音楽の杜:1971
2024-02-17T07:46:42+09:00
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50代の洋楽フリーク。AOR、ソフトロック、フュージョン、ハードロック等、よい曲なら何でも聴きまくる雑食派。好きな音楽を徒然なるままに書き綴っていきます。
Excite Blog
Carole King「Music」(1971)
http://y240.exblog.jp/33262072/
2024-02-16T06:30:00+09:00
2024-02-17T07:46:42+09:00
2024-02-17T06:24:17+09:00
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1971
本作はあまりにも有名な「Tapestry」の次作ということもあり、その影に隠れて地味な印象がありますが、実はかなりの名作。そして予想通り、オープニングから実にソウルフルなナンバーが飛び出してきます。
プロデュースは前作から引き続きルーアドラー。バック・ミュージシャンも基本的には前作を踏襲しておりますが、一部ジャズ・ミュージシャンが参加している点が大きな違いでしょうか。
まずはイントロからフェンダーローズとコンガの調べ、ギターのカッティングがスリリングな①「Brother,Brother」。
https://www.youtube.com/watch?v=08MAZ6FXtSM
マーヴィン・ゲイの「What’ Going On」にインスパイアされて作ったと云われている名曲ですね。イントロこそスリリングですが、キャロルのヴォーカルが加わってくると絶妙に穏やかな至福な時間、心地よさを感じさせます。間奏のサックスソロはジャズミュージシャンのカーティス・アミー。この1曲を聴いただけで、当時のキャロルがソウルへ傾斜していたことがよく分かります。
カーペンターズのカバーでも有名な②「It’s Going to Take Some Time」。
https://www.youtube.com/watch?v=2b4pGS1oOB8
カーペンターズは翌年、1972年に発表した「A Song For You」でこの曲をカバーしております。この曲は私の中ではカーペンターズが歌うポップスというイメージが強かったのですが、よく考えたら60年代のキャロルはこうしたポップスを作ってきた職業ライターだったわけで、こうした楽曲は彼女の得意とするものだったのかもしれません。
キャロルのピアノをベースに、シンプルなアレンジが曲の良さを引き立たせてますね。エンディングのアレンジはシカゴの「If You Leave Me Now」を連想させます。
シングルカットもされた③「Sweet Season」。
https://www.youtube.com/watch?v=YYxAtqM2wKg
シングルカットされただけあって、ポップなナンバーです。随所にチャールズ・ラーキーのベースが耳に残りますね。ラルフ・シュケットのハモンド・オルガンも隠し味になってます。
当時のキャロルとしては新機軸を打ち出した感のあるジャージーなタイトルトラックの⑦「Music」。
https://www.youtube.com/watch?v=YOgPznfn200
シティ時代の名曲「Snow Queen」を連想させるワルツのナンバー。こちらもカーティス・アミーのアドリブ風なサックスがカッコいい。ジャズのインプロビゼーション風な展開が結構斬新。かなりジャズに接近した作品と言えるかもしれません。
本作中、一番のお気に入りは⑧「Song of Long Ago」、多分これをお気に入りとする方は少ないかもしれませんね。
なぜお気に入りかというともちろんジェームス・テイラーが絶妙なコーラスを付けているからです。アコギもJTですね。そしてこのちょっとほろ苦いようなメロディもメロディメーカーのキャロルらしい。
少し前にJTはキャロルのピアノをバックに「Long Ago and Far Away」という曲を発表しておりますが、ひょっとしたらそのアンサーソングかもしれません。キャロルとJTの関係というのは友人という枠を超えて、盟友という感じなんでしょうね(決して恋人という関係にはならなかったところも盟友・戦友という感じがします)。
イントロから軽快なラス・カンケルのドラミングがカッコいい⑫「Back to California」。
https://www.youtube.com/watch?v=FszWbv-N1Q8
この曲、どう聴いてもビートルズの「Get Back」そのもの(笑)。明らかにそれを下敷きにしておりますね。
ラルフ・シュケットのエレピがグルーヴィーで心地いいし、演奏しているダニー、チャールズ、ラスのプレイも実に躍動感があり、生き生きしてます。これは演奏していて楽しいだろうなあと。
如何だったでしょうか。この作品も実に味わい深い作品です。当時キャロルは29歳。これから更に素晴らしい楽曲を量産していくのでした。
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Delaney & Bonnie「Motel Shot」(1971)
http://y240.exblog.jp/33225071/
2024-01-20T05:57:00+09:00
2024-01-20T05:57:01+09:00
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1971
但しこのモーテルでの録音というのは異説もあり、デラニーのリビングルーム等で、いろいろな時期に録音したリハーサルトラックとも云われてます。本作は、レオンがフューチャーされたゴスペル風な楽曲と、デュアンがフューチャーされたカントリー風な楽曲に大別されますが、、実際、ジョー・コッカーが1970年3月から5月にかけて行われたアメリカ・ツアーでは、レオン・ラッセルが、デラニー&ボニー&フレンズのメンバーであったジム・ゴードンやカール・レイドル、ジム・ケルトナー等を引き抜いて参加。本作の前に発表された「To Bonnie from Delaney」では、デラニー&ボニーはデュアン・オールマンと組んで制作されてます。
つまりレオン参加時期やデュアン参加時期には微妙な違いもあり、本作では収録時期が違うものが混じっているということです。
それでもそうしたアウトテイク的な寄せ集めという感じは全くせず、実際に同時期にモーテルのロビーで収録した…と思わせるような素晴らしいアルバムとなってます。
ウィリー・ネルソン等、多くのアーチストにカバーされているトラディショナル・ソングの①「Where the Soul Never Dies」。https://www.youtube.com/watch?v=uo8nb-bIvdM
レオン・ラッセルの力強いピアノを中心としたアコースティックな演奏で、デラニー&ボニーはカントリー・ゴスペルなアレンジで盛り上げます。。タンバリンがやたらと煩いですね(笑)。
それにしてもヴォーカルが賑やかですよね。皆が思うがままに歌っている印象。大きい声はボニーでしょうか。途中からジョー・コッカーと思しき声も聞こえてきます。コレ、実際に皆が楽しそうに歌っている様子が目に浮かびますよね。
デラニー&ボニーとカール・レイドルの作品の④「Long Road Ahead」。こちらはオリジナル作品ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=FKhqaZOwLgw
デイヴ・メイソンがギターで参加。こちらもピアノとアコギ中心で、デラニーの名唄が光ります。徐々にゴスペルタッチの色合いが濃くなっていきます。
こちらもトラディショナル・ソングの⑥「Talkin' about Jesus」。
https://www.youtube.com/watch?v=duMph1U-o-Q
ジョー・コッカーのシャウトを含めて、如何にもゴスペル・ソングという感じ。このグルーヴ感、堪りませんね。しかもワンパターンな曲調なのに7分近くの演奏。そんな長さを感じさせない圧倒的な迫力。シャウトしまくっている女性はボニーでしょうか。
フォーキーなデラニー作の⑩「Sing My Way Home」。
https://www.youtube.com/watch?v=GtDwCzkQ1TE
曲自体は単純な曲で、ほのぼのした演奏ですが、ベースの音が気になりますね(スキャットですかね)。あとやはりデュアン・オールマンのスライドが隠し味となって、曲を引き立ててますね。デュアンはこの曲の他に2曲に参加しております。
デラニー&ボニーとレオン・ラッセルの共作の⑫「Lonesome and a Long Way from Home」は、エリック・クラプトンが1970年に発表したファーストソロに収録されていたナンバー。クラプトン・バージョンはホーンも用いたかなり派手なアレンジに仕上げてましたが、こちらはかなりカントリー風味なスワンプ。途中から登場するジョン・ハートフィールドのフィドルが実にイイ感じです。
本作「Motel Shot」は1971年3月発表なので、クラプトン・バージョンより後の発表ですが、この作品自体はもっと前に収録されたものかもしれませんね。
本作は多くの素晴らしいミュージシャンが参加しております。特に英国ミュージシャンは、こうしたゴスペル的なスワンプに強烈な憧れがあったんでしょうね。
デラニー&ボニーはこの後、離婚してしまい、デラニー&ボニーは解散・・・、以降の2人の活動もパッとしないものでした。それぞれが一緒になったとき、素晴らしさを発揮したのでしょうか。バーズやグラム・パーソンズが牽引したカントリーミュージックの勃興期という時代も良かったのかもしれませんね。
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Gary Wright「Footprint」(1971)
http://y240.exblog.jp/33025434/
2023-07-08T06:01:00+09:00
2023-07-08T06:01:41+09:00
2023-07-08T06:01:41+09:00
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1971
今回はチェックしてみたら、意外にも素晴らしい内容だったアルバム(あまりそういうことは少ないのですが)をご紹介します。
ゲイリー・ライト…、このアーチストについて、多くの方は「夢織り人」のヒット曲を連想されると思います。ゲイリー・ライトはキーボーディストですから、この大ヒット曲もエレピが印象的なメロウでスペーシーなバラードでした。私の好奇心もここで止まっており、ゲイリー=興味なし…という固定観念がありました。
ですから彼がジョージ・ハリスンの盟友でもあり、ジョージの多くの作品に参加していたことも、あまり認識しておりませんでした。ジョージ一派の代表格がゲイリー・ライトだったのかもしれませんね。
ゲイリー・ライトはスプーキー・トゥースのメンバーだった人物で、1969年に脱退後、セッション活動を開始してます。
本作は彼のセカンド・アルバムですが、ちょうどこの頃、ジョージの大名作「All Things Must Pass」にゲイリーは参加しております。そしてジョージはその御礼とばかりに本作にプロデューサーとして関与しており、スライドギターも随所に聞かせてくれてます。
「All Things Must Pass」の影響なのか、この作品、かなりスワンプな味わいがあります。私はゲイリー・ライトがここまでスワンプ的な楽曲をやる方だとは知らなかったので、正直ビックリでした。ちなみに本作の参加ミュージシャンですが、ジョージを筆頭に、クラウス・フォアマン(B)、ジム・ゴードン(Ds)、アラン・ホワイト(Ds)、ボビー・キーズ(Sax)の「All Things Must Pass」組、他にヒュー・マクラッケン(G)、ミック・ジョーンズ(G)、ジム・ケルトナー(Ds)等々。豪華ミュージシャンが参加しております。
その「All Things Must Pass」風な味わいのあるブリティッシュ・フォークな②「Two Faced Man」。
こちらはジョージとコラボしている貴重な映像がありました。ドラムはBryson Graham、ベースはArchie Legget。そしてギターは後にフォリナーを結成することとなるMick Jones!。
ゲイリーは本作発表後に自身のバンド、Wonderwheelを結成します。このバンドはゲイリーのファースト、そして本作のプロモーションのためのバンドでしたが、そのバンドが映像の3人。そこにジョージが参加したものですね。
こちらはブレッドを思わせるようなバラードの③「Love To Survive」。
https://www.youtube.com/watch?v=HZUURSqJnvE
デヴィッド・ゲイツのような声質、でもサビに向かうに連れて、やっぱりジョージっぽい気もします。皆さんはどう感じられたでしょうか?
