学生時代、ウェザーリポートのような音楽は苦手でした。根っからのポップス少年としては、ウェザーの音楽って、「Heavy Weather」では僅かにポップな要素が見られるものの、基本ポップス指数ゼロですからね。
そして未だにじっくり聴く音楽としては苦手な方なんですが、近年アンビエントミュージックなんて呼ばれかたをしている音楽(環境音楽)の括り方でいうと、なんとなくフィットします。いや、決してウェザーの音楽は和み系ではありませんが(笑)。
さてさて、新年、何枚か、いわゆる名盤を安値で仕入れたのですが、本作はその内の1枚。ウェザーの1974年発表の5枚目のアルバム「Mysterious Traveller」です。このアルバムは一般的には、創業メンバーでありベースのミロスラフ・ヴィトウスが脱退、新たにアルフォンソ・ジョンソンが加入したことにより、よりファンキーになったアルバム。またジョー・ザヴィヌルの色がより濃く反映されたアルバム・・・なんて云われてますね。
ウェザーリポートはマイルス・デイヴィスのバンドに在籍していたウェイン・ショーターとジョー・ザヴィヌルが中心となり結成されたバンドで、ベースのミロスラフ・ヴィトウスも僅かな時期、マイルス・バンドに在籍。ミロスラフがウェインに新バンド結成を持ちかけるも、その時点でウェインとジョーが新バンド結成に向けて動き始めていたことから、ミロスラフも加わったということらしいです。ミロスラフはクラシック出身で、アコースティック・ベースを得意としていたのですが、ジョーはバンドをファンキーな方向へ向かわせたく、そこに音楽性の違い、仲違いに発展していきます。
本作はそういった経緯からベースがアルフォンソ・ジョンソンに交代。その交代の成果が一番表れているのが③「Cucumber Slumber」でしょう。ジョーのファンキーなフェンダーにウェインのサックスがブロウしまくり、その背後でアルフォンソのファンクベースが唸りまくってます。ベースの独特のフレーズも印象的ですね。もちろん、この曲はアルフォンソとジョーの共作です。
アルフォンソって、チャップマン・スティックを使った最初のミュージシャンの一人であり、その巧みなプレイは以下映像をご覧頂ければご理解頂けるかと。以下映像はウェザーリポート脱退後、ビリー・コブハム、ジョージ・デューク、ジョン・スコフィールドといった錚々たるメンバーと組んだバンドの映像。2分過ぎから、アルフォンソのプレイが楽しめます。
本作のもう1曲のスリリングなナンバーといったら、オープニングナンバーの①「Nubian Sundance」でしょう。ジョーの単独作品であり、スペーシーなサウンドは完全に、後のウェザーリポートが得意とする楽曲。ウェインの存在感・・・あまり感じられませんね。本作で主導権はジョー・ザヴィヌルが握ったと云われるのも理解出来ます。この曲、ドラムやパーカッションが賑やかですが、それらミュージシャンが固定化されなかったのもウェザーリポートの特徴。それだけ楽曲が難しいということなのか、それともジョーが作る楽曲が難解なのか・・・。2年以上、このバンドに在籍していたドラマーは、後に加入するピーター・アースキンとオマー・オキムだけなんですね。
本作でウェイン・ショーターが提供している楽曲は2曲だけ。アルバムタイトルトラックの④「Mysterious Traveller」と⑤「Blackthorn Rose」ですが、どちらも私の琴線に触れるものではありません。やっぱりジョーが作る楽曲の方が、ウェザーリポートらしい・・・ということでしょうか。
⑥「Scarlet Woman」はライブでたびたび演奏されるようになる1曲。①や③のようなスリリングな展開ではないのですが、ちょっと神秘的な楽曲。アップした映像はベースがジャコの時代のバンド演奏。
アルバムエンディングトラックの⑦「Jungle Book」は、アンビエントミュージック的な楽曲。シタールのような音色がオリエンテッドな雰囲気を醸し出してます。昔はこうした楽曲が好みではなかったのですが、最近ではこうした楽曲の雰囲気を楽しめるようになってきました。
本作発表の2年後、アルフォンソの後釜としてジャコ・パトリシアスが加入。ウェザーリポートは商業的にも成功を収めていくことになります。