どうでもいい話ですが、これだけカールが騒動となっていると、ついつい食べたくなってくるもの。夕方、数件、スーパーをはしごしましたが、ホント見事なまでに完売。人って気まぐれなものです(笑)。
さて、今回は言わずと知れたフュージョン界の大御所、ボブ・ジェームス。彼もデビュー当時(1962年)はバリバリのジャズをやっていたんですが、CTIレコードの創始者でもあるクリード・テイラーで出会い、60年代後半からジョージ・ベンソンやミルト・ジャクソン等のレコーディングに参加。所謂クロスオーバーな音楽の中心人物として活躍。
そして本作…(実はオフで280円で購入したもの)。CTIレーベル時代の経験をベースに満を持して発表されたソロアルバムなんです。タイトルは「ONE」ですが、自身3枚目のアルバム。ただしフュージョンライクなアルバムとしては実質的なファーストソロって、位置づけなんでしょうね(それにしてもインパクトの強いジャケットですね)。
本作中、一番有名なトラックは何と言ってもムソルグスキーのクラシック「禿山の一夜」を大胆にアレンジしたものでしょう。④「Night on Bald Mountain」、このトラックではドラムスのスティーヴ・ガッドが暴れまくってます。彼のシンバルワーク、タムワーク、すべての「らしさ」が詰まっているような名演。またタイトなドラミングが、この曲が持つダイナミックな曲調にマッチしてますね。この当時、ガッドは29歳。前年にチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエバーに加入しますが、短期間で脱退。スタジオミュージシャンとしては駆け出しの頃で、まだヴァン・マッコイの「ハッスル」やポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」、ましてやスティーリー・ダンの「Aja」の名演を披露するずっと以前。但しもうこの時点でガッドのドラミングは完成していた訳ですね。
それにしてもこのトラック、やはりボブ・ジェームスのアレンジ能力に脱帽です。そのサウンドはフュージョンというか、やっぱりクロスオーバーって言葉がぴったり。まさにクラシックとジャズをクロスオーバーしたようなサウンド。この当時、「Gメン75」ってTVドラマが日本では流行っていましたが、そのサウンド、特に香港カラテが登場するときの音楽(子供心にちょっと不気味でスリリングと感じてました)に似ていますね(笑)。
本作には3曲のオリジナルと3曲のカバー(ウチ2曲はクラシック)が収録されてますが、もちろんボブのオリジナル作品が秀逸であることは言うまでもありません。アルバムの幕開けとなる①「Valley of the Shadows」はボブのオリジナルです。オープニングとしてはかなり難解、かつ9分強と長尺な演奏。ロックではプログレが流行っていましたが、それに対抗するように、ジャズサイドからアプローチしたようなクロスオーバーサウンド(今でいうフュージョンでしょうか)。実にスリリングで、緊張の糸が切れることはありません。
その緊張感あるサウンドから一転して穏やかなエレピが心地いい②「In the Garden」。これはオルガン奏者だったパッヘルベルのカノンという作品をアレンジしたもの。ハーモニカやスティール・ギターまで加わるアレンジ…、すべては1曲目との対比、そのギャップを感じるからこそ、本作が生きてくるような気がします。
⑤「Feel Like Making Love」は同じ年にロバータ・フラックが発表した名作。一般的にはボブがロバータの作品をカバーした形となってますが、実際はボブはこの曲を4月にリリースしてるのに対して、ロバータは6月にリリースしているんですね。ちなみにロバータの同作収録のアルバムにボブは参加してます(本作に参加しているラルフ・マクドナルドも参加してますね)。この時代のニューソウルの面々とジャズ(特にクロスオーバー)の面々は、かなり交流がありましたからね。
基本はボブもロバータのバージョンも、とことんメロウですね。いいです!
本作は静と動、緊張と弛緩、そういった大局的なサウンドが、カバーとオリジナルを効果的に使いながら、うまく表現されてます。ボブ・ジェームスというと、フォー・プレイでのオシャレ系なサウンドってイメージが強烈ですが、この当時の少し尖がったボブもいいですね。