この曲、楽曲は単なるポップスですが、やっぱりバックの一流のミュージシャンが参加しているだけあって、かなり味わい深いです。特にオーケストラが加わってくる中盤からの盛り上がりはジョージっぽい。曲が終わったと思ったら、また続きます。この間奏の盛り上がりにより、実はこのメロディも味わい深いものがあることが分かってきます。
このアルバム、個人的にはA面よりも、B面のナンバーに惹かれてしまいます。
B面スタートの⑤「Stand for Our Rights」はドラムが力強く、ちょっと土臭くもあるゴスペルタッチなナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=4vhk7VaOcxg
ここでの聴き所はやはり間奏のボビー・キーズのサックス・ソロから更に盛り上がってくるサビのパート。バック・コーラスも加わり、そのままの盛り上がりでエンディングに向かって駆け抜けていきます。この疾走感を煽っているドラムもいいですね~。ジム・ゴードンのプレイでしょうか。
本作中、一番ハードな⑥「Fascinating Things」は、もう少しギターにディストーションをかけるとハードロックになるかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=XhbenypgyGg
ゲイリーのヴォーカルがマイルドなので、さすがにハードロックにはなり得ませんが、かなりギターのリフも激しい。そしてこの曲を挙げた理由ですが、それは中盤以降にあります。中盤以降のギターのリフ、直ぐに分かりますよね(笑)。コレ、レッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love」ですね。ゲイリーってこんな曲も作れるし、とても器用なミュージシャンなんですね。
エンディングトラックはちょっとアーシーな⑧「If You Treat Someone Right」で本作は幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=BSkjW8apPJw
ジョー・コッカーがやりそうな楽曲&アレンジですね。ちょっと仰々しいようなゴスペルタッチなコーラス、力強いピアノ、メリハリの効いたリズム隊、まさにスワンプ。こちらも私の好みです。
ゲイリー・ライトはこの後、少し間をあけて、1976年に「The Dream Weaver」の大ヒットを記録しますが、こちら、並び以降の作品はあまり興味をそそられないかなあ。
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Pacheco & Alexander「Pacheco & Alexander」(1971)
http://y240.exblog.jp/32966454/
2023-05-06T05:50:00+09:00
2023-05-07T19:21:23+09:00
2023-05-06T05:50:30+09:00
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1971
さて、今回はGWにちょうどいい1枚をピックアップしました。
以前、ご紹介したジョン・ホールのファーストソロ「Action」をご紹介した際、トム・パチェコについて言及したところ、複数の方々からトムが同時期にパチェコ&アレクサンダーというデュオで活動しており、そのアルバムが秀逸であることをご教示頂きました。直ぐにチェックしてみると、これがかなりリラックス出来る好盤であり、まさにGWにピッタリ…。ということで今回はこちらをご紹介致します。
私は知らなかったのですが、本作はウッドストック系の名盤と云われていたらしいです。フォークタッチなSSW系でかなり私のツボですね。
トム・パチェコとシャロン・アレクサンダーは4人組のコーラスグループのユーフォリア出身。ユーフォリアは1969年にアルバムを1枚発表しておりますが、こちらはママス&パパスに通じるサウンドのようですが、私は未聴です。こちらも機会があれば深堀してみたいと思います。
ユーフォリア解散後に2人で活動を開始したようですが、このアルバムの参加ミュージシャンが前述の「Action」とモロ被りなんですよね。ジョン・ホール、ハーヴィー・ブルックス、ウェルズ・ケリー、ポール・ハリス…、皆参加しております。他にもジョン・サイモンやリチャード・ベル等が参加。そしてプロデュースはジョン・ホール。なるほど、これは「Action」と表裏一体のアルバムなんですね。
正直オープニングのカントリーロック調の①「White River Junction」にはピンと来なかったのですが、②「Anna Lee」の感傷的でありながらも叙情的なイントロに一発で惹かれてしまいました。
https://www.youtube.com/watch?v=2CsF2u_uHdY
こうしたフォーキーで伸びやかな感じの楽曲って好きなんですよね。まさにGWにピッタリの1曲。
ジョン・ホールが奏でる哀愁漂うスティール・ギターもGoodです。マイナー調のサビも日本人好みかも。トムは所謂ヘタウマ的なヴォーカルなので、好き嫌いが分かれそうですが、私的には「Anna Lee」のような素朴な楽曲にはピッタリと感じました。
③「Milwaukee」はジョン・ホールが「Action」で採り上げてましたね。
https://www.youtube.com/watch?v=JP2bz5EYXOU
ジョンのバージョンはブルース風味を少し加えたような演奏で、かなりスワンプ寄りのアレンジですが、オリジナルのこちらはアップテンポなイーグルス風なロックンロールです。個人的にはこちらのバージョンの方が好みですね。トムとシャロンの息の合ったデュエットも聴き所のひとつ。ジョン・ホールのギターソロも聴けます。
澄み切ったシャロンのヴォーカルがこのフォーキーな④「Morning」にピッタリ。本作中、私の一番のお気に入りの楽曲です。ちょっと日本人好みのフォーキーで美メロディがトムらしい。シャロン・アレキサンダーの澄んだヴォーカルは、ルネッサンスのアニー・ハスラムを彷彿させる声質ですね。
ここでもタイプの違う二人の息の合ったデュエットが堪能出来ます。GWの昼下がり、こうした楽曲をじっくり聴いてみたい。
ちょっとヘビーな⑥「Gather Your Children」は大合唱出来そうなサビが私のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=hXQzVTSv2LA
ちょっと頼りないトムのヴォーカルは御愛嬌。ウッドストック系のミュージシャンって音楽を楽しむことにかけては誰にも負けていないような気がします。ここでの演奏はそんな感じがしませんか?
