ブログ仲間のカナさんの
このアルバムの紹介記事における「ジェフ・ポーカロのドラムを聴け」といった文言に触発されて、今更ながら本作を聴いてます。スティーリー・ダンは大好きなグループなんですが、なぜかこのアルバムはスルーしていました。恐らくジャケットの所為かと思われますが(笑)、私の崇拝するジェフのドラムが堪能出来るのであれば、これは聴かない訳にはいきません。
驚くことに当時ジェフ・ポーカロ、若干20歳・・・。名うてのミュージシャンと堂々と渡り合ってます。
この邦題「うそつきケティ」なるアルバム、スティーリー・ダンのアルバムのなかでは、スタジオミュージシャンを選りすぐった「幻想の摩天楼」「彩」「ガウチョ」の後期3部作の直前のアルバムということで、ちょっと地味な印象かもしれません。しかし内容はというと、ポップスからブルース、ジャズまで、所謂スティーリー・ダン的なフュージョンサウンドが楽しめ、曲も短めで、後期3部作の序章らしいものになってます。
メンバーは以下の通りですが、既に名うての著名ミュージシャンが集結してます。
Donald Fagen - piano, keyboards, vocals
Michael Omartian - piano, keyboards
David Paich - piano, keyboards
Walter Becker - bass, guitar, vocals
Wilton Felder - bass
Chuck Rainey - bass
Denny Dias - guitar
Larry Carlton - guitar
Rick Derringer - guitar
Hugh McCracken - guitar
Dean Parks - guitar
Elliott Randall - guitar
Phil Woods - saxophone, vocals
Hal Blaine - drums
Jeff Porcaro - drums
Michael McDonald - vocals, background vocals 等々。
ロックするスティーリー・ダン。1曲目の①「Black Friday」からジェフのシャッフルビートが強烈なグルーヴ感を生み出してます。メンバーのウォルター・ベッカーのギターソロも意外と良かったりします。
サビのコーラスはマイケル・マクドナルド。ここでのマイケルは、ドゥービー時代ほどのソウル感覚は見出せませんが、やっぱり目立つコーラスです。
このマイケル節のコーラスは②「Bad Sneakers」で更に目立ってきます。後のスティーリーダン・サウンドには欠かせない厚みのあるコーラスですね。両曲ともシングルカットされましたし、この時代のスティーリーダンの楽曲はキャッチーで曲が短いのが特徴ですね。
①~③までキャッチーなナンバーが続きますが、④「Daddy Don't Live in That New York City No More」では一転ブルージーで、これもスティーリーダン的な味わいとなってます。バッキングからして変なギターが鳴ってます。そしてブルージーなギターソロ。これは名手ラリー・カールトンの演奏です。結構このラリーのギター、好きなんですよね。
そしてこのアルバムの(多分)ハイライトが⑤「Doctor Wu」。この曲、恐らく初期ですと、もっとアコースティックでカントリーライクな仕上がりになっていたかもしれません。ここではフィル・ウッズのソフィスティケイトされたサックスやクールなピアノ、タイトなジェフのドラムなど、とてもフュージョンライクなアレンジですね。楽器の使い方など、どことなく後の名演「Aja」を連想させます。特にエンディングでのジェフのドラミング、「Aja」ではスティーヴ・ガッドが爆発しますが、ジェフのドラミングもなかなかです。ここでのエンディングはあまりにも短いので、「Aja」のように長ければ、ジェフも暴れまくっていたことと思います。この時のスティーリー・ダンは、まだ演奏を聴かせようというスタンスではなかったのかもしれませんね。
ちょっとジャージーな⑦「Your Gold Teeth, Pt. 2」、ジャズ的ドラミングのジェフが聴けるのも嬉しいですね。ちなみにPt2とあるのは、セカンドアルバム「Countdown to Ecstasy」に「Your Gold Teeth」が収録されているからで、そちらの続編ということ。
ここでのギターはオリジナルメンバーのデニー・ダイアス。彼のジャージーなギターもなかなかのものです。それにしてもこの楽曲、今聴いても古臭さは感じられません。とても30年以上も前の作品とは思えません。
そういえばジェフがスティーリー・ダンに関わるようになったのはサードアルバム「Pretzel Logic」の「Night By Night」からですが、この楽曲をオリジナルメンバーだったジム・ホッダーはうまく叩けず、そこでデニーが「ジェフを呼んでみてはどうか」と提案したそうです。デニーがきっかけだったんですね。
⑨「Any World (That I'm Welcome To)」のドラムはなんとハル・ブレイン。正直スティーリー・ダンとハル・ブレインは水と油のような・・・。フィルインの手数の多さは如何にもハル・ブレイン。70年代のハル・ブレインはカーペンターズなんかで最高のドラムを聞かせてくれてますが、クールなスティーリー・ダンのサウンドにはやはり合っていないような気がします。なぜこの1曲だけ、ハル・ブレインが叩いているのでしょうか??
通してじっくり聴いてみて、やっぱりこのアルバム、いいですね。後期スティーリー・ダンの完璧なまでのサウンド・プロダクションに息が詰まる思いの方であれば、こちらは未だバンドサウンドが聞き取れるし、後期スティーリーの香りもうまくブレンドされているので、安心して聴けるかもしれませんね。
それにしても若干20歳のジェフ、タイトなスネアドラムサウンドはこの当時から確り自己主張してます。