荒井由実時代の4枚のオリジナルアルバムはどれも味わい深いものがありますが、特に2枚目の「ミスリム」は、荒井由実とバックバンドのティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)の感性が見事に融合した素敵なアルバムだと思います。
このアルバム、多くの有名曲を含んでおり、それらの楽曲(②「瞳をとじて」、③「やさしさに包まれたなら」、⑤「12月の雨」、⑦「魔法の鏡」)が群を抜いて人気があるようですが、個人的にはアルバムトップの①「生まれた街で」が大好きです。何と言ってもこの楽曲の細野晴臣の変幻自在に動くベースが素晴らしい。それから間奏のフルートソロにおけるスリリングなバックの演奏も聴きどころでしょうね。もちろんユーミンの書くノスタルジックなメロディも抜群にいい。
アップした映像は名曲「あの日にかえりたい」も演奏されてます。
名曲②「瞳をとじて」、この曲はイントロが素晴らしい。この曲のイントロを初めて聴いたとき、朝日に照らされた穏やかな海を連想していました。すると歌詞に「♪ 風がやんだら沖まで船をだそう ♪」とあるではないですか!
ユーミンの歌詞の世界をそのまま具現化してしまうティン・パン・アレーの演奏力にも脱帽です。
③「やさしさに包まれたなら」は3枚目のシングル。最近では映画「魔女の宅急便」のエンディングテーマといったほうが分かりやすいかもしれません。アコギが素晴らしい、爽やかな楽曲ですね。
アップした映像は最近のユーミンの演奏。佐藤竹善や高中正義、本家の鈴木茂等が演奏してます。佐藤竹善がキーを代えない状態で、裏声抜きでリードパートを歌うシーンも見所ですが、ここではやはりうつむき加減でひたすら弾いている鈴木茂のスライドギターに注目です。すごく地味なのですが、よく聴くと、非常に効果的に演奏しているんですよね。素晴らしいミュージシャンなのに最近の彼の逮捕劇が残念です。
(↑この映像が見れなかったので、別の映像をアップしました)
④「海をみていた午後」は横浜の山手にあるレストラン「ドルフィン」を舞台にその詞「♪ ソーダ水の中を貨物船が通る ♪」があまりにも有名なバラード。 ユーミンの詞と曲が見事に一体となったこの曲、女性には堪らないでしょうね。私としてはこうしたバラード系は得意ではないのですが・・・。
山下達郎氏のコーラスが堪能できる⑤「12月の雨」。一聴しただけで彼の声と分かるコーラス、このポップスにマッチしてますね~。コーラス自体はシュガー・ベイブが担当、山下達郎がコーラスアレンジをしております。一説によると山下達郎は「コーラスアレンジをやらせてくれるならばレコーディングに参加する」と仰ったらしい。彼らしい逸話です。
⑥「あなただけのもの」は当時のユーミンファンは度肝を抜かれたのではないでしょうか? 実は私はこのアルバムのなかではこの曲が一番好きだったりします。
まず驚きなのがイントロの林立夫氏のヘビーなドラム。スティーヴィー・ワンダーの「迷信」を連想させるファンクなプレイ。そして唸る細野氏のベース、ファンキーです。
以前ティン・パン・アレー関係でご紹介した
小坂忠 「ほうろう」(1975)は、この曲がある意味、きっかけとなったものかもしれませんね。ティンパンの演奏も気持ち良さそう。迫力あるコーラスは吉田美奈子、大貫妙子、矢野顕子。
アルバムのなかでは地味な印象の⑧「たぶんあなたはむかえに来ない」。でもこの曲はエンディングの鈴木茂のジェット・スライド・ギターが聴きどころ。彼独特のトーンのソロが素晴らしい。
⑩「旅立つ秋」なんかはオフコースを連想してしまいます(笑)。如何にも70年代フォーク然としており、ユーミンもこうした楽曲を作っていたことに驚きを覚えますね。
この後ユーミンは「コバルトアワー」「14番目の月」を発表後、「松任谷」姓となり、新たな時代を切り開いていくことになります。
個人的には荒井由実時代の4作品が大好きです。ユーミンのエバーグリーンなメロディとティンパンの名演奏がじっくり聴けるなんて贅沢ですよね。
これらは日本の音楽シーンの黎明期にも当たっていることから、音楽シーンに与えたインパクトも大きく、また個性的な作品群です。