このジョン・ホールのギターソロ、このギターのトーンも堪りません。
ちょっとザ・バンドを彷彿させるような演奏の⑦「Lost On A Stormy Day」。
https://www.youtube.com/watch?v=-XfTsIQfLTg
残念ながらトムのヴォーカルはかなり貧弱…(苦笑)。このヴォーカルがもっといぶし銀であれば、まさにザ・バンド風。ジョン・ホールもかなりザ・バンドを意識したアレンジにしたように思います。
本作中、唯一のシャロン・アレクサンダーのソロが聴ける⑨「Please Take a Stand」。
https://www.youtube.com/watch?v=XsKmds467rY
多分このマイナー調の楽曲はトム自身は自分の声質には合っていないし、一緒に歌うと曲の印象が変わってしまうと自分自身で感じたのかもしれません。それにしてもシャロンが単独で歌う楽曲がコレ1曲だけというのは勿体ない気がします。なぜかシャロンはパチェコ&アレキサンダー解散後、音楽シーンから遠ざかってしまったようで、彼女の歌声が聴けるのはユーフォリアと本作だけなんですよね。
マイナーな「Please Take a Stand」に続く⑩「Roll With The Flow」は一転して賑やかなパーティーソング。
https://www.youtube.com/watch?v=bb0MOXFlRu0
トムの声質はこうした曲が合ってますし、シャロンもこうした曲ではパンチのあるヴォーカルを披露してます。ちょっとお遊び的なジョン・ホールのギターソロも笑えます。
こうして聴くとやっぱりいいアルバムですよね。彼等のことはあまり知らないのですが、パチェコ&アレキサンダーとして、もう少しアルバムを発表していっても良かったと思うのですが、シャロンに何か事情があって解散に至ったのでしょうかね。
こうした隠れた名盤がまだまだたくさんあるから発掘活動は辞められませんね~。
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The Rascals「Search and Nearness」(1971)
http://y240.exblog.jp/32899534/
2023-02-18T06:12:00+09:00
2023-07-02T09:29:01+09:00
2023-02-18T06:12:04+09:00
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1971
ラスカルズは1969年12月に6枚目のアルバム「See」を発表しますが、そのサウンド・プロダクション(インド音楽やサイケ)はフェリックス・キャバリエの独裁的な色彩が強くなっており、よりストレートなR&Bを追求したいエディ・ブリガッティ等と対立していきます。
結局1970年10月にラスカルズのもう一人のリードヴォーカリストだったエディは脱退、ジーン・コーニッシュも後を追うよう脱退してしまいます。そしてフェリックスとディノのラスカルズはアトランティックからコロンビアへ移籍を決意。
こうした状況の中で1971年3月に発表されたのが本作なんです。つまり過去のレコ―ディングされたものの蔵出し的な感じ(笑)。ですからアトランティックによる宣伝活動もなく、ひっそりと発表され、その直後、5月にはコロンビアから新生ラスカルズのアルバム「Peaceful World」が発表されてます。
本作は1969年10月から1970年10月までに録音された楽曲なので、エディも参加しております。ちなみにジーンは本作の裏ジャケには映っているので、1971年3月時点では脱退していなかった模様。
殆どはフェリックスの楽曲ですが、前作「See」と違い、比較的ストレートな演奏で聴きやすい楽曲ばかりが収録されてます。
サンソンでオンエアされた2曲の内の1曲が①「Right On」。フェリックス作のファンク・ナンバーですが、ウネりを感じさせる好ナンバーです。
グルーヴ感あるディノのドラム。フェリックスの黒いハモンドオルガン、粘着質なジーンのギター。ハーモニカとハモっているのはエディかな。そしてこの曲を下支えしているファンキーなベースはチャック・レイニー。実にカッコいい演奏と黒いヴォーカル。このアルバムはこれ1曲だけでも聴く価値あります。
ゴスペルタッチのR&Bの②「I Believe」も素晴らしい作品です。
https://www.youtube.com/watch?v=D-7DDmdFXTQ
フェリックスの熱唱が光るR&Bポップの名作。コーラスグループのスィート・インスピレーションズが参加してます。エンディング近くになってチャック・レイニーが我慢しきれず力強いベースを披露してます。いや~、忘れ去られているこのアルバムは好トラックが続きます。
ジーン作、ヴォーカルはエディの④「You Don’t Know」。
https://www.youtube.com/watch?v=EkTHxm_XF2k
明らかにフェリックスの作品とは違う、ちょっとポップな楽曲。ディノのタイトなドラムが印象的です。この曲の聴き所は中盤以降の軽いタッチのギターソロからのインストパートでしょうか。ハモンドオルガンやピアノ主体のフェリックスの曲とは違い、ギター中心のサウンド・プロダクション。エンディングはどこかカントリータッチなアレンジで終わります。
サンソンでオンエアされたもう1曲がディノの作品のインストナンバーの⑤「Nama」。
https://www.youtube.com/watch?v=jSQUrIq7OB0
はっきりいってこの曲だけ異質です(笑)。でも私のお気に入りのナンバーです。元々ジャズ嗜好が強かったディノ、バディ・リッチやジーン・クルーパに憧れていたディノの本領発揮されたジャズ・ナンバー。これ、初めて聴いてラスカルズの曲って分からないですよね。デイヴ・ブルーベックの「Take Five」ならぬ、「Take Seven」。拍子が数えられないですが、123・1234の7拍子。これは完全にジャズですね~。
ちょっとサイケな感じとか作品自体も結構クオリティが高く、ディノにこんな才能があったなんて…と今更ながらに驚愕。
後のフィフス・アベニュー・バンドのサウンドを彷彿させる⑧「Ready For Love」。
https://www.youtube.com/watch?v=odX_xXC4o5s
こちらもフェリックスの作品。後にグッドタイム・ミュージックとも呼ばれたフィフスのアルバム「The Fifth Avenue Band」に収録されていても全く違和感がありませんね。コーラスがフィフスそっくりだし、曲のアレンジ・展開も洒落てます。よく考えたらフィフスはニューヨーク出身だし、ラスカルズも同じニューヨーク出身。時代的にも接点があってもおかしくないですね。
このアルバム、アトランティックからも見放され、新生ラスカルズの新作が発表間近で、恐らく当時もスルーされていたであろう不幸なアルバムなんですが、中身はかなりいいんじゃないかなと感じました。
達郎さんが「Right On」のディノのドラムについて「何せ、この歌に呼応する、歌を非常によく聴いているドラマーで。歌にレスポンスするというその瞬間のそのスリルというか・・それが素晴らしい!」と語るほど絶賛されておられましたが、それを踏まえて本作を聴くと、フェリックスだけでなく、ディノもそしてジーンも素晴らしい演奏者であることがよく分かります。
達郎さんは愛するラスカルズについて、2012年の再結成時にニューヨークまでわざわざ見に行かれたそうです。かなり荒い映像ですが、リユニオンツアー時の「Groovin'」をアップしておきます。エディとフェリックス、ジーン、ディノがこうしてまた一緒にやっていたことが嬉しいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=zR1_5YW2mWc
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James Taylor「Mud Slide Slim and the Blue Horizon」(1971)
http://y240.exblog.jp/32811078/
2022-11-12T06:39:00+09:00
2022-11-12T06:45:32+09:00
2022-11-12T06:39:34+09:00
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1971
先日ご紹介したリンダ・ロンシュタットの「Prisoner in Disguise」の中に、JTの「Hey Mister, That's Me Up on the Jukebox」が収録されてましたが、改めてこの曲、オリジナルであるJTのバージョンを聴き直し、こんないい曲だったんだなあと感じ、特にこの曲が収録された本作を夜に聴く機会が多かったですね。 1970年、ベトナム戦争で疲れ切った米国人の癒しとなったのが、ジェームス・テイラー(JT)やキャロル・キングといったSSW系アーチストの楽曲。特にJTは前作「Sweet Baby James」で成功を収め、前作を踏襲するような内容の本作も多くの人の心を掴みました。
前作ではまだバックミュージシャンは固定化されておらず、後のJTのバックバンド、セクションのメンバーだったダニー・コーチマー(G)と、ラス・カンケル(Ds)は参加していたものの、ベースはモンキーズのマイク・ネスミスと行動を共にしていたジョン・ロンドンやランディ・マイズナーが参加しており、まだリーランド・スカラーの名前はないですね。
本作のプロデュースは引き続きピーター・アッシャー。ダニー、ラス、リーランド、そしてキャロル・キングがバックを務めたシンプルなバンド・サウンドが魅力的です。
本作はなんと言ってもビルボードチャートNo.1を記録した、キャロル作のカバー②「You've Got a Friend」が象徴的な1曲です。もう皆さんも何回も何回も聴いてきている名曲かと思いますし、今更何の説明も不要かと思います。
本作収録のバージョンのコーラスは当時JTの恋人だったジョニ・ミッチェル。クレジット上はキャロルはコーラスはおろか、ピアノでも参加していないんですね。でもやっぱりキャロルとのコラボ映像を見たい…。この映像も何回も見たという方が多いと思いますが、やっぱりいつ見ても心に響くものがあります。
カントリー・フレイヴァーたっぷりの④「Riding on a Railroad」。
https://www.youtube.com/watch?v=I2q2mCtcIkE
バンジョーやフィドルが郷愁を誘います。米国人にはこういう曲が堪らないのでしょう。
アップした映像は「In Performance at the White House」という企画モノにJTが出演した際の映像。最後の方にオバマ元大統領(当時は大統領)が映ってますね。歳を取っても全く変わらないJT。この映像からも、彼の音楽って老若男女関係なく、多くの人々に愛されていることが分かります。
アルバム・タイトル・トラックでもある⑥「Mud Slide Slim」。
