鬼才トッド流ホワイトアルバム本作はポップス好きには避けて通れないアルバムです。
鬼才トッド・ラングレンが1972年に発表した2枚組アルバム。A面からC面は全ての楽器をトッド一人で演奏しており、マルチプレイヤー振りを存分に発揮してます。
トッドについては彼の2枚目のアルバム
「Runt. The Ballad of Todd Rundgren」をレビュー済ですので、そちらも併せてご覧下さい。
この2枚目のアルバムでは彼のポップ感覚がよく伝わって来ましたが、この3枚目では、いよいよその感覚が全開となって現れてきます。
このアルバムはトッドなりにA~D面、各々違う色彩で表現しております。そしてA~C面はトッドがすべての楽器をひとりで演奏したもの。D面は有能なスタジオミュージシャンを集めて、オーバーダビングなし、つまり一発録りで収録したものです。
本作の白眉はなんといってもA面でしょう。
トッド曰く、このサイドは「A Bouquet of ear-catching melodies」と表現してます。「キャッチーなメロディーの花束」なんて、なんと素敵なネーミングでしょう。
その言葉通り、A面は素晴らしいポップスナンバーが続きます。
①「I Saw the Light」はトッドの代表作の1曲。キャッチーなメロディと効果的なタム打ちがいいですね。スライドギターも印象的です。
一転②「It Wouldn't Have Made Any Difference」はメロウなポップナンバーです。
♪ Do you remember・・・♪ と語りかけてくるトッド。いいですね。素敵なメロディです。
①②で、すっかり本作の虜となり、さあ次はと思いきや・・・。なんとタイトルは「Wolfman Jack」。そうです、以前私のブログのロゴに使っていた、伝説のラジオDJです。ロックンロールを独特の声で次々に流していました。私もWolfman Jackの番組はよく聞いてましたね~。
♪ Full moon tonight, everythings allright
Baby come on back to Wolfman Jack ♪
歌詞もイカしてますね。
ファルセットコーラスがソウルフルだし、豪快なロックンロールです。①②とは違うトッドが垣間見られますね。
エンディングのギターもラウド感をよく表してます。最高!!
④「Cold Morning Light」は②の延長線上。私のお気に入りの楽曲です。美しいメロディです。またリズムが凝ったアレンジで、聴き手を飽きさせません。美しいアコギ、フルートらしき音が聴こえますが、これもトッド演奏はトッドでしょうか??
③とは違う、線の細いトッドのヴォーカルが、よりイノセントな感じを出してます。
B面は「知性のサイド」と呼んでおり、ポップなメロディをベースとしながらも、実験的なナンバーが続きます。
C面は「The kid gets heavy」と呼んでます。
文字通り最初のトラック「Black Maria」はヘビーなギターリフが印象的。個人的にはこうしたトラックはトッドらしくないと思うのですが、トッド自身、非常に多様な音楽をクリエイトしていく人なので、何がトッドらしいのか?と突っ込まれてしまうと困りますが(笑)。
⑤「Little Red Lights」のイントロなんてギターのノイジーな音で始まりますが、A面とは全く違う音楽ですよね。
そしてD面は「A Pop Operatta」。これも素敵なネーミングですね。
何が飛び出してくるのかと思ったら、いきなりチープな音??
実は⑥「Overture-My Roots: Money (That's What I Want) /Messin' With the Kid」はトッドが以前いたバンドの1966年のライブ音源。なるほど。こんな楽曲を挿入するあたり、いかにもトッドらしいです。
⑦「Dust in the Wind」からはスタジオミュージシャンとの一発録り。その最初の楽曲である「Dust in the Wind」。かなりクオリティ高いです!結構このアルバムのなかで一番好きかもしれません。
ブラスを加えて、ちょっとサザンソウル風味をまぶしたナンバー。ギターソロはリック・デリンジャー、それに続くテナーサックスソロはマイケル・ブレッカー。女性コーラスがサザンソウル的でいいですね~。
それにしてもこれが一発録りとは、凄いですね。楽曲の良さ、アレンジもいいです。
⑨「Hello It's Me」は「I Saw the Light」と同様、トッドの代表曲のひとつ。説明不要の名曲ですね。
意外と好きなのが⑪「You Left Me Sore」です。D面のリラックスムードのなかで、こうした和み系3連ソングはいいですね。
2分20秒あたり。トッド、思わず声が裏返ってしまいます(笑)。さすがにバックから失笑が漏れてます。ホントリラックスムードのなかでの収録だったんでしょうね。
Beatlesの「Please please me」を連想してしまいました。
本作、2枚組と大作の割には、結構いろいろなアイデアが詰まっており飽きさせません。また非常に多彩ですよね。
ビートルズのホワイトアルバムは、ジョン・ポール・ジョージ・(リンゴ??)の結晶ですが、本作はトッド一人ですからね~。上の写真でも分かるように、いろいろな楽器を操るトッドが全身全霊力を注いだアルバムであり、これがたった一人の男の力によるものということは驚きに値します。
グランドファンクレイルロードの「アメリカン・バンド」のプロデューサーがトッドだと知った当時、物凄い違和感を覚えたものですが、多彩な彼のこと、全く違和感なくこなしたのでしょうね。