キャロル・キングのソロ8作目にあたる作品。1976年1月発表、オード・レーベル時代の最後の作品です。
シティ時代からの盟友、チャールズ・ラーキーと別れた直後の作品のためか、批評家からは「内省的作品」と捉えられているようです。そのため私は永らくこの作品を聴こうとはせず、スルーしていました。
今回新品CD500円セールで本作をゲット、ここ数週間、じっくり聴いてますが、かなりいいですね。
まずはこの作品に参加している面子。以下の通りです。
Danny Kortchmar ( G )
Richard Wachtel ( G )
Robert Wachtel ( G )
Leland Sklar ( Bs )
Russ Kunkel ( Ds )
David Crosby ( Vocals )
Graham Nash ( Vocals )
J.D. Souther ( Vocals )
James Taylor ( Vocals )
Ralph Macdonald ( Percussion )
Tom Scott ( Sax )
つまりJTのバックバンドであるセクションに、ウエストコースト随一のコーラス隊であるデヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、そしてJTとJ.D.が参加しているんですよね。このネームを聴いただけでも悪い筈がないと確信できますよね^^。
1971年の「Tapestry」の大ヒット以降、キャロルはニューソウルへの接近を試み、「Music」や
「Fantasy」といった素晴らしいアルバムを発表していきます。本作はそういった音楽的変遷後、発表されたものですが、かなりポップスとして楽しめるアルバムになっております。
レココレ1995年1月号には本作について「歌もサウンドもさらさらし過ぎていて、繊細さとR&Bフィーリングいまひとつ感じられない」とありますが、個人的には「Tapestry」よりお気に入りかもしれません。
確かにアルバムトップの①「So Many Ways」はキャロルのピアノの弾き語りで、1曲目にしては華やかさのない淡々とした楽曲ですが、②「Daughter of Light」からはキャロルらしいポップス集が堪能できます。
③「High Out of Time」は切なさ漂うメロディを、クロスビー・ナッシュ・JTの素晴らしいハーモニーが優しく包み込みます。途中JTとのデュエットらしきパートもあったり、リーランド・スクラーのよく動くベースが聴けたりと、聴きどころの多い1曲ですね。
一瞬「Tapestry」のなかの1曲と思ってしまった④「Only Love Is Real」。彼女独特のラテン系のノリが感じられるポップス。トム・スコットのサックスも隠し味となってます。確かシングルカットされた曲ですね。
⑤「There's a Space Between Us」はJTがアディショナル・ヴォーカルとしてクレジットされてます。JTのバックヴォーカルが入ってくるところなんて堪りませんね。ミディアムテンポのキャロルらしいポップスです。
③「High Out of Time」に続いて⑥「I'd Like to Know You Better」もクロスビー・ナッシュ・JTが優しくサポートします。間奏の♪ la la la ♪と恐らく4人で歌うコーラス部分なんか、暖かい息吹をこころに吹き込まれているようで心地いいですね。
J.D.サウザーは⑧「Ambrosia」でアディショナル・ヴォーカルとして参加してます。私の記憶ではキャロルとJ.D.のコラボはコレだけのような気がします。J.D.のコーラスは非常に寂寥感を感じさせるんですよね。クロスビー・ナッシュの暖かさとはまた違う味わいがあります。
後期イーグルス、ティモシーがやりそうなベース、ドンが叩きそうなドラム、そんな感じにさせる⑩「It's Gonna Work Out Fine」。トム・スコットのサックスはメンフィス系の香りがなんとなく漂い、これはグレン・フライを連想させます。個人的には本作では異色の作品として捉えており、とても現代的な、モダンな音作りがされていると思います。ラスのタイトなドラムが印象的です。
私の愛読書「ローリングストーンレコードガイド」(昭和57年発行)は非常に辛口な音楽批評本で有名ですが、その辛口批評家は本作になんと★★★★(★5つが最高)という評価を下してます(もちろん「Tapestry」は★★★★★ですが)。そして「「Thoroughbred 」は「Tapestry」以来の最高作」とのコメントを残してます。個人的に目の仇にしているローリングストーン紙ですが、今回は妙に納得してしまいました(笑)。
2001年に発表した近年の作品
「Love Makes the World」も大好きですが、それに匹敵するくらいの素晴らしいポップスが聴けますよ。