https://www.youtube.com/watch?v=cvUgsdfLkbU
随所にキャロル・キングっぽいメロディも顔を出す楽曲。ここでは全体的に演奏がタイトでグルーヴィー、特にラス・カンケルのドラムがそれを象徴しております。コーラスも実にソウルフル。ダニー・コーチマーの味のあるギターもいいし、この曲は後のセクションの腰の据わった演奏と、JTの関係が非常に緊密にあることがよくわかる1曲です。4分10秒辺りからのJTのスキャットとダニーのギターの掛け合い、5分過ぎのラスのフィルインは素晴らしい。
リンダ・ロンシュタットがカバーした⑦「Hey Mister, That's Me up on the Jukebox」。
https://www.youtube.com/watch?v=waOLnpuKUME
この曲はフォーキーな曲なんですが、リーランドの粒が立ったような力強いベースが曲を牽引しております。
ジュークボックスにいるのは自分。悲しい歌を歌っているのは自分…。まるで自分自身のことを語ってるかのような歌詞。悲しい歌とは、自殺した友人を歌った「Fire And Rain」でしょうか。
こちらもシングルカットされた⑩「Long Ago and Far Away」。
https://www.youtube.com/watch?v=AbJUspFINAg
今の季節、夜道をこの曲を聴きながら歩くと、この曲の世界観がなんかすごく胸に響いてきます。特にバックコーラスを務めているジョニのハーモニーが素晴らしい。
わずか2分20秒の曲ですが、JTのアコギ、キャロルのピアノ、リーランド&ラスの抑え気味のリズム隊。バックの演奏もシンプル・イズ・ベスト。
ファーストアルバムにも収録されていた⑪「Let Me Ride」。
https://www.youtube.com/watch?v=FjqoOQOFQKY
ファーストに収録されていたバージョンと比較するとアレンジがかなり凝っていて興味深いです。
メンフィス・ホーンズが加わっているように、かなりメンフィス・ソウル的な味付け。途中でシャッフルビートに変わる仕掛けも面白い。本作全体がフォーキーな味わいのなかでの異色作。
個人的にはこのアルバム、相当昔にCDで所有していたのですが、私の趣味趣向がAORに向かっていた時期で、70年代中盤~後半のJTのアルバムばかり聴いてました。
でもこうして本作をじっくり聴いてみると、シンプルなバンド演奏ながらも味があり、JTのヴォーカル、メロディと一体感があって、非常に心地いいと感じました。それにしてもJTの音楽ってエバーグリーンですね。
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Procol Harum「Broken Barricades」(1971)
http://y240.exblog.jp/32757673/
2022-09-17T06:59:00+09:00
2022-09-17T06:59:08+09:00
2022-09-17T06:59:08+09:00
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1971
ここ最近は、思いついたようにプロコル・ハルムを聴いてました。
プロコル・ハルムというと「青い影」ですよね~。でも実際は1967年に発表されたデビューアルバム「A Whiter Shade Of Pale」の中の「青い影」はちょっと浮いた感じです。彼等の音楽の本質は多様な音楽性にあったりするんですよね。
デビュー曲「青い影」でフューチャーされていたオルガン、そのオルガン奏者のマシュー・フィッシャーが1970年に脱退、ベースにクリス・コッピングが加入し、ゲイリー・ブルッカー、ロビン・トロワー、B.J.ウィルソン、そしてクリス(に作詞者のキース・リード)の演奏者4人の体制になり、結局、プロコル・ハルムは前身のR&Bバンド、パラマウンツのメンバーに体制が戻り、音楽性にも更に幅が広がった感じです。
ただし今回ご紹介する5枚目のアルバム「Broken Barricades」はロビン・トロワーの音楽嗜好が全面的に表れたハードロックなアルバムです。
プロデュースはクリス・トーマス。ジャケットからして重たい雰囲気。そうです、このアルバム、かなりヘビーな曲が収録されてます。
まずはロビン作の③「Memorial Drive」を聴いて驚いて下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=jfR0jwL5k-g
激しいギターのリフ。これは間違いなくハードロックです(笑)。ジミ・ヘンドリックスのフォロワーとして有名なロビンですが、プロコル・ハルム時代にここまでロックしていたとは知らなかったです…。ここでのヴォーカルはゲイリー・ブルッカー。間奏のゲイリーのピアノソロもしっかりロックしてます。ジミー・ペイジがZEPのドラマーにと考えていたB.J.ウィルソンのドラミングがロックしているのは理解出来ますが、意外とゲイリーもロック好きだったりするのかなと思わせる1曲。
本アルバムは全8曲中、3曲がロビン作、残り5曲がゲイリーの作品ですが、ゲイリーの作品でもロック色の濃い楽曲がオープニングナンバーの①「Simple Sister」。
https://www.youtube.com/watch?v=2DOAltX0aTM
ロビンは本作発表後に直ぐに脱退し、代わりにギターにデイヴ・ボール、ベースにアラン・カートライトが加入し、ベースのクリスはオルガンに専念といったメンバー変更があったのですが、アップしたスタジオ・ライブ・バージョンはこの時のメンバー。
この曲もイントロから激しいギターリフが…。ロビンのプレイでないのが残念ですが、デイヴもなかなかのプレイを聞かせてくれてます。プロコル・ハルムの熱い演奏が素晴らしい。
ゲイリー作の④「Luskus Delph」が一番皆さんが考えているプロコル・ハルムの音楽に近い楽曲かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=srxaVAJ-jTk
クレジットはありませんが、メロトロンが使われているような気がします。ゲイリーらしい美しいメロディですね。
ゲイリー作の⑤「Power Failure」はめちゃめちゃカッコイイナンバーです。イントロからB.J.ウィルソンの強烈なドラムが堪能出来ます。しかも間奏では彼のドラムソロが炸裂。ロビンの作品でないのに、こちらもかなりハードロックしてますね。この演奏にはオルガンが加わっていないので、よりハードなアレンジとなってます。
⑥「Song for a Dreamer」はロビンがジミ・ヘンドリックスに捧げたナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=Gbeh-O--BwI
ヴォーカルももちろんロビン。それにしてもここで聞かれるギター、後期ジミヘンのギターにソックリ。かなりサイケしているアレンジですが、非常に不思議な雰囲気のナンバー。ジミヘンのナンバーにもこういう曲がありますね。ここまで来ると、もうプロコル・ハルムではありませんね(笑)。
ということでロビン・トロワーは1971年7月にプロコル・ハルムを脱退します。ジミ・ヘンドリックスが1970年9月に亡くなり、ロビンはジミからの影響度合いを更に深めていき、「Song For A Dreamer」へ行きついたわけですね。
ちなみにその後のロビンの、ジミヘンばりの演奏をお聞きください。これはやっぱりプロコル・ハルムを脱退して正解ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=owtMj0g8tys
一方のプロコル・ハルムもライヴアルバムを1枚挟み、1973年に名作「Grand Hotel」を発表するに至ります。こちらもいずれご紹介したいですね。
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The Byrds「Farther Along」(1971)
http://y240.exblog.jp/32705834/
2022-08-13T06:39:00+09:00
2022-08-13T06:39:26+09:00
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1971
プロデュースはメンバー自身(The Byrdsでクレジット)。本作は再結成バーズを除くと、結果的にはバーズのラストアルバムとなってしまい、かなり地味な存在になってしまいましたし、初期バーズのフォークロック的なサウンドからはほど遠いものではありますが、個人的にはカントリーロックの名盤じゃないかなと思ってます。
またライブバンドとしても最強メンバーだったんじゃないかなと。当時のメンバーはロジャー・マッギン、クラレンス・ホワイト、スキップ・バッテン、ジーン・パーソンズの4人。実はロジャー以外の方も凄い方々。クラレンスはブルーグラス界最高のギタリストとも呼ばれている方、スキップもドライブ感溢れるベースが魅力的な方、ジーンはドラマーながらも盟友クラレンスの要望で「Bベンダー」というギター奏法を開発した凄い方(実家が機械工場だったらしく、エンジニアとしての腕前も一流)。のちにジーンはソロアルバムを発表しますが、ドラマーなのにドラムは叩いておらず、マルチプレイヤー振りを発揮してます。
こんな凄腕ミュージシャンが腕を振るって制作されたアルバムが本作なんです。
アルバムのオープニングはやはりロジャーの作品の①「Tiffany Queen」が収められてますが、もうこの頃のロジャーはあまり気合が入っていなかったのか、この曲は凡庸なロックで、個人的にはあまり魅力は感じませんし、本作ではちょっと浮いているような曲ですね。ですから本作はジーン作の②「Get Down Your Line」から始まるという理解です。https://www.youtube.com/watch?v=0CVpwKJAniU
力強いジーンのドラムとメンバーの演奏、もっさりとしたジーンのヴォーカルもカントリー&スワンプな感じがしていいですね。
アルバム・タイトル曲の③「Farther Along」はクラレンスがアレンジしたトラディショナル曲。
https://www.youtube.com/watch?v=VjxPQF51Crs
伸びやかなクラレンスのヴォーカルとマンドリンが味わい深い。こうしたサウンドを聴くと、この当時はやっぱりバンドのイニシアティブはロジャーではなく、クラレンスとジーンだったんだろうなあと思います。
この当時の貴重なバンドのライブ映像をお送りします。1971年5月の演奏ですので、ちょうど前作が発表される直前のもの。もうこの時点で本アルバムの原型は出来ていたと想像できる演奏です。4曲演奏されており、1曲目はロジャーとクラレンスのアコギが楽しめます。特にクラレンスのプレイが凄い。そして2曲目では髭面の男がバンジョーを持って登場。彼がドラムのジーンですね。しかもバンジョー上手い!
