぽい音作りになってます。これぞJ-POPとファンクの融合ですね(と思っているのは私だけですかね?)。
そうそう、余談ですがこのアルバムタイトル、どこかで聴いたことがありませんか。ファンクといえばスライ・ストーン・・・、そうです、スライの「ライフ」なんです。下にスライのジャケをアップしておきます。しっかりロゴが一緒ですね^^。
多くの硬派な音楽ファンからヒンシュクを買いそうな②「ラブリー」。甘ったるい声で ♪ Lovely ♪と歌われてしまっては閉口するしかありません(笑)。しかしこれもよく聴くと終始中西康晴の弾くクラビネットがファンキーですよね。そしてホーンも決まってます。
(アップしたのはライブバージョンです)
③「東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー」。長いっ! う~ん、次はサルサですか。当時はこの音楽センスに感激していたものです。洋楽的センスを見事に昇華したオザケンワールドに脱帽です。
と思いきや結構フォーキーな④「いちょう並木のセレナーデ」は、ちょっとノスタルジックな甘酸っぱいバラードです。
以下は武道館ライブの映像。間奏の口笛に思わず拍手。
オザケンソングでもかなり有名な⑤「ドアのノックするのは誰だ?」。これなんかモロにフィリーソウルですよね。そう聴こえませんか? それはオザケンワールドに騙された証拠です(笑)。
私の大好きな曲です。
スチャダラパーとの共演で話題を振りまいた⑥「今夜はブギー・バック」。個人的には楽曲自体に興味はありません。しかしオザケンにラップといった組み合わせのセンスにこれも脱帽ですね。
ここまで長々と綴ってきましたが、実は一番好きな曲は⑦「ぼくらが旅に出る理由」なんです。当時からこの曲は私のドライヴソングでした。このイントロ、車を走らせたくなりませんか?
このストリングスとハープ、そしてホーンの疾走感が堪りません。詞もいいんですよね~。
この曲のキーとなるストリングス・ホーンの無いギター、ベース、ピアノ、ギターのスリーピースのスタジオライブ映像がありました。しかしこの最小限のバンドスタイルでも、この曲の持つ緊張感が伝わってきますね。
オザケンを敬遠していた方々、如何だったでしょうか? コアな洋楽ファンほど虜になっていくような気がするのですが・・・。
この後オザケンはまた違う姿を見せていきます。ブラックミュージックや環境音楽への傾倒等等。そして自ら世間から姿を消してしまいました。
渋谷系と騒がれ、また王子様と呼ばれていた時代・・・、あまりにもビッグになり過ぎ、自己矛盾を起こしていったのかもしれません。今の彼に、この当時の素晴らしいJ-POPをもう一度、と期待してはいけないのでしょうか?