カーペンターズ6枚目のアルバム。前作
「Now&Then」が素晴らしいコンセプトアルバムでしたので、多少の気負いやプレッシャーが彼等にあったのかもしれません。その物憂げなジャケット(特にカレンの表情)から連想されるように、彼等にとっては衰退期の始まりとなったアルバムです。
ただしそれぞれの楽曲は素晴らしく、やはりカーペンターズのアルバムらしく、じっくり聴いていきたい作品となっております。
小作品①「Aurora」とエンディングの⑩「Eventide」が同一のメロディであることから、あたかもこのアルバムがコンセプトアルバムのような錯覚を覚えますが、全体的には統一感はあまり感じられません。さすがのリチャードも、この当時は疲労困憊だったのかもしれません。せっかく①と⑩をこうした形で仕上げたのであれば、もっと②~⑨をうまく繋げれば良かったのにと思ってしまいますね。
このアルバムからのヒットシングルが②「
Only Yesterday」。名曲ですね。何かを予感させるような静かな出だし。そして素晴らしいサビ・・・。ポップスの見本のような楽曲です。
♪ Tomorrow may be ever brighter than today ♪
この曲の持つ普遍的な素晴らしさは上記の詞に現れてます。元気が出てくる歌なんですよね。ちょっとねちっこいギターソロは御馴染みトニー・ペルーソ。
ロックファンには御馴染みの③「
Desperado」。
もちろんイーグルスの大ヒットナンバーですね。個人的にはこのカバーは頂けません。カレンの歌唱力は相変わらず素晴らしい。でもカーペンターズらしさがここにはありません。リチャードのアレンジもあまり冴えていないと思うのは私だけでしょうか。ビートルズの「涙の乗車券」や「ヘルプ」といったカバー、また④「Please Mr. Postman」はどれもリチャードらしいアレンジでカーペンターズ・サウンドが堪能できます。でもここでの「Desperado」はイーグルスそっくりなんですよね。原曲が素晴らしいだけにアレンジのしようがなかったということでしょうか。
リマスター日本盤のライナーノーツには「僕らが録音すべきじゃないとは思いつつ、入れる曲がなくて・・・」といったリチャードの告白が掲載されてます。そんなこと言わなくても・・・。
⑤「I Can Dream, Can't I?」は1939年のミュージカル「ライト・ディス・ウェイ」からのナンバー。
とってもジャージーでいいですね。でもこのアルバムにおいては、ちょっと浮いた印象であることは否めません。
個人的にはこのアルバムがカーペンターズらしさを発揮するのは、むしろ後半のナンバー(⑥~⑨)にあるような気がします。⑥「Solitaire」はニール・セダカ等のペンによるバラードナンバー。シングルカットされたナンバーですので、これがお気に入りという方も多いのではないでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=OGyp-2Nd4oQこのアルバムにおけるドラマーはカレン本人とジム・ゴードンですが、カーペンターズ黄金期のドラマーといえば名手ハル・ブレイン。ハル・ブレインとジョー・オズボーン(ベース)の鉄壁のリズム隊の上にリチャードのアレンジによるメロディが載れば、それは間違いなく素晴らしいポップスなのでした。もしこの起伏のある楽曲のドラマーがハルでしたら、もっとメリハリの効いたアレンジになっていたかもしれません。
⑧「
(I'm Caught Between) Goodbye and I Love You」、いいですね~。
別れを悩みぬいている詞がジャケットのカレンを連想させます。隠し味となっているスティール・ギターがまたリチャードのセンスを感じさせます。このスティール・ギターはモンキーズのマイケル・ネスミスとバンドを組んでいたレッド・ローズでしょう。
そして⑧以上にお気に入りなのが⑨「Love Me For What I Am」。
この時期のカーペンターズの最良の作品と思ってます。特に間奏のトニー・ペルーソのギターソロは名曲「Goodbye To Love」を連想させますね。ここには音楽の魔法があります。これがカーペンターズサウンドの醍醐味です。
冒頭申し上げたとおり、このアルバムは統一感に欠けるのですが、やはり⑥~⑨の流れにはカーペンターズ流ポップスの醍醐味が感じられ、やっぱり素晴らしいアルバムだなあと感心してしまいます。
もっと評価されていいアルバムかもしれませんね。