3曲目はジーンがハーモニカを吹いてますね。この当時のバーズは、もはやカントリー&フォークのバンドって感じですよね。そして最後は白熱のバンド演奏。やっぱりこのメンバーのバーズが一番演奏力があったんじゃないでしょうか。
上での演奏を聴くとスキップ作の⑥「America's Great National Pastime」も違和感なく聴けるのではないでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=ReXGlk0LxXs
本作からシングルカットされた曲でもあります。この頃のバーズはやっぱりカントリー系の曲を得意としていたんでしょうね。
珍しくメンバー4人とツアーマネージャーだったジミ・セイターとの共作の⑦「Antique Sandy」。
https://www.youtube.com/watch?v=1pGoznJn68M
ロジャーの情緒溢れるヴォーカルが、フォーキーな哀愁漂う曲調と合ってますね。単調なメロディの繰り返しですが、途中でエコーを効かせてサイケなアレンジになるなど、工夫を凝らしてます。当時、ジムの彼女がアンティークな家に住んでいたらしく、それをモチーフに作った曲。
セッション・ギタリストとして活動していたボブ・ラフキン作の⑩「Lazy Waters」はカバー曲ではありますが、本作のハイライト作の1曲。
https://www.youtube.com/watch?v=wNMrYADcxPI
スキップの野太いヴォーカルとメンバーのハーモニーが素晴らしい。メランコリックなメロディはバーズのオリジナル曲といってもいいくらい。間奏のジーンのハーモニカもいいですね~。
エンディングはジーンとクラレンスの共作の軽快な⑪「Bristol Steam Convention Blues」。
https://www.youtube.com/watch?v=6I8NOk42vto
ジーンのバンジョーとクラレンスのマンドリンを中心としたブルーグラスなインストナンバー。そもそもこうした楽曲がエンディングというのも当時のバーズらしい。この二人は昔から一緒に活動していたので、ここでも息の合ったプレイを聴かせてくれます。
本作発表後もこのメンバーでツアーを行いますが、先にジーン・パーソンズが脱退。ギャラの問題から解雇されたとも云われてます。後釜にセッション・ドラマーとして著名なジョン・ゲランを雇い、ツアーを続行しますが、こうした積極的な活動も商業的な成功には結びつかず、ロジャーは徐々にソロ活動に軸足を移していきます。また同時にこの頃、デヴィッド・ゲフィンから悪魔のささやきが…(笑)。初期バーズの再結成…ですね。つまりロジャーはこの時期に自身のソロ作「Roger Mcguinn」や再結成バーズ「The Byrds」の制作に参加していたんですね。この当時のスキップやクラレンスはどう思っていたんでしょうかね。
実質的にはバーズは1973年2月にスキップ・バッテンが脱退したことで消滅してしまいます。残されたクラレンスは自身のブルーグラスのバンドを結成。但し残念ながら同年7月に事故死してしまいます。
最後の4人のバーズは、バーズ史上最強メンバーだったと思うのですが、ラストアルバムは残念ながら商業的に失敗してしまい、本作の評価も決して高くはないと思いますが、個人的にはカントリーロックの名盤じゃないかなと思ってます。
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Boz Scaggs「Moments」(1971)
http://y240.exblog.jp/32679479/
2022-08-06T06:58:00+09:00
2022-08-06T06:58:11+09:00
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1971
ボズ・スキャッグスが60年代後半に高校・大学の同級生だったスティーヴ・ミラーのバンドに在籍していたことは有名な話。そしてボズは同バンド脱退後、1969年にソロデビューを果たします(ボズは1966年にスウェーデンのレコード会社からアルバムを1枚発表してますので、こちらはセカンドということですが、ファーストは本国米国では未発売なので、やはりこちらが実質的なファーストということです)。このソロデビューは、ローリンズストーン紙の編集長がアトランティックに口添えしたことが契機となったようです。
ということでこのファーストはアトランティック・レコードから発売され、かつマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで録音された筋金入りのサザンソウルなサウンドでした。そして次に発表されたアルバムが今回ご紹介する「Moments」。アトランティックが居心地が悪かったのか、もしくはサンフランシスコに拠点を移したかったのか、CBS移籍後の第一弾となったアルバムでした。
新たなスタートを切るような象徴的なジャケットが素晴らしい。プロデュースはスティーヴ・ミラー・バンドを手掛けたグリン・ジョンズ。グリンはこの後、イーグルスを手掛けることとなります。バンド・メンバーは当時のベイエリア界隈で活動していたミュージシャン達。キーボードにはスティーヴ・ミラー・バンドでも一緒だったベン・シドラン、パーカッションにはサンタナにも参加していたコーク&ピート・エスコヴェード兄弟が参加。他、ゲストにジョン・マクフィーがスティール・ギター、リタ・クーリッジがコーラスで参加。こうしたゲストからも想像できるように、本作はサザン・ソウル一辺倒のサウンドではないんですよね。後のAORのボズを彷彿させるような仕上がりになっております。④⑥⑨以外はすべてボズの自作曲。
オープニングから軽快なナンバーの①「We Were Always Sweethearts」。
ラスカルズの流れを汲むようなブルーアイドソウル。サザンソウルというよりも、やっぱり所属していただけあってアトランティック・ソウルの香りが凄いですね。
このアルバムからの当時の映像はないかなあと思ったら、有りました!
ホーンを従えた豪快なバンド・サウンド。かなりグルーヴを感じさせる演奏ですね。長髪のボズ、そして華麗なボズのギタープレイにも注目。
②「Downright Women」はなんとボッサです。上の映像の長髪スタイルのボズからは想像出来ないようなオシャレなサウンド。
https://www.youtube.com/watch?v=X-K-gDQIgEE
ドラムは完全にボサノバスタイルのリズムをキープしてます。アクセントのように鳴り響くヴィブラフォンはベン・シドランのプレイ。もともとR&Bが大好きだったボズも、ベースにこうした洒落たサウンドの好みがあったんですね。この曲なんかは、後のAORサウンドを彷彿させるものを感じます。
③「Painted Bells」は悶絶しそうなスウィート・ソウルです。
https://www.youtube.com/watch?v=IdiKGXhzWD0
イントロから甘味なストリングスが…。ボズの決して力強いとはいえないソウルフルなヴォーカルが、こうした曲にはピッタリ合ってます。メロディも素晴らしい。このアルバム、①~③の流れがあまりにも素晴らしいですね~。
アルバム・タイトルの⑦「Moments」も素晴らしいバラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=cLtbnOJE-iA
この曲を象徴するようなリタ・クーリッジのコーラスがまた素晴らしい。この曲のサウンド・プロダクションは壮大なイメージを持ちますが、このコーラスが大きなポイントですね。ちょっとゴスペルタッチなリタの唄法が光ります。
R&Bが大好きなボズらしい楽曲が⑧「Hollywood Blues」。
https://www.youtube.com/watch?v=SWs98yP-Nxk
R&Bフィーリング溢れるダイナミックなナンバー。こういう音楽はやっぱりライブですね。ちょうどライブ音源があったので、そちらをアップしておきます。
エンディングはインストナンバーの⑩「Can I Make It Last (Or Will It Just Be Over)」。
https://www.youtube.com/watch?v=xf-23acDyf0
ちょっとオリエンタル・タッチなアレンジ。当時はまだ泥臭い曲を専門にやっているイメージのボズですが、エンディングにこんなイマジネーティブな、しかもインストナンバーを持ってくるところに、かなり本作に対して挑戦的な意気込みを感じます。
名盤「Silk Degrees」発表まであと5年。でも本作には確実にその萌芽が見られますね。この時代のボズの作品も非常に魅力的ですし、最近はAORのボズよりも、こちらの時代のボズをよく聴いてます。
4日から11日まで休暇を取っておりますので、ここに来られる方はあまりご興味のないアイドル歌手の記事も挟み込もうかなと思ってますので、ご容赦下さい。
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Al Kooper「New York City (You're A Woman)」(1971)
http://y240.exblog.jp/32512293/
2022-03-05T06:50:00+09:00
2022-03-05T06:50:36+09:00
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1971
ということで今回は、多少でもアルのそのイメージが払拭出来ればと思い、ご紹介するアルバムです。
私は基本はポップスが好きな人間なので、60年代後半のモンキーズに代表されるポップスが好きなんですよね。そういう観点から申すと、このアルバムはエルトン・ジョンのカバー1曲、エルトン・ジョン人脈のミュージシャンを起用した2曲を含む3曲のロンドン録音がポップス指数が高く、いいんですよね~。
1971年発表のアル・クーパー、4枚目のソロアルバム。プロデューサーはアル自身。前述の通り、3曲がロンドン録音、残り8曲がLAのコロンビア・スタジオでの録音。
まずは私のお気に入りの、めちゃめちゃポップな⑦「Back On My Feet」をどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=DzDyi-v-4jo
