本作は個人的には松任谷由実時代のユーミンがもっともユーミンらしかった時代の1枚と思ってます。楽曲はAORがほどよくブレンドされた超一級品のJ-POP。恐らくド派手な楽曲は1曲もないのに(強いて言えば「守ってあげたい」「カンナ8号線」くらいか)、アルバムとしてはよく纏まってます。
以前ご紹介した
「悲しいほどお天気」 の発表が1979年、「時のないホテル」、そしてビッグヒットとなった「サーフ&スノウ」、ミニアルバム「水の中のASIAへ」、そして本作と1979年から1981年はユーミンにとってものスゴイ充実した時期でした。ちなみに松田聖子への提供曲「赤いスイートピー」「制服」の発表が1982年1月ですから、この時期、神がかり的なソングライティングセンスだったんですね。
そんな時期の1枚。音的にはともするとスクエアを連想させます(もちろんユーミンはスクエアにも楽曲提供していますね)。
当時流行スポットだったという神戸を歌った①「タワー・サイド・メモリー」。ユーミン自身も神戸は大好きで、1995年1月17日の阪神大震災が起こった週のオールナイトニッポンで彼女が泣きながらこの曲をかけたとのこと。間奏やエンディングで流れるリリコンが、とてもスクエアのようです。
VIDEO 余談ですが私自身も約4年間神戸に住んでいたことがあり、実は阪神大震災も経験しております。あの時期に神戸に住んでいたことは、今となっては自分自身にとって貴重な経験となっておりますし、神戸に住んでいたことを誇りに思っています。今でも大好きな街ですね。
また当時神戸出身の平松愛理が歌っていた「美し都~がんばろやWe love KOBE~」を思い出してしまいました。この曲、震災のあった同年4月にリリースし、彼女もまた泣きながらこの曲を歌っていたのをよく覚えてます。私自身もこの曲を聴き、元気が出てきましたね。
後で分かったのですが、この曲のコーラスはに岡村孝子、沢田知可子、大江千里、島倉千代子が参加していたんですね。
横道にそれてしまいました。②「街角のペシミスト」もまた洋楽ファンを唸らせる作りです。ある方のブログにはこのアルバム。スティーリー・ダンの影響大とありましたが、なるほど、特にこの曲、ホーンの使い方やちょっとソウル感覚が垣間見られるところはそっくりですね。
楽曲的にはジミですが、超一級品のJ-POPですね。
3連系のグルーヴィーな③「ビュッフェにて」。歌詞にでてくる城下町が金沢なのですが、この哀愁漂う歌詞が人気を呼んでいる1曲。でも洋楽ファンの私にとっては、歌詞よりクオリティの高い楽曲に惹き付けられます。
当時から大好きだった⑤「守ってあげたい」。なんとTV「ベストテン」に出場した映像がアップされてました。ユーミン、ベストテンに出演していたんですね。「ウチの主人が来週あたり出たら・・・」といった発言とか、相変わらずのユーミン節が嬉しいです。
このバックミュージシャンはいつもの方々なのでしょうか? 演奏も冴えてますね。
VIDEO ちょっとロック調の⑥「カンナ8号線」も今となっては懐かしい音です。ギターとコーラスアレンジに杉真理さんが参加してます。60年代ポップスがお得意の杉さんにしてはロックしてますね。
このアルバムは神戸や金沢、そして⑦「手のひらの東京タワー」と、ご当地ソングが次から次へと出てきます。それにしても今聴いても全く色褪せないアレンジですね。楽曲ももちろん素晴らしいのですが、松任谷正隆氏のアレンジ力にも脱帽です。
実はこのアルバムのなかで一番好きな楽曲が⑨「グループ」なんです。昔の学生仲間の結婚パーティへの思いを綴った歌詞が共感を覚えますが、やっぱりそのAOR的なアプローチが心地いい1曲です。
VIDEO ユーミンは以降も80年代を疾走していくことになります。でも個人的には商業的に媚びてなく、AOR的なアプローチが絶妙な本作が一番好きですね。