モンキーズのマイク・ネスミスの画期的なソロアルバム今回はあまりもマイナーなアルバムのご紹介です。恐らくモンキーズ・ファンの間でも、本作を聴いたことがある方というのは極めて少ないと思われます。
本ブログでも再三お話している通り、モンキーズのメンバーであるマイク・ネスミスは音楽的な才能を有する素晴らしいミュージシャンであり、本作はそのマイクがモンキーズ在籍時に制作した貴重なソロアルバムです。
ただしその制作過程が非常にユニークです。
モンキーズの成功で大金持ちとなったマイクは税金対策として、有能なスタジオミュージシャンを彼等のゴールデンタイムと呼ばれている土日に集めて、かつ豪華なケータリングサービスを付けたインストモノのアルバム制作を企画します。この企画は当時の音楽界において注目を集め、そして1967年11月18、19日、このスーパーセッションは録音されました。
全曲マイク作、アレンジはマイクとショーティー・ロジャース。ハル・ブレイン、トミー・デテスコ、デューク・エリントン、ウディ・ハーマン等凄腕ミュージシャン50人が参加してます。本当にそんなセッションがうまくまとまるのか?、そこに注目が集まったのですが、本作を聴いて頂ければお分かりの通り、そんな不安は全く杞憂のものであったことが分かると思います。

収録曲は以下の通り。
1. Nine Times Blue
2. Carlisle Wheeling
3. Tapioca Tundra
4. Don't Call On Me
5. Don't Cry Now
6. While I Cried
7. Papa Gene's Blues
8. You Just May Be The One
9. Sweet Young Thing
10. You Told Me
③④⑥⑦⑧⑨⑩はモンキーズのオリジナルアルバムに収録済。また①は後のファーストナショナルバンドに、②はモンキーズの未発表集に収録されることになります。
このアルバム、実は私自身も最近まで聴いたことがなく、単なるイージーリスニングアルバムと思い込んでました。しかし実際聴いてみると、これがかなり面白いセルフカバー集となってます。
その中心的存在がドラマーのハル・ブレインでしょう。本作でもオーケストラに負けじとパワフルなドラミングを聴かせてくれます。味付けが豪快なサウンドに聴こえるのはそのドラミングのためでしょう。

まずは①「Nine Times Blue」。重厚なパイプオルガンから始まるこの曲、一瞬プログレか、と思ってしまいます。
プロコル・ハルムのデビュー曲「青い影」のリリースが1967年4月。時代的にもこの「青い影」に影響を受けたものと思われます。ただし途中組曲的に織り込まれるカントリースタイルはマイクならではあり、非常にユニークなアレンジとなってます。
②「Carisie Wheeling」はブラスの強烈なリフが印象的。曲をグイグイと引っ張っているのはハルのドラムです。ここぞとばかりのフィルインはハルならではですね~。
本作中、いちばんイージーリスニングタッチなのが④「Don't Call On Me」でしょう。これはモンキーズのオリジナルヴァージョンでもムーディーで、パーティ形式の音作りでしたが、本作でも最後にパーティらしい雑談が聴こえてきます。実はこの会話こそが、この収録の楽しさを表している部分なんですね。
ここではマイクは皆に「何でもいいから音を出してくれ」と指示したようです。そこでギターのトミー・テデスコは自らのテレキャスターを放り投げたんですね。皆、大笑いしてます^^。
私の大好きな⑦「Papa Gene's Blues」。モンキーズのデビューアルバムに収録されたカントリーナンバーですが、ここでは少しテンポを落として、いい感じでオケが鳴ってます。
⑨「Sweet Young Thing」ではエンディングで、モンキーズのスターコレクターのように、皆アドリブで好き放題楽器を鳴らしてます。こうしたアレンジもマイクならではですね。
本作のターゲットは誰だったのでしょう。本作を改めて聴くと、そうした思いがよぎります。当時最高144位。本作はちょうどモンキーズの5枚目のアルバム「The Birds,The Bees and The Monkees」発売直後のリリースです。当時アイドルグループであるモンキーズを熱心に聴いていたと思われるファン層と明らかにターゲット層は異なっていたと思われます。マイクとしては税金対策で制作したアルバムですが、やはり別の次元で音楽を熱心に聴いていた層にアプローチし、自らの音楽的才能をアピールしたかったのでしょうね。
そういった意味では、アイドルグループのメンバーがリリースするソロアルバムとは全く異質の、非常に硬派でユニークなアルバムだと思います。