いや~、こんな弾けるポップス、なんか意外(笑)。こういう曲は私のツボです。60年代ポップス、まさにゾンビーズ風。もともとアルの発表されてきたアルバムの中にも、ゾンビーズに近いポップスが収録されていたりしますね。
ロンドン録音以外の参加ミュージシャンはベースはなんとキャロル・ケイ。レッキング・クルーのメンバーで、ペット・サウンズの女性ベーシストとしてあまりにも有名ですね。ギターはルイ・シェルトン。この人もレッキング・クルーのメンバーでモンキーズの多くの作品に参加されてますね。ドラムはジャズ、R&B系のポール・ハンフリーです。
次にロンドン録音の3曲をご紹介致します。まずはアルバムトップの①「New York City (You're A Woman)」。
https://www.youtube.com/watch?v=m2GqBeTFeLg
スローな楽曲ですが、アルの弾くハモンド・オルガンの音色とメロディが素敵です。そして中盤、こちらもアルが奏でるメロトロンが加わってくると、より一層曲がメランコリックになっていきます。曲は更に転調、アルの熱唱は続きます。アルがもっと歌が上手ければ…(苦笑)。
ちなみにエルトン・ジョン人脈のミュージシャンとして、ハービー・フラワーズ(B)、ロジャー・ポープ(Ds)、カレブ・クゥエイ(G)が参加してます。
そしてこちらもメロディアスな⑤「Going Quietly Mad」。
この奇人、こんなに感傷的なメロディを書く人なんだなあと、ちょっと意外な気も。こうした一面もお持ちな方なんですよね。ここでもメロトロンが効果的に使われてます。どなたかのコメントには「同時期のジョン・レノンの作風」とありました。確かに納得。
でも最後の最後のヴォーカルのアレンジ、声にエフェクトをかけて、おどろおどろしい感じにしたのは本人の照れなのか、アルらしいといえばアルらしいアレンジです。
エルトン・ジョン作のカバーの⑧「Come Down In Time」
https://www.youtube.com/watch?v=fyn0p1sj0Nw
原曲は1970年に発表されたエルトン・ジョンの3枚目のアルバム「エルトン・ジョン3」に収録されていた楽曲。なかなか渋い曲をカバーしたものです。
原曲もフォーキーですが、アルはより一層フォーキー&メロウに仕上げてます。本作ではこの曲がハイライトと評する方も多いですね。アルの頼りないヴォーカルが、この曲の繊細さにマッチしてます(それにしてもアルのヴォーカルは好きになれない方、多いでしょうね)。
後段からはゴスペル・タッチなコーラス&メロトロンも入ってきて、しかも最後はラテン・タッチなアレンジに…。もちろん原曲にはない展開です。これはいい!フリーソウルな感じですね~。
最後はかなりソウルフルな⑥「Medley~Oo Wee Baby, I Love You~Love Is A Man's Best Friend」を。
https://www.youtube.com/watch?v=gqTrEsp8M_k
最初のパートはFred Hughesが1969年に発表したものが原曲。そのサビのメロディを上手く引きついた後半はアルのオリジナル。意識していないとメドレーとは気づかないですね。しかしこの曲は実にソウルフル。エンディングにかけての熱い女性コーラスが曲を盛り上げていきます。もっと声質の太いソウルなヴォーカルであればもっと盛り上げるんですけどね~(笑)。
後にアル・クーパーは1973年、レーナード・スキナードを見出し、デビューアルバムをプロデュースし、見事に大ヒットさせます。今回ご紹介したアルバムの内容と、レーナード・スキナードの音楽が、どうも一致しないのですが、そこは鬼才アルのこと、とても引き出しが多いということなのでしょう。
ただこの奇人も自身のソロ作品となると、1973年発表の「Naked Songs」以降は失速。ヒットには恵まれておりません。
ちなみに1982年発表の「Championship Wrestling」というアルバムはジェフ・バクスターをフューチャーしており、リード・ヴォーカルをアル、ミッキー・トーマス(スターシップ)、そして私の大好きなヴァレリー・カーターが分け合う形で歌ってます。アル・クーパーとヴァレリー・カーター、どういう繋がりがあるのか、興味があったのですが、実はお二人、同じ誕生日(2月5日)だったんですよね(笑)。
(ヴァレリー・カーターの未発表レア音源集の第二弾が4月に発表されるらしい。その第一弾「The Lost Tapes」は以前ご紹介しておりますが、その第二弾は先日亡くなられた盟友ジョン・リンドやジャクソン・ブラウンとのデュエット、アル・クーパーとの共演等、収録されるとのこと。こちらも追ってご紹介致します。)
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Don Nix「Living By The Days」(1971)
http://y240.exblog.jp/32504941/
2022-02-26T07:09:00+09:00
2022-02-26T07:09:45+09:00
2022-02-26T07:09:45+09:00
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1971
ドンはハイスクール時代、あのスティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダンと同級生で、後に彼等とマーキーズというバンドを結成します。この時、ドンはサックスを担当しておりました。1961年、このバンドがスタックス・レコードの前身となるレコード会社と契約し、ヒット曲も発表していきますが、ドンは脱退。スティーヴとドナルドも後に脱退し、ブッカー・T・ジョーンズらとブッカー・T&The MG’sを結成します。一方のドンはレオン・ラッセルと知り合い、ロスアンゼルスでプロデューサー、アレンジャー、ミュージシャンとして活動、その後再びメンフィスへ戻り、スタックス・レコードと契約し、その際にプロデュースしたのが前述のデラニー&ボニーの「Home」だったわけです。
そしてドン自身も盟友レオンのシェルター・レコードと契約し、1970年にデビューアルバムを発表しますが、商業的な成功には至らず、この1作のみでシェルターを離れ、エレクトラ・レコードと契約し、このアルバムが制作されます。
プロデュースとアレンジはドン・ニックス自身。前作に続いてサザン・ロックのメッカ、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでの録音。旧友のドナルド・ダック・ダン(B)も参加。他、マッスル・ショールズのミュージシャン、ロジャー・ホーキンス(Ds)、デヴィッド・フッド(B)、ジミー・ジョンソン(G)、バリー・ベケット(Key)の通称「スワンパーズ」が全面参加。かなり濃厚なスワンプ、ゴスペルなロックが堪能出来る名盤です。
まずそのサウンドにビックリしたのが⑨「My Train's Done Come And Gone」。
https://www.youtube.com/watch?v=mBhHQH7p2ts
これはザ・バンドそのもののサウンドですね。コーラスがゴスペル風なので、よりスワンプ臭がします。ドンのヴォーカルもザ・バンド風。ロジャー・ホーキンスのドラムって結構好きなんですが、そのグルーヴ感もザ・バンドのリヴォン・ヘルムと似てますね。リヴォンの方が年長者でキャリアも少し長いので、ロジャーも意識していたのかなあ。後にリヴォンのソロアルバムにロジャーは叩いてますしね。
ということでエンディング曲から先に紹介しちゃいましたが(苦笑)、アルバムトップは①「The Shape I'm In」。なんとザ・バンドに同名異曲がありますね。ちょっとはドンもザ・バンドを意識したのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=GHFzkLKKCXQ
オープニングナンバーに相応しい厳かなオルガンで始まります。このゴスペル感も半端ないですね。歌詞もメロディも米国南部の歌って感じです。
素晴らしいロックンロールナンバーの②「Olena」。
https://www.youtube.com/watch?v=yYK-xc6-PZg
ホンキートンク調のピアノがいいですね。このテのスワンピーなロックンロールは大好物です。こうした楽曲にはちょっと武骨なドンのようなヴォーカルがいい味だしてます。
ハンク・ウィリアムス作のカントリーの名曲③「I Saw The Light」のカバーが本作のハイライトでしょうか。ロジャーが牽引するリズムが重い。そして豪快なゴスペル風なコーラス。なんだかヘビーなドラムに負けないくらいコーラスが怒鳴っているくらいに聞こえます。
こちらもザ・バンド風の④「She Don't Want A Lover (She Just Need A Friend)」。
https://www.youtube.com/watch?v=4Oig49ztX8E
イントロのギターの音が気のせいかビートルズの「Let It Be」のサウンドに似ている。よく考えたら「Let It Be」もベースにゴスペルサウンドが効いているような気がします。ドンのこちらの曲もサザン・ソウルとゴスペルがうまくブレンドされてます。
翌年、1972年、ジェフ・ベック・グループがドンの作品「Goin' Down」を採り上げます。「Goin' Down」が収録されたアルバム「Jeff Beck Group」のプロデューサーがスティーヴ・クロッパーだったので、スティーヴからの繋がりがあったのかもしれません。そしてこの縁により、ジェフ・ベックが翌年結成したバンド、ベック・ボガード&アピスのデビューアルバム「Beck, Bogert & Appice」ではドン自らがプロデュースまで務めております。
ちなみにこのアルバムにはドンの楽曲が2曲収録されてます。その内の1曲「Black Cat Moan」はアルバムトップに収録されたナンバーで、かなりジェフがソウルフルな演奏を聞かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=cxN-frB1UbI
