素晴らしいロックシンフォニーアルバム「SMiLE」ビーチボーイズの中心メンバーであったブライアン・ウィルソン。あまりの天才が故に、時代が付いていけませんでした。今月のレココレでは創刊25周年記念企画として、60年代のロック・アルバム・ベスト100を発表してますが、そのランキングの堂々の第一位がビーチボーイズの「ペットサウンズ」。
ビーチボーイズといえばサーフィン・夏・車・女の子といった、ある意味能天気な(でも実は音楽的には凄いのですが・・・)楽曲で人気を博し、未だにそういったイメージがあるかもしれません。
ところがブライアンはそういった世界観とは違う、独自の音楽を極めていきます。そのひとつの頂点が1966年発表の「ペットサウンズ」。明るいポップス好きな私としては「ペットサウンズ」を最初に聴いたとき、戸惑いましたね~。
名盤と思って聴いたのに、これは本当にビーチボーイズかと。「ペットサウンズ」はある意味、ブライアンのソロアルバムかもしれません。アルバムのなかの「スループ・B・ジョン」が思いっきり浮きまくってますが、これが唯一ビーチボーイズらしい作品といえるかもしれませんね。
さて「ペットサウンズ」についてはいずれまたアップしたいと思ってますが、今回はそれに続くはずだった幻のアルバム「SMiLE」です(ジャケを見るとiが小文字なんですね^^)。
もともとは1967年に発表される筈だったアルバムですが、商業的な成功と音楽的な極みが相反する結果となったことや、いろいろなプレッシャーによりブライアンは廃人と化してきます。
この時期、というかそれ以降のビーチボーイズですが、ブライアンの弟、カール・ウィルソンやアル・ジャディーン、ブルース・ジョンストン等が引っ張っていくことになりますが、当然彼等はこの「SMiLE」の世界観は理解できず、数曲のトラックが五月雨式に発表されますが、アルバムとしてはお蔵入りとなってしまいました・・・。
あれから37年。カールやデニスが亡くなり、ブライアンも再起不能といわれていた時期があり、もう絶対に聴けないと思っていた「SMiLE」。ところがそれがついにブライアンの手によって新たに制作、発表されたんですね~。
(この37年間の出来事を鑑みると、ビーチボーイズファンがどれほどこのアルバムの発表を狂喜したことか・・・。文才のない私にはこれ以上のことは書けませんが、それくらい重みのあるアルバムなんですね。)
これはやっぱり一聴して理解することは不可能ですね~。たとえばガンズやオアシスが好きなロックファンが聴くとどうか?、純粋にアメリカンポップス好きが聴くとどうか?でもアルバムを何回も通して聴くと、この超越した音楽が好きになってきます。これをロックという括りで見るのは難しいかもしれませんね。叙情的なシンフォニーというか、多分聞き手それぞれに違うイメージを膨らませるものなのかもしれません。
これぞブライアン!といったアカペラコーラスが美しい①「Our Prayer/Gee」。見事なオープニングですね。
②「Heroes and Villians」はビーチボーイズでも発表された名曲。複雑に入り組んだコーラス、組曲風な楽曲。また楽器の使い方もすごいです。
4分17秒のコーラス、そしてエンディングに向かうところなんか、いろんな楽器が使われており、これをロックと呼ぶのは違和感ありますね。
結構好きなのが⑨「Child is Father of the Man」。これは⑩「Surfs Up」への橋渡し的な楽曲として扱われてますが、イントロのインストなんか聴くと、「ペットサウンズ」の音と似ている気がして、メロディも味わい深いです。
⑬「On A Holiday」のようなコメディタッチ風の明るい曲があるのも本作の魅力ですね。「ペットサウンズ」にはないような楽曲です。
正直⑮「Mrs Olearys Cow」を初めて聴いたとき、その緊張感に驚きました。このタイトルは1871年のシカゴでの大火事となった原因の牛の名前からとったとのことですが、まさにその時の雰囲気がうまく現れてます。これも楽器の使い方が素晴らしい!!この楽曲のメロディ云々ではなく、伝えたいものが見事に伝わってくる表現方法に感動です(これは本作全般に言えることですね)。
ちなみに当時のビーチボーイズのプロモには、本当に消防服を着てこの曲を演奏している映像があるらしいです。
ラストトラックの「Good Vibrations」は今更説明不要でしょう。ビーチボーイズヴァージョンと殆ど酷似してますが、コーラスのふくよかさはこちらの方がいいですね。この曲、40年近く前の曲とは思えませんね。音楽的な極みと商業的な成功が合致した、極めて稀な楽曲。またビーチボーイズらしさも出ている名曲です。
う~ん、本作を本格的に語るにはまだまだ聴き込み不足ですし、それだけ奥が深いアルバムですね。1曲1曲を聴くよりも、通して聴いてほしいアルバム。やっぱり素晴らしいアルバムです。