ここ数年のまりやさんのアルバム(最近では
「TRAD」)、やっぱり素晴らしい楽曲だし、アルバムの内容にも満足しているのですが、往年のファンからすればやっぱり初期RCA時代のまりやさんの楽曲がいいなあと思ってしまいます。
そんな訳で今回はまりやさんの記念すべきデビューアルバムをご紹介します。
彼女が参加していた慶応義塾大学の軽音楽サークル(リアル・マッコイズ)には先輩に杉真理がいたことは有名ですが、彼女が大学3年のときに杉真理のデビューが決定し、彼のデビューアルバムにコーラスで参加。その際にレコード会社からデビューの誘いを受けたのですが、その時彼女はそのオファーを断ります。「音楽は仕事にするものではない」というのがその理由だったそうですが、その後、アマチュア6人の女性が歌うロフト・セッションズという企画アルバムに参加。そして再びその企画アルバムのプロデューサーから1枚だけでいいからアルバムを出そうとオファーを受けます。その時「山下達郎さんや加藤和彦さんが曲を書いて頂けるなら・・・」といった条件提示を出したそうです。それがトントン拍子に話が進み、1978年11月に「Beginning」が発表されます。
このアルバム、新人のデビューアルバムにしては、超豪華な制作陣なんですね。まりやさんのリクエストに必要以上に応じたのかもしれません(笑)。アルバムは主にLAと東京で収録され、LAサイドはアレンジャーにアル・キャップス、ギターになんとリー・リトナー(ちなみにまりやさんの同期に杏里がいたのですが、リー・リトナーと杏里が婚約(後に解消)したことはまったくの偶然です)、ベースにマイク・ポーカロ、ドラムにジム・ケルトナー、アルト・サックスにトム・スコットという強力な布陣。東京サイドも主にアレンジャーはセンチメンタル・シティ・ロマンスの告井延隆、演奏はセンチの面々。他に高橋幸宏、鈴木茂等が参加しております。
何とも贅沢な作りですね。そして本作の1曲目「グッドバイ・サマー・ブリーズ」。
新人のデビューアルバム1曲目にしては異例のバラードなんです。作詞:竜真知子、作曲:林哲司。楽曲としても1級品。演奏はLAサイドのメンバー。ここで聞かれるリー・リトナーのギターソロがなかなかの名演です。そしてバックに控えめに絡むトム・スコットのサックスが気品を感じさせます。この時代の最高のJ-POPSとも言えるでしょう。
まりやさんのデビューシングルが②「戻っておいで・私の時間」。作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦。軽快なポップスナンバー。歌詞の英語の素晴らしい発音といい、伸びやかなメロディに載る彼女の艶のあるヴォーカルといい、彼女の魅力が十分発揮されたナンバーです。恐らく通常はこの曲がアルバム・トップに来るような気がしますが、それを敢えてこうした曲順にしたところに、制作陣のこだわりが見受けられます。
ちなみにこの曲のツボは間違いなくドラムだと思ってます。跳ねるような躍動感あるメロディにぴったりなドラム。そしてここで叩いているドラマーは・・・、高橋ユキヒロさんでした。う~ん、名演です。そしてもうひとりのツボ、ベースは高水健司。
「戻っておいで・私の時間」は伊勢丹のCMにも使われました。でもこちらはスロー・バージョン。
そして続くのはサマー・ボッサの③「夏の恋人」。まりやさんは当初、その容姿からアイドル的売られ方をしたのですが、でもアイドルのアルバムにはこんないぶし銀てきな曲は収録されません。実にしっとりとしたナンバー。そしてこの曲は山下達郎のペンによるもの。わずか3分強の短いナンバーですが、LAサイドの極上メンバーの演奏とまりやさんのヴォーカルが、曲の持つイメージを膨らませてくれます。
後の夫となる山下達郎さん。デビュー当時、まりやさんが達郎さんのところへ挨拶に行った際、達郎さんから怒られたそうです。それは彼女が達郎さんにサインをお願いしたから。「同業人である以上、そんなことはしてはいけない」と諭されたそうです。まりやさんはレコーディングや作曲よりグラビアの生活に辟易していた時があり、そういった悩みも同じRCAの先輩である達郎さんに相談していたそうです。結婚に至ったのはそういった背景があったんですね。
④「輝くスターリー・ナイト」はまりやさんお得意の3連ロッカバラード。60年代アメリカン・ポップスが大好きなまりやさんらしいナンバーです。この曲はなんと作詞:高橋ユキヒロ、作曲:細野晴臣。嘘でしょ!って最初は思いました。YMOの御大がこんなポップスを作ってしまうとは・・・。アップする映像がなかったのでご紹介出来ないのが残念ですが、歌詞もかわいい素敵なナンバーです。
B面はセンチメンタル・シティ・ロマンス色が濃厚ですね。⑥「ジャスト・フレンド」、⑩「サンタモニカ・ハイウェイ」はセンチの告井延隆作。ちょっとウエストコーストっぽいサウンドはまりやさんのアメリカン・テイストにぴったり。イーグルスやリンダ・ロンシュタットが好きな方には堪らないナンバーでしょう。
⑦「突然の贈りもの」も大好きです!これは大貫妙子のナンバー。それをセンチのメンバーが演奏してます。この曲は同時期に大貫さんもセルフカバーしています。まりやさんのナンバーではありませんが、いい曲ですね。
アルバム最後のナンバー、⑪「すてきなヒットソング」。これはまりやさん自身の作詞作曲。自身の好きなヒット曲を歌詞に連ねております。それらナンバーはすべて60年代前半のアメリカンポップスであり、私も大好きなナンバーばかり。この曲、どこか①「グッバイ・サマーブリーズ」に曲調が似てます。でもこちらの方が個人的にはお気に入りです。
本作には自身のナンバーは1曲しか収録されてません。後の彼女を知る方々からしたら信じられないと思いますが。
せっかくなので若かりし彼女の映像もアップしておきます。
曲は1981年のシングルナンバー「SPECIAL DELIVERY~特別航空便」。この曲は作詞作曲がまりやさん、アレンジは達郎さんです。特にエンディングのクリスマスっぽいメロディは達郎さんらしいアレンジですね。もうこの頃にはお二人は同棲していたと思われます。
それにしても可愛い容姿です・・・。