この後、ドンは数枚のアルバムを発表してますが、玄人志向なのか、商業的なヒットには至っておりませんね。また2013年に初来日もされているんですが、当時、予定していたバンドメンバー4名の内、2名しか来れず、急遽2名が加わった編成の覚束ない演奏だった模様。長年裏方でやっていた方で、ライヴ慣れしていないのか…、なかなか強烈なエピソードです。
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Judee Sill「Judee Sill」(1971)
http://y240.exblog.jp/32218488/
2021-07-10T06:44:00+09:00
2021-07-10T06:44:42+09:00
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1971
ちなみにアサイラム・レコードとはデヴィッド・ゲフィンが立ち上げたレコード・レーベルですね。
ローラ・ニーロのマネジメントを担当し、そこそこの成功を収めたデヴィッド・ゲフィン。そこにジャクソン・ブラウンのデモテープに可能性を見出し、アトランティック・レコードに売り込みを図るのですが、敢え無く却下されてしまいます。但し社長のアーメット・アーティガンは「そこまで言うなら自分でレコード会社を作ってみてはどうか?」と逆に提案され、立ち上げたのがアサイラム・レコードなんです。ですから最初のアーチストはジャクソン・ブラウンと思いきや、ジュディ・シルだったんですね~。
恐らく単純にレコード会社の立ち上げのタイミングとジュディとの契約が合っていたから…という理由だけだと思いますが、その時点でレコーディングは終了していたジャクソン・ブラウンのファーストはプロモーションに入念な準備を重ね、翌年1月、満を持してアサイラム3人目のデビューとなりました(ちなみに2人目はデヴィッド・ブルー)。
さて、そのジュディのファーストアルバム、これがまたいいんですよね。彼女曰く「影響を受けた音楽はバッハ、宗教音楽、レイ・チャールズ」と語ってます。その発言からもお分かりの通り、彼女が奏でる音楽は独特の世界観が拡がってます。彼女は幼少時代から不遇な生活を強いられ、刑務所生活を過ごすなど、相当荒んだ人生を歩んできた方です。彼女のキリスト教的な詞の世界は、そういったことが背景にあるんですね。
デヴィッド・ゲフィンはジュディを第二のジョニ・ミッチェルとして売り出したかったようです。ですからプロデュースはジョニ・ミッチェルのエンジニアとして知られたヘンリー・レヴィーを起用。他、タートルズのジム・ポンズ、ジョン・ベックがプロデューサーに名を連ね、更にグラハム・ナッシュも1曲プロデュースしております。ただ、ジュディの音楽があまりにも個性的なので、ひょっとしたらプロデューサーとしての仕事はそれ程でもなかったのではないか…と推測します。
歌い方がどことなくジョニに似ている③「The Archetypal Man」。
https://www.youtube.com/watch?v=TShtWiAp4DI
スティール・ギターも加わるカントリー・ワルツですが、途中からオーケストラも加わったりして、ジュディ独特の楽曲に仕上がってます。間奏のクラシカルなスキャット風コーラス、これがまたデビューしたてのアーチストとは思えないアレンジ。達郎さんの「クリスマス・イヴ」は案外これがモチーフになったかもしれませんね。メロディも味わい深いし、恐らくこの曲なんかは、アレンジも含めて彼女が実質1人で仕上げていったのではないでしょうか。
軽快なフォークタッチの④「The Lamb Ran Away with the Crown」。
https://www.youtube.com/watch?v=GHXteb6R-AY
こちらはポール・サイモン=S&Gなんかを彷彿させる楽曲。音は小さいですがホーンなんかもイイ感じで鳴ってます。途中でそのホーンに絡むコーラス、エンディングでの圧倒的で眩いコーラス。これも素敵なフォーク&ソフトロック。
下にアップしたのは1973年の南カリフォルニア大学のキャンパスで行われた野外ライヴの貴重な映像。彼女の歌・演奏の上手さは、音が悪くても素晴らしいものだったということが分かります。
タートルズに提供し、彼女の名を一躍有名にした⑤「Lady-O」。
https://www.youtube.com/watch?v=40O8nfSRbRg
タートルズのアレンジとそっくりなセルフカバーです。でもコレ、ひょっとしたら元々がこういうアレンジだったものをタートルズがカバーした…とも解釈出来ます。ジュディの才能を鑑みると、きっとそうなんだろうなあと。プロデューサーにタートルズのジム・ボンズが名を連ねているのも、そういった関係だったのではないでしょうか。弦楽四重奏(だと思うのですが)が美しい調べを奏でます。メロディも美しい…絶句。
グラハム・ナッシュがプロデュースしたシングル⑥「Jesus Was a Cross Maker」。
https://www.youtube.com/watch?v=kTAesI73E1U
この曲を最初に聴いたとき、あまり印象に残らなかったのですが、仕事で疲れたとき、ふっとこの曲を聴くと、実に味わい深い楽曲に聴こえたんですよね。この曲に救いを求めるわけではありませんが、ジュディの音楽にはそういった、人の心に何か訴えかけるものがあるような気がします。
J.D.サウザーとのロマンスの破局がきっかけとなって生まれた曲とも云われてます。ちょっとゴスペルタッチな楽曲。特にエンディングでの徐々に盛り上がってくるコーラスはかなりゴスペル色が濃い。リタ・クーリッジがコーラスで参加。
フォーキーな⑧「My Man on Love」。
https://www.youtube.com/watch?v=2nKmhrc49Ek
アコギ1本の地味なフォークタッチの楽曲ですが、出だしから1人多重録音のコーラスが素晴らしい。しみじみと聞かせるメロディも素敵です。そして曲が進むにつれ、コーラスが盛り上げてくれます。途中からチャイムがアクセント鳴りますが、これも素晴らしいアレンジ。心が落ち着く、癒しの曲…。
ちょっとブルージーな⑩「Enchanted Sky Machines」は本作では異色の曲。
https://www.youtube.com/watch?v=98DkVGBo_UE
ピアノはもちろんジュディ自身が弾いているもの。力強いドラムは誰が叩いているのでしょうか?本作にはミュージシャンのクレジットが全くないので誰が参加しているのか良く分かりませんが、デヴィッド・クロスビーとかグラハム・ナッシュとの交流を考えるとダラス・タイラー辺りでしょうか。サックスもフューチャーされた力強いスワンプ・ロックですね。
ジュディは1973年にセカンドアルバムを発表するのですが、一説にはデヴィッド・ゲフィンを冒瀆するような発言(敢えてボカシて書いてますが)を公の場でしてしまい、それがデヴィッドの逆鱗に触れ、このセカンド、全くプロモーションされずに終わったらしい。
その後、ジュディは交通事故に逢うのですが、犯罪歴のある彼女には合法的な処方薬(鎮痛剤)が与えられず、結局麻薬に溺れていってしまい、1979年11月、ドラッグの過剰摂取により35歳という若さで亡くなってしまいます。その高い音楽性は後世認められていくのですが、才能溢れる方だったので、もっと多くの楽曲を発表していってほしかったですね…。
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Dave Mason & Cass Elliot「Dave Mason & Cass Elliot」(1971)
http://y240.exblog.jp/32178840/
2021-06-12T06:20:00+09:00
2021-06-12T06:20:07+09:00
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1971
ってことで、今回はそのブルーサム・レーベルからの「Alone Together」に続く、ママス&パパスのキャス・エリオットとのデュオアルバムです。
デイヴ・メイスンがグラム・パーソンズに紹介された相手がキャス・エリオット。この当時のことは私もあまり詳しくないのですが、ここになぜかネッド・ドヒニーが絡み、一時期3人で活動していたらしい。人脈の織りなすLAらしいエピソードですね。英国人であるデイヴも、そんなLAに魅了されたのかもしれません。
ただ、諸事情ありネッドは離脱(完璧主義者のネッドはバンド活動には合わない人かも)。デイヴ&キャスとして本作は制作されました。
集まったミュージシャンはポール・ハリス(Key)、ラス・カンケル(Ds)、ブライアン・ギャロファロ(B)。ブライアンはラスと以前にThings To Comeというバンドで一緒だった仲で、後にジャクソン・ブラウンのツアーに参加する方。プロデュースはデイヴとキャス。シンプルな演奏が楽しめる1枚です。
ネッド・ドヒニー作の②「On And On」。
https://www.youtube.com/watch?v=4PKTZxXDX9A
ネッドと3人での活動の中から生まれたものでしょうかね。デイヴの乾いたアコギの音色と大胆なギターソロ、キャスの厚みのあるコーラス。ちょっと憂いのあるサウンドはデイヴならではですね。「Let It Flow」では突き抜けた爽やかさを感じますが、ここではそこまで乾ききれない…、スワンプの香りを放つ絶妙なサウンドです。
キャスとベースのブライアンとの共作の④「Here We Go Again」。
https://www.youtube.com/watch?v=Od4U8ZDQdlA
キャスのリードヴォーカルが楽しめます。ママス&パパスとは違う、ちょっとアーシーな感じのするサウンド。でも基本はデイヴの曲とは違いポップス。ドラムレス、パーカッションでリズムを刻むアレンジは、よりキャスのヴォーカルを引き立てる効果を生んでます。
デイヴ作の⑤「Pleasing You」。
https://www.youtube.com/watch?v=PkFXY_iLGss
