ソフトロックというジャンルが結構好きで、60年代後半のロジャー・ニコルスとかハーパーズ、アソシエイションなんかはよく聴いてますし、後期のモンキーズなんかも、ソフトロック調のいい曲をいっぱい残してくれてます。で、今回ご紹介するのはザ・サークル! 自分たちで楽曲も作るし、アレンジ・演奏能力も高いバンドなんです。
ザ・サークルの中心人物、トム・ダウズとドン・ダネマンは1962年にロンデルズというバンドをで活動をしていたらしく、その活動がNEMSエンタープライズ、つまりブライアン・エプスタイン(ビートルズのマネージャー)が経営するマネジメント会社の目に留まり、ザ・サークルとして1966年にデビューするに至ります。無名のグループが、いきなりビートルズと関係を持つこと自体、アメリカン・ドリーム的ですが、ちょうどその頃、トムはサイモン&ガーファンクルのツアー・サポートメンバー(ベース)としても活動しており、その縁からポール・サイモンより「Red Rubber Ball」をプレゼントされ、それがデビュー曲となったんですが、そのエピソードもスゴイですね。もともと実力のある面子だったということだと思いますが。
デビュー曲もそこそこヒットしたことを受けて、次にブライアンはビートルズ初の全米ツアーの前座に同行させます。次から次へと凄いですね~。そして満を持して1967年1月、セカンドアルバム「Neon」が発売されます。
プロデュースは前作に続きジョン・サイモンが手掛けております。ジョン・サイモンといえば、ザ・バンドのプロデューサーとしても有名ですが、実はジョン自身が初めてヒットさせた作品がザ・サークルのデビューアルバムだった訳で、彼等の持つセンスがジョンの料理アレンジとうまく融合されたということですね。
本作1曲目、一瞬イントロからヤードバーズの「For Your Love」を連想させる①「Don't Cry, No Fears, No Tears Comin' Your Way」。メンバーのトムとドンの共作。Aメロはちょっと怪しげな雰囲気を醸しだしているのに、サビはサークルらしくポップです。随所に顔を出すシタールの音色が印象的。やはりサウンド・アレンジは秀逸ですね。
サークル流ボサノバソングの②「The Visit」。カスケーズなんかに楽曲提供していた職業作家チームのBodie Chandler/Edward McKendryの作品。今、聴いても新鮮な響きを感じさせます。決してポップじゃないんですが、美しいボッサ。コーラスが美しいし、サークルらしい1曲。
こちらもトムとドンの共作の③「Weight Of Your Words」。イントロのベースが素晴らしい。ドラムの音がちょっとうるさいですが、重ねゆくコーラスとか、ホーンとか、素敵です。ソフトロックの典型的な楽曲ですね。
ドラムのマーティ・フライドが発表した唯一の作品の⑥「Two Rooms」。これがまたいいのです。ギターの弾き語りが似合いそうな楽曲ですが、そこをよく聴くといろいろな楽器が鳴らされていて、アレンジの素晴らしさを感じます。可愛らしいメロディを持つ作品。もっと聴きたいと思ったら、あっという間に終わってしまう小作品。
ビートルズのカバーの⑧「I'm Happy Just To Dance With You」。でも単なるカバーではありません。転調しまくるのです。この曲だけ聴いても、彼等が只者ではないと理解できるかと思います。
原曲を知っているだけに、この不思議な音程は歌いづらい(笑)。ここでもシタールが不思議な音を出しておりますね。
Susan Haberという方の作品の⑩「Please Don't Ever Leave Me」。これもメロディとコーラスがいいですね。
前途洋々に見えたザ・サークルですが、1967年7月にブライアンが亡くなり、急速に活動が停滞していきます。そして1968年に解散。時代はサイケの真っ只中。ニューロックと称して、ZEPなんかも登場してくるし、確かに時代はソフトロックを受け付けなくなっていったのかもしれません。でもこうして聴いてみて、長く聴ける音楽であることがお分かり頂けるかと思います。