ロッド・スチュアートが骨太ロッカーとして、一番光り輝いていた時期の素晴らしい1枚。
「Atlantic Crossing」の題名通り、ジャケはロッドが大西洋を一跨ぎする洒落たイラスト。ビルはニューヨークでしょうか?
英国ロッカーのロッドはそれまでマーキュリーレコードから5枚のソロを発表していたものを、プロデューサーにトム・ダウドを迎え、本作にてメンフィス・サウンドを大胆に取り入れたサウンドを展開します。
メンフィスサウンドといえばブッカー・T.&ザ・MG'S。メンバーだったスティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダン、アル・ジャクソンがこのアルバムには参加しております。その面子とロッドという組み合わせを聞いただけでも、このアルバムの素晴らしさが理解できると思います。
このアルバム、A面が「Fast Harf」、B面が「Slow Half」と題され、両サイドのイメージを分けております。
その「Fast Half」のトップを飾るのが①「
Three Time Loser 」。
②「Alright for an Hour 」はロッドとジェシ・エド・デイヴィスとの共作。
ロッドのオリジナル③「All in the Name of Rock 'n' Roll 」、これがまた素晴らしい。
④「Drift Away」はスワンプの名曲。1972年のJohn Henry Kurtzの楽曲(作者はMentor Williams)ですが、ドビー・グレイが1973年にヒットさせたことで、この曲は広く認知されることとなりました。ローリングストーンズもカバーしてましたね。 そして一転「Slow Half」へ。当時のロッドはこっちを売りにしていたかもしれません。 ⑥「I Don't Want to Talk About It 」はニール・ヤングのバンドに在籍していたDanny Whittenのペンによるもの。
⑧「This Old Heart of Mine (Is Weak for You) 」のイントロを聞いたとき、どこかで聴いたことがあるなあと思ったら、ロッド自身が1989年に再びカバーしてヒットさせた曲でした。しかもこの1989年のPVを見て初めて気付いたのですが、このデュエットしている人物こそがアイズレー・ブラザーズのヴォーカリスト、Ronald Isleyではないですか!!!
ちなみに作者はモータウンのソングライターチームとして御馴染み、Holland-Dozier-Hollandですね。
エンディングトラックはあまりにも有名な⑩「
Sailing 」。この曲の持つイメージとメンフィス系サウンドは180度違うように感じます。今でこそロッドのバラードというとこの曲が代表的ですが、このアルバムのなかのこの曲というのは、ちょっと浮いているような感じもしますね。①~⑨までうまく纏まっているので、この曲がシングルカットされるためのボーナストラックのような、そんな錯覚も覚えます。もちろん名曲ですが。
VIDEO 原曲はSutherland Brothersが収録したもの。作者はメンバーのGavin Sutherland。このバンドが気になったのでYouTubeで調べていたら、数曲ありました。なんとなくヴォーカルの声質もロッドに似ているような感じですね。
ロッドはこの後、これまた秀作の
「A Night on the Town」 を発表。さらに次作「Foot loose & Fancy free」とあわせて3枚で3部作と呼ぶ方もいらっしゃるようです。この当時のロッド、かっこよかった。