本作中、一番力強いナンバーでしょうか。間奏のポール・ハリスのピアノソロなんか、かなり弾けてます。私だけかもしれませんが、この曲なんかは初期のスティーリー・ダンのような音に感じます。初期のスティーリー・ダンってちょっとスワンプ系の曲なんかもあったりして。あと当時のメンバーだったジム・ホッダーの力強いドラムと、ここでのラス・カンケルのプレイが似ているような気がします。
デイヴとキャスの唯一の共作である⑦「Something to Make You Happy」。やっぱり紹介しないわけにはいかないでしょう。ヴォーカルもキャスのリード、そして2人のデュエット。キャスの暖かいコーラスは幸福感に溢れてます。
それにしても2人のダブルネームの作品の割には共作はコレ1曲。完全にデイヴの作品にキャスが相乗りした印象は拭えませんね。
豊潤なコーラスが魅力的なデイヴ作⑧「Too Much Truth, Too Much Love」。
https://www.youtube.com/watch?v=dpNxpLPvgCE
フォーキーな曲調ですが、キャスのコーラスが入るとポップス風に聞こえるから不思議です。曲の2番目からは2人のデュエット、キャスのヴォーカルは印象的ですね。途中から曲がテンポアップして、ちょっとカントリー風な感じにギアチェンジするアレンジも素敵です。
全体的にメロディとアレンジが充実した楽曲が多く、好感の持てるアルバムです。それにしてもダブルネームなのにジャケにはデイヴ1人。キャスは裏ジャケに豪快な笑顔を振りまいてますね。
キャスは1974年に心筋梗塞で亡くなります。享年32歳。キャスには娘さんがいらしたのですが、その娘を引き取ったのが実妹のリア・カンケル。そう、本作のドラマーでもあるラス・カンケルの奥さんです。リアは1969年にラスと結婚。当時はまだ20歳そこそこだった筈で、後にジャクソン・ブラウン等のバックコーラスを務めてました。彼女が正式にソロデビューしたのが1979年。そしてキャスの娘であるオーエンも後にプロデビューしておりますね。
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Rod Stewart「Every Picture Tells A Story」(1971)
http://y240.exblog.jp/32003952/
2021-02-20T06:38:00+09:00
2022-10-13T09:33:20+09:00
2021-02-20T06:38:42+09:00
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1971
スティーヴ・マリオットに抜けられてしまい、取り残された3人、ロニー・レイン、イアン・マクレガン、ケニー・ジョーンズの下に現れた救世主がロン・ウッドであり、ロンが連れてきたロッド・スチュアート。この時点でロッドはマーキュリーとソロ契約をしている身でしたが、結局フェイセズはワーナーと契約。これが後に大きな問題に発展していってしまうのですが…。
このロッドの名作は、ロッド自身のサードアルバムです。時系列に整理すると…。
1970年2月 ロッド「An Old Raincoat Won't Ever Let You Down」、3月 フェイセズ「First Step」、9月 ロッド 「Gasoline Alley」1971年3月 フェイセズ「Long Player」、7月ロッド 本作…とソロとバンド交互にアルバムを発表していってます。ソロとバンドと、徐々に複合的に人気が盛り上がってきたわけで、この本作がロッドやフェイセズにとってブレイクの決定打となったわけです。
プロデュースはロッド自身。バンドからはイアンとロンが参加。ドラムはジェフ・ベック・グループ時代以前からの盟友ミック・ウォーラー。
アルバムトップはタイトル曲の①「Every Picture Tells A Story」。ロッドとロンの共作です。今更ですがこの曲の持つパワー、スゴイですね。アコギのカッティングがハンパなくカッコいい!ちょっとタメてグルーヴ感を出しているミックのドラムもいい!そしてこの曲のハイライトは当時英国のジャニスと呼ばれていたマギー・ベルとのデュエットでしょう。途中からマギーの迫力あるヴォーカルが加わっていきます。エンディングでのデュエットは実に迫力あります。
ボブ・ディランのカバーの⑤「Tomorrow is Such a Long Time」。ブリティシュ・フォークの極みというか、カントリー・ミュージックを英国風にアレンジしたという感じ。こういうフォーキーなロッドっていいんですよね。このスティール・ギターもロン・ウッドですね。
英国でNo.1に輝いた⑦「Maggie May」。もともとはシングルのB面扱いだった曲だったのですが、地元DJがこちらをオンエアしたら、こっちの方に火がついてしまったという名曲。ロッド自身は自分で作った曲にも関わらず、「なぜこの曲がヒットしたのか分からない」と言ってます。後半のマンドリンは当時頭角を現していたフォークグループのリンディスファーンのレイ・ジャクソン。彼は2003年にロッドを著作権侵害で訴訟を起こしております。あまりこのことは大きく報じられてもいないので、イチャモン程度のことなのでしょうね。
この曲のビッグヒットでフェイセズも商業的に脚光を浴びることになります。
ロッド作の⑧「Mandolin Wind」はタイトル通り、マンドリンをフューチャーした楽曲。レコーディングでは、前述のレイ・ジャクソンがマンドリンを弾いてますが、リンクしたライブではロッド自身が弾いてますね。
それにしても単なるヴォーカリストと思っていたロッド、実は有能なライターでもあったんですね…、失礼しました(苦笑)。
ちょっと意表を付くのがテンプテーションズのカバーの⑨「(I Know) I'm Losing You」。確かに原曲もギターのリフが印象的なソウルナンバー。これをロッドは更に黒くやってます。かなりヘビーな仕上がりですね。イントロのリフがちょっとZEPの「Whole Lotta Love」を連想させます。ちなみにアップしたのはフェイセズでの演奏。ケニー・ジョーンズのリズミカルなドラムソロも堪能出来ます。
本作は全米・全英共にNo.1を記録しました。ロッドのソロが先にビッグヒットを記録したんですね。そしてロッド・スチュアート&フェイセズみたいな扱いになっていき、1973年にロニーが脱退してしまいます。
後にケニーはインタビューで「マーキュリーとマネージャーのビリー・ガブにいいように利用された。ただ誤解しないでもらいたいが「マギー・メイ」がヒットしたときは自分のことのように俺たち4人は喜んだよ」と語ってます。フェイセズの絆を感じさせる発言にホッとさせられました。
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The Mamas & The Papas「People Like Us」(1971)
http://y240.exblog.jp/30572528/
2019-11-16T12:59:00+09:00
2019-11-16T12:59:59+09:00
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1971
ママス&パパスっていうと、フォーキーなイメージがありますが、この作品はソウル色の濃いソフトロックの名盤。
ご存じのようにママス&パパスは男女4人の混成メンバー。1965年に結成されますが、バンド内の不倫騒動等、ドロドロの関係となり、1968年には解散してしまいます。ただし契約レーベルのダンヒルとはもう1枚、アルバム制作の契約が残っていたため、リーダーのジョン・フィリップスがメンバーに声を掛け、この1枚を制作。メンバー4人が一堂に揃って収録されることはなかったみたいですが…。
アルバムタイトルトラックの①「People Like Us」は、まだ前4作の作風を継承した、ママパパらしい男女掛け合いのコーラスが美しいミディアムテンポのナンバー。ジム・ホーンが奏でるフルートが美しい。エンディングにかけての、眩いばかりのコーラスも素敵です。今日みたいな日和には、こうした素敵な音楽でまったり過ごしたいですね。
美しいバラードがフェードアウトし、余韻に浸る間もなくソウルフルなイントロの②「Pacific Coast Highway」が…。ちょっと粘着質なギターが聞えますが、これ、デヴィッド・T・ウォーカーでしょうか。ギターといいサックスといい、アレンジはかなりソウル色が濃い。「夢のカリフォルニア」を歌っていたバンドとは思えない、一瞬、スライ&ファミリー・ストーンを思わせるアグレッシブなナンバー。
本作中、私の一番のお気に入りが④「Shooting Star」。ママパパらしいキュートで素敵なコーラスが聴けます。本作でのドラムはエド・グリーンとアール・パーマーが叩いてますが、この曲はタメが効いているのでエドでしょうか。エンディングのコーラスがフェードアウトして、リズム隊だけのインスト部分が実にグルーヴィーでスリリングです。
前の④「Shooting Star」から一転、スィートなナンバーの⑤「Step Out」。本作では1曲目から5曲目までの流れが本当に素晴らしい。これら毛色の違う楽曲すべて、ジョン・フィリップスの作品。ジョンって、やっぱり天才ですね。こんなソウルフルなスィートナンバーまで書けてしまうんですから。ヴォーカルはもう一人のパパスのダニーでしょうか。
カリプソ風の⑧「European Blueboy」。これはお遊び的に収録したんでしょうかね。でもしっかり四声ハーモニーが素晴らしい。
アルバム最後は意外と普通のポップナンバーの⑫「Blueberries for Breakfast」。
アップした曲を聴いてもお分かりの通り、ジョン・フィリップスって、相当な天才だったと思います。この作品を作る前にはファーストソロも発表していますが、これも味わい深い作品でした。しかし、本作発表後、ドラッグ漬けに陥ってしまい、音楽シーンからも遠ざかってしまいます。次に彼の名前が聞かれるのが、あの「Kokomo」ですね(ココモはマイク・ラブとテリー・メルチャー、スコット・マッケンジー、ジョン・フィリップスの共作)。
ジョンは2001年に心臓疾患で亡くなりますが、娘さんはウィルソン・フィリップスのメンバーとして、今も活躍中ですね。
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