ロバータ・フラックといえば一般的には本作収録の①「Killing Me Softly With His Song」があまりにも有名、かつ後に同曲がコーヒーのCMソングに使われたこともあり、これ1曲だけのアルバムっていう印象を持たれるかもしれません。でも決してそんなことはありません。しかも本作、参加ミュージシャンがすごい!ギターにエリック・ゲイル、ベースにロン・カーター、ドラムはグレーディ・テイト、パーカッションはラルフ・マクドナルド。皆、ジャズ・フュージョン系の凄腕ミュージシャン達です。ちなみにストリングスのアレンジはデオダート。贅沢な面子ですね。名前を聞いただけでも音が想像出来ますし、本作を聞けば贅沢なひとときが過ごせると思います。後のクワイエット・ストーム・サウンドの先駆的アルバム。
1曲目は当然アルバムタイトルトラックの①「Killing Me Softly With His Song」(正確にはアルバムタイトルは「Killing Me Softly」ですね)。もともとはロリ・リーバーマンが1972年8月に発表したものがオリジナル。それが飛行機の機内BGMに使われていたところ、偶然、ロバータが聴いて気に入り、直ぐにカバー。本家を凌ぐヒットとなったもの。全米NO.1を記録する大ヒットとなりました。90年代にフージーズがカバーしたものもヒットしたことは記憶に新しいところ。
アルバムの中では地味な作品ですが、③「No Tears(In The End)」はフュージョン系の音で、リズムが強調され、R&Bテイストたっぷりで、いいですね。
作者はラルフ・マクドナルド。イントロからエリック・ゲイルとすぐに分かるギターが聴けます。そしてソロではゲイル節炸裂!
⑥「Conversation Love」は実にクロスオーバーな音ですね。デオダートのストリングス・アレンジがなんとも贅沢な音に仕立て上げてますね。これは決してソウルではない、でもフュージョンともちょっと違う、この当時のロバータ・フラッグならではの音です。当時はニュー・ソウルなんて呼ばれてましたっけ?私はこの曲の作者(Terry Plumer,Bill Seighman)のことは知りませんが、よくこうした曲を見つけてきますね。でも曲は単調なメロディの繰り返しなので、これはヴォーカルとアレンジの勝利でしょう。
⑦「When You Smile」は今までの流れから一変、ニューオリンズ・サウンドと言えばいいでしょうか。陽気な楽曲ですね。ロバータって、「Killing Me Softly With His Song」のイメージが強すぎるからでしょうか、こうした曲のロバータって意外な感じがします。しかもこの曲の作者はラルフ・マクドナルド。フュージョンタッチの楽曲を得意とするラルフもこうした曲が書けるんですね。
ロバータ・フラックといえばダニー・ハザウェイ・・・ですね。親友であったダニーとは2枚の共演アルバムを残してます。本作発表前に1枚。その中から「Where Is The Love」。名曲です。
そして共演したもう1枚のアルバムは、発表した時点ではダニーはこの世に居りませんでした。共演アルバムの製作途中にダニーは自殺してしまったのです。親友のロバータ、さぞかしショックだったことでしょう。
その共演アルバムの前に発表された素晴らしい1曲、「The Closer I Get To You」をどうぞ。