GW、皆さんは如何お過ごしでしょうか。
私は愛犬と共に花めぐりをしてきました(愛犬は専ら花よりアイスに興味があったようですが)。
さて今回は偉大なるミュージシャンです。私はベーシストについてはあまり明るくないのですが、ジャコだけは別格の存在。ギタリストでいえばジミ・ヘンドリックスのような、そんなイメージですかね。この人の音は非常に特徴的で、フュージョンの枠に捉われない自由な演奏、特にジョニ・ミッチェルとのプレイなんかは好きでした。
ジャコの登場は1975年。ジャコの良き音楽仲間でもあったパット・メセニーのデビューアルバム「Bright Size Life」にベーシストとして参加。そしてBS&Tのドラマーでもあったボビー・コロンビー(後にコロンビアレコードの副社長にまで上り詰めた人)と出会い、ボビーがジャコの才能に驚愕。本作制作、1976年に発表に至ります。時期は前後しますが、パットのアルバム録音に参加する頃、ジャコはウェザー・リポートに自分を売り込み、見事に(というか必然的に)ウェザーに加入します。ウェザーの「Black Market」(ジャコは2曲だけ参加)の発表が1976年4月、そして本作発表が1976年8月。一般的にギタリストやベーシストのソロアルバムは、バンドがブレイクした後に発表されるものですが、ジャコは同時進行でアルバム制作が進められていたわけで、そういった意味でもジャコへの期待感・ジャコの自信が理解出来得ると思います。
アルバムトップはチャーリー・パーカーのカバー、①「Donna Lee」。しかし私は原曲を知りません。後で聞いて分かったのですが、原曲はスウィンギーなビバップ。疾走感も感じられる楽曲です。でもジャコはこの楽曲をベースとドン・アライアスのコンガのみでカバー!つまり全く原曲の原型を感じさせない、カバーとは云え、完全にジャコのオリジナルに仕上げてしまったものなんですね。またこのベースの音がスゴイ!
「Donna Lee」のなんとも不思議な余韻も束の間・・・、②「Come On, Come Over」ではタワー・オブ・パワーばりの超ファンクなサウンドです。超ファンクなドラムはナラダ・マイケル・ウォールデン。後年、ホイットニー・ヒューストンなんかへの楽曲提供で有名になった人ですが、元々は超絶ドラマーとして有名な方です。そしてヴォーカルはサム&デイヴ!ジャコ&ナラダの超絶リズム隊に、ハービー・ハンコックのファンキーなクラヴィネット、それにサム&デイヴが乗っかってくるなんて、名前を聞いているだけで楽曲の雰囲気は想像出来ると思います。ハイ、そういうサウンドです。
続く3曲目もカラーの違うベースソロナンバーの③「Continuum」。ハービーの優しいフェンダーローズとジャコのフラットレスベースの音色が美しい。
ここでは敢えてジャコのソロの映像を。5分7秒当たりからが「Continuum」です。
④「Kuru/Speak Like A Child」はこれまた一転、超スリリングなオーケストラのイントロから、激しいベースとピアノの応酬合戦。そしてタイトルにもあるようにハービーの代表曲「Speak Like A child」が織り交ぜられてます。動と静・・・、素晴らしいコントラスト。
⑤「Portrait of Tracy」はまたまた強力なベースソロナンバー。ハーモニクス奏法を駆使した短い作品ですが、夜中に聴くと、心が妙に落ち着きます。
アフリカのポリリズムを再現したような⑦「Okonkole y Trompa」はちょっと驚異的です。ベースがパーカッシブで、一瞬打楽器でこの音を出しているのかと錯覚してしまいます。終始ベースがモコモコと一定のリズムパターンを鳴らし、そこに心象的なフレンチホルンが鳴らされていきます。今で言うところの環境音楽とでもいいましょうか。かなり前衛的です。
⑧「(Used to Be A) Cha Cha」はある意味本作では一番普通のフュージョンサウンドかもしれません。が、ここでもベースのパターンはちょっと尋常じゃないですね。メロディはヒューバート・ロウズのピッコロがリードを取りますが、そこに絡むハービーのピアノが攻撃的です。中盤にいくとジャコのベースがリードを取っていきます。全体的にこれもスリリングな構成で、かっこいい。
エンディングトラックの⑨「Forgotten Love」はリリカルなピアノとオーケストラのみの繊細なバラード。ピアノはもちろんハービー・ハンコックです。そしてここにはジャコは参加してません。つまり作曲者としてのジャコの自信の表れ・・・なんですね。独特の浮遊感を持つ楽曲です。
実は本作、購入した当初はその良さがあまり理解出来ませんでした。ポップス好きの少年には少し早かったのかもしれません。でもこうして聞いてみると、デビューソロアルバムにして、こんな多彩な、それもどれも創造的、前衛的なアルバムって、他にあったでしょうか。それ故、ジャコの次作ソロはもうしばらく待たねばなりませんでした。