鬼才トッド・ラングレンのポップス玉手箱昨年、トッド・ラングレンがカーズ再結成に加わり、「ザ・ニュー・カーズ」として活動を開始したことは記憶に新しいですね。
そんなトッド・ラングレン。私のなかでは知名度は抜群に高いのですが、実はまともにアルバムを聴いたことがありませんでした。
そんななか、今回たまたま縁あり、本作を聴く機会に恵まれました。
これは1971年発表のトッド、ソロ第2作目。
ソロということは、彼はそれ以前にグループに属していたのですが、それが「ナッズ」というグループ。
実はナッズは第二のモンキーズとして売り出されそうになったグループ。モンキーズを売り出したスクリーン・ジェムズとコロンビアがナッズを発掘し、1968年にデビューさせたもの。
実質的な音楽面でのリーダーであったトッドは、早くもそういったショービジネス的なやり方に嫌気がさし、1970年にソロデビューを果たすのです。
本作はソロ第2作目ですが、全く気負った感じもなく、トッドのポップスセンスが一番素朴に現れたアルバムではないでしょうか?
1曲目の「Long Flowing Robe」のクラビネットが奏でるイントロ、ギターが重なり、サビはコーラスに支えられた素敵なメロディ。これ1曲聴くだけでも本作は価値があります。素晴らしいポップスですね。
③「Bleeding」はどこかサザンロックを思わせる曲。ギターの音色がそう思わせるのでしょうか?それにしてもトッドの音楽の幅は広いものです。
⑥「Chain Letter」は歌い手である自らを歌ったと思われる内省的な佳曲。本来詩の内容から、最初の部分のアレンジの通り、フォークタッチが合う曲ですが、2番目の歌詞よりエレキギターが重なり、演奏はハードになっていきます。
この曲は5分2秒ありますが、2分40秒以降はエンディング部分で、演奏に熱がこもっていき、バーズが得意としていた「ラガ・ロック調」になっていきます。これは聴き応えがあります。
私の本作でのベストトラックは⑨「Be Nice to Me」。アルバムタイトルが一番ぴったりくる曲。歌詞も曲も切なくなるバラードです。
⑪「Parole」が70年代ロックンロールで騒々しく終わると思いきや、⑫に51秒だけ「Remenber Me」というトッドのピアノの弾き語りが収録されてます。
ジャケット写真はこの曲を歌っている姿でしょうかね?
そのジャケットが鬼才トッドらしいのですが、収録曲は素敵なポップスが詰まってます。
私は本作を一聴して、なぜかブライアン・ウィルソンを連想してしまいました。「ペット・サウンズ」ほど凝ってませんが、アレンジ・コーラスがお洒落なポップス。
本作も含めて、トッドの当時のアルバムが、もうすぐ紙ジャケで再発されるそうです。